2010年3月31日水曜日

To Brooklyn Bridge (9)および(10)

o Brooklyn Bridge (9)

Again the traffic lights that skim thy swift
Unfractioned idiom, immaculate sigh of stars
Beading thy path ------ condense eternity:
And we have seen night lifted in thine arms.

また再び、自動車の照明が、お前の、その素早く反応し返す振動の、
そもそも壊れて破片でいることとは無縁の、お前の文法と慣用規則からなる
言語表現に、たった一瞥を喰らわせるだけで、そんな税金など支払いたくないと
いわむばかりに、その核心を猛スピードで通り抜け、天上の星々の曇ることなき悲しみの、深い溜め息も聞くこと無く素早く走り過ぎ、
お前の橋をビーズ玉のように数珠に連なって、連なり並び、ローマン・カトリックのあのロザリオの数珠を以て祈りを捧げ、Our Fatherと詠いはじめ、Gloria Patriと終わる、その詠唱の儀式の間に瞑想するもの達のように、お前の橋を浄め
そうして、永遠を凝縮してくれるのだ。すなわち、僕達は、お前の両の腕(かいな)の中で、夜がお前に抱きかかえられて持ち上げられ、夜が明けるさまを、こうして、目(ま)の当たりにしたのだ。

[註釈]
(1)聖なるブルックリン橋に夜が抱きかかえられて、夜が明ける。橋をMariaに思い、橋に抱きかかえられる夜を、キリストといはむ、いや、Crane自身だとも僕は思って、ここを読みました。聖母Mariaに優しく抱きかかえられるHart Crane。そう読むことのできるほど、素晴らしい。そうして、そう読むことができたなら、ひとはそう読むことをゆるされるのではないだろうか。だれに?Hart Craneという詩人と、そうして聖なるBrooklyn Bridgeに。
(2)当時は、この橋を通行するのに税金をとったのだろうか。そうであっても、なくても、通じるように訳しました。
(3)condense eternityという、このeternityが、次の第10連のan iron yearに掛かります、いや架かります、bridgeされます。そういえば、bridgeは、現代の電気と光通信技術の世界でも、接続の一種である技術用語、通信、コミュニケーション用語であったことを思い出しました(もちろん定義があります)。語釈に辞書より転記しました。御覧下さい。ことここに至って、やっとbridgeと言う言葉を読むことになりました。実に味わい深い。やはり、当然のことながら、structureも備えた構造体でありました。

しかし、なおまた、同じ引用のなかを読みますと、bridgeは、船にもありました。なるほど見晴しのよい塔のような艦橋が(全くbridgeは、towerでもあるのです、この概念のthreadよ!垂直と水平がひとつになる概念がここにあるのです。これは、言語の生まれる最初のcell、細胞です)。ことここに至って、内と外がひっくり返ります。両岸に架かるbridgeと、その下を、bridgeに導かれて進む帆船と。よくもやってくれるぜ、Craneよ、と言いたいところです。

(4)condenseは、以下のWebsterをみると、contractという意味があるので、これはもう、神との契約、宇宙の創造主との契約です(そういえば、ドイツ語で詩作とは、dichtenすること、condenseすることでした。詩はdie Dichtung)。しかし、詩人はそのような言葉を一切使わずに、同じことを自らの言葉でいうのです。だから、それは既知の宗教用語ではなく、未知の領域、まだ人間が脚を踏み入れたことのない領域、即ち荒野やsodにいる一匹のkittenの言葉です。あなたに聞こえますか?、その言葉が。Condense eternity、この行為を、神業であるかのように、Craneは、この第9連から開始し、第10連では、この橋の両端の町の罪も赦されよ、そうして赦され、自分の罪も赦され、先日解釈した第11連に連なり従って、また、第1連の世界へと回帰して行くのです。この循環の世界、螺旋の宇宙を!ここに人間の平安があると詠唱している。

こうして読んでくると、第1連のthe chained bay watersとは、僕達自身のことだと読むこともできます。ですから、第10連では、詩人は、Already snow submerges an iron yearと詠って、このsubmergeという水の流れ、溢れ、罪を洗い浄める水という意味をも持たせたのではないでしょうか。僕は、そのように思います。

第5連、第6連、第7連というこの3つの連こそ、このような作詩方法そのもので、condense eternityを眼前に彷佛せしめているのです。これらの連に従って、時間がcondenseされて行きます。第7連は、心境ともいうべき連、境地ともいうべき連の筈です。

[語釈]
(1)skim
Main Entry: 1skim
Pronunciation: 'skim
Function: verb
Inflected Form(s): skimmed; skim疥ing
Etymology: Middle English skymmen
transitive senses
1 a : to clear (a liquid) of scum or floating substance (skim boiling syrup) b : to remove (as film or scum) from the surface of a liquid c : to remove cream from by skimming d : to remove the best or most easily obtainable contents from
2 : to read, study, or examine superficially and rapidly; especially : to glance through (as a book) for the chief ideas or the plot
3 : to throw in a gliding path; especially : to throw so as to ricochet along the surface of water
4 : to cover with or as if with a film, scum, or coat
5 : to pass swiftly or lightly over
6 : to remove or conceal (as a portion of casino profits) to avoid payment of taxes
intransitive senses
1 a : to pass lightly or hastily : glide or skip along, above, or near a surface b : to give a cursory glance, consideration, or reading
2 : to become coated with a thin layer of film or scum

(2)bead
Main Entry: 1bead
Pronunciation: 'bEd
Function: noun
Etymology: Middle English bede prayer, prayer bead, from Old English bed, gebed prayer; akin to Old English biddan to entreat, pray -- more at BID
1 a obsolete : PRAYER -- usually used in plural b plural : a series of prayers and meditations made with a rosary
2 : a small piece of material pierced for threading on a string or wire (as in a rosary)
3 plural a : ROSARY b : a necklace of beads or pearls
4 : a small ball-shaped body: as a : a drop of sweat or blood b : a bubble formed in or on a beverage c : a small metal knob on a firearm used as a front sight d : a blob or a line of weld metal
5 : a projecting rim, band, or molding

(3) condense
Main Entry: con疆ense
Pronunciation: k&n-'den(t)s
Function: verb
Inflected Form(s): con疆ensed; con疆ens疂ng
Etymology: Middle English, from Middle French condenser, from Latin condensare, from com- + densare to make dense, from densus dense
transitive senses : to make denser or more compact; especially : to subject to condensation
intransitive senses : to undergo condensation
synonym see CONTRACT
- con疆ens畭ble also con疆ens疂ble /-'den(t)-s&-b&l/ adjective


(4)bridge
Main Entry: 1bridge
Pronunciation: 'brij
Function: noun
Etymology: Middle English brigge, from Old English brycg; akin to Old High German brucka bridge, Old Church Slavonic bruvuno beam
1 a : a structure carrying a pathway or roadway over a depression or obstacle b : a time, place, or means of connection or transition
2 : something resembling a bridge in form or function: as a : the upper bony part of the nose; also : the part of a pair of glasses that rests upon it b : a piece raising the strings of a musical instrument -- see VIOLIN illustration c : the forward part of a ship's superstructure from which the ship is navigated d : GANTRY 2b e : the hand as a rest for a billiards or pool cue; also : a device used as a cue rest
3 a : a musical passage linking two sections of a composition b : a partial denture anchored to adjacent teeth c : a connection (as an atom or group of atoms) that joins two different parts of a molecule (as opposite sides of a ring)
4 : an electrical instrument or network for measuring or comparing resistances, inductances, capacitances, or impedances by comparing the ratio of two opposing voltages to a known ratio
- bridge疝ess /-l&s/ adjective


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To Brooklyn Bridge (10)

Under thy shadow by the piers I waited;
Only in darkness is thy shadow clear.
The City's fiery parcels all undone,
Already snow submerges an iron year . . .


結局言葉を曖昧に使う詩人などいない。詩人は言葉を厳密に、正しく使う。画家は、色彩と線を、厳密に正しくつかう。それを曖昧に使う画家などいない。そのために高度な長期間の訓練を自らに課す。

結局、もしHart Craneの詩の言葉が、曖昧だと思うのであれば、それはその人が曖昧にしかその詩を理解していないからだということになる。詩人は,曖昧な領域に憧れることはない。何故なら、そこにはvisionがあるからだ。Visionとは、apparationalなものをいった言葉。主語が目ならば、それもvision、主語が耳ならば、それもvision。それが触覚ならば、それもvision、それが舌ならば、それもvision。それが臭覚ならば、それもvision。

つまり、 visionとは、uncoiled shell、undone、unspentなもの、つまり、un-とうprefixであらわされる以外にはない全てのものを指す(そうして、それは眼に見えるもの)。

そうして、ここにあるひとが、さて一行の文、あるいは、名詞と形容詞だけでもいいから、一語でもって、何かを言はむとすると、構造が既にして備わって顕われるもの、それが詩だ。こうしてみると、詩の最小の要素は、ふたつ、名詞と形容詞。名詞だけでは詩は生まれない。それならば、散文になる。

(蕃さんに紹介された、Ezra Poundの次の詩は、これをそうではないようにしてみようという、詩の限界の突破の試みであるように、こうしてみると、僕には思われる;

In a Station of the Metro

THE apparition of these faces in the crowd;
Petals on a wet, black bough.

しかし、それでも、onという前置詞と、boughという名詞の間に、wetとblackという二つの形容詞がどうしても最低限、最小限必要だったのだ。もしこの二つの形容詞を取り除いたら、これは、詩にはならないだろう(それは散文になる。あるいは、散文句か)。詩人の形容詞は、魂に響く。Craneのwhiteのように、uncoiledのように。)


トーマス・マンが18歳のときに書いたA4で1枚半に満たないような散文があり、その題を、少年は、当時Vision、副題をeine Skizzeとしました(これはだれも日本語に翻訳していない)。これは完璧なシステム、言語で叙述された体系。その後の天才の人生は、これから寸毫も変化していない、外れていない。これを僕が理解したのは、30歳のときで、そのとき、ようしこれを翻訳してやろうと決心してから、とうとう日本語という全く異質の言語システムに変換できたのは、丁度20年後でありました(そのできがいいかどうかは別の問題)。それほど、Visionというのは、翻訳が不可能に近い。まづ、理解することがむつかしい、つまり、visionを共有することがむつかしい。それから、その次に理解しても(正しくは認識しても)、別の言語システムに、その言葉と意味の対応関係を失わずに、変換することがむつかしい。それは2重のむつかしさ。


(以下明日に続く)

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