White Buildingから、この詩を読んでみよう。読んでみようとは、解釈してみようということだ。しかし、他方ぼくはHart Craneの詩の秘密に触れているので、あちこちの詩に言及しならが、この詩を読むことにしよう。
いつものように題名から。Sunday Morning Appleとは何か。Craneの題名は、いつも表と裏とふたつの意味が掛けてあるのでした。もしこれだけで解らない方は、以前のぼくのTo Brooklyn BridgeやChaplinesqueについての論を読んで下さい。
表の訳は、日曜日の朝の林檎という題名.裏の訳は、男色に耽って日曜の朝を迎えた男色者達という意味だ。もっと正確に言葉を費やすと、Sundayとは、宇宙の運行でひとつのlineを成す、sun, earth, moonのうちのsun太陽のことをいう。これがhost役、男色の営為の中心であり、その太陽の周りを地球と月が廻る。地球はside stepを踏むのだ。太陽は命令者である。さて、そのような役廻りを演じたのはHart Craneだろうか、それともこの題名の下に斜字体で書かれているWilliam Sommerという恋人だろうか。Toとあるので、これは男色者を指す。それもCraneにとって価値ある、飛び切りの仲間のことだ。To Brooklyn BridgeのToがそうであったように、この男の恋人の前置詞も、いやその名前丸ごとが斜字体である。相当な、Crane流の言い方を真似すると完璧な恋人、perfectな仲間なのだろうと思う。つまり、絶頂に達して声なく、沈黙の世界を醸成することのできる親密な数少ない本当の仲間のひとり。同じ詩集にあるLegendの第4連第1行にあるモa perfect cryモと叫ばしめる恋人なのだろう。
Sun-eartch-moonというとなんということもないが、しかし、これは英語で言い換えるとcelestial bodiesだというと、神聖で、またbodyということからも実に具体的に臨場感を以て、男色者達の言はむとすることが感じられるのではないだろうか。実は、Chaplinesqueをあらためて読み、また他の幾つかの詩から、男色者達は、男色の営為の中に、このような天球の配置を考えるとともに、西洋の騎士の叙勲の儀式を真似て性行為として執り行っているのだということを僕は知ることができた。だから、Chaplinesqueの第5連、最後の連にある、a grailも、gaietyもquestも、宮廷で旅の途上の騎士、聖杯を求め、女性を崇拝してそのために死ぬことも厭わぬ、純潔の男達として、その比喩をふんだんに使って、女を排除した男だけの世界を創造しているのだ。それは、このように、またこの文章のあちこちに見られるように、言葉と概念と比喩の体系を実際に自分の肉体で実感しながらの、それはgayなのであり、through all sound of gaiety and questのgaietyなのである。Gayとはそのような知的な歓びの世界なのだ。Joyなのではない。
さて、さらに、この場合、そのようなSundayを、いやそのようなSun-nightを演出したホストはいづれかであろうか。詩の中に入っていくと、これはBillがsunなのだろうと思われる。そうして、Chaplinesqueの第4連第3行にある通りに、太陽は、obsequiesを執行したのであろう。Crane詩を読むと、hostとguestは役割が交代できるので、互いに自分の似姿を見ることになるのだろう。そのような自在の境地をCraneはこの恋人とともに分ちあった筈である。
Appleとは何か。PPLEは、peopleの略号表記である。従い、Appleとは男色者仲間、男色者達という意味である。Aは既に男色者を意味すること、それは何故かは、To Brooklyn Bridgeで論じたので、ここでは触れない。
つまり、Sunday Morning Appleとは、自分が太陽の役割を演じて男色行為に耽ることのできて迎えた朝、その朝の男色者達という意味である。
上に言及したGarden Abstractの第1連の出だし、
The apple on its bough is her desire, ----
このappleも同じである。しかし、Craneは一筋縄では行かない。これ定冠詞を付けて、やはり語義に戻り、林檎に似た男の体の一部を指しているようである。わたしは睾丸であると思っているが、それも詩を読み込むに従い、解ることだろう。詩の中に、よくappleをtossするという言い廻しが出て来るが、これも男色者達の隠語なのだと思う。例えば、Legendeという、White Buildingのlegend(こちらは末尾のeがない)という詩と別の詩の第1行は、
The tossing loneliness of many nightsと始まる。
Tossingするその目的語はballであると思われる。男の自慰行為をこのように表現しているのだ。それは、その次に続く第2行が、
Rounds off my memory of her
と続くので間違いがないと思う。
また、しかし、このherも曲者で、上に引用した
The apple on its bough is her desire, ----
このherと同様に、場合によっては、これが男性であることがあるのです。このGarden AbstractではCrane自身のことを指していると読めるが、その詩の中では、男たるものが樹木の女に変身をする。その場所がGarden Abstractである。この庭、gardenというモチーフは頻出する。家ではなく、庭に生きる空間があるのだ。
そうして、この場合、boughとはbowであるから、男色者が性行為をするとき屈曲した姿勢、Chaplinesqueで第4連2行にany pliant caneと書いた姿勢である。そうして、さて、The apple on its bough is her desireとは、そのthe apple on its boughのitsがappleを指すことからいっても、the apple on its boughとは、tautologyの関係となる。この自己鏡像的な姿が陶酔の源なのだとぼくは思う。The apple on its bough is her desire、この一行を味わって貰いたい。
さて、そうして何故庭なのだろうか。そこに樹木があるから。Craneが世にでることになった最初の詩、その題は、C 33という。この詩の題名の解釈もまた以前の文章の中で解釈したところであるが、更にもうひとつを付け加えれば、この詩の中、第1連にあるthorny treeとは、勿論この詩の中でCraneが17歳で男色を教えた相手の少年に与える苦痛がthornyなのであり、そのthorny treeの持ち主がCrane自身なのだ。もちろんこの樹木は、ここでは薔薇の木であるが(何故男色者が薔薇に連想されるかは後日論じよう)、こうして読んで来るとお判りのように、C 33の33の裏の意味は、thirty threeという発音であり、それはそのままthorny treeという意味なのである。実際に発音されるがよい。CはCraneのC。しかし、多義的にこの17歳の若者はその天才を発揮する。See a space 33!このA space、すなわち男色する場所にあるthorny three、僕の汚れなき純潔のペニスを見よ!と。A spaceとは、その定冠詞からいって、男色の場所という意味である。C33ではなく、C_33とした所以である。
ぼくは、今日も移動書斎にてCraneの詩のあちこちを往来して、確かにThe Broken TowerでCraneがthe matrix of the heartと詠んだ心臓のマトリクスを更に発見した。その中に色彩のマトリクスがあった。ぼくに既知のこととしては、方位、宇宙の星々のシステム。そうして、これらの組み合わせのマトリクスも。
The matrix of the heartとは、the matrix of the Hart、すなわちこのHart、俺様の、何を差し置いてもこの僕自身のマトリクスといっているのだ。それが心臓のマトリクス、生命の、生きていることのマトリクス、すなわちHart Craneの宇宙である。
White Buildingがどのような構造を備えているかは既にTo Brooklyn Bridgeのところで述べた。この詩もWhite Building中の詩なので、そうなっている筈。そう読むのが正しいだろう。そうすると、この詩のmatrix、white buildingは次のようになる。計5連からなっているので、
(1、5)
(2、4)
(3、3)
3階層のwhite buildingである。この3階建ての建築物をみて行くことにしよう。しかし、既に僕達は、To Brooklyn Bridgeを読みこなし、日本語の世界に嚥下咀嚼した。その財産を活用することにしよう。
そうして、庭にある薔薇の木ノ.いやいや、これらは順に論じよう。今日ここでこの稿で書くべきことは、Craneは、男色者の性の営為を春夏秋冬に擬したことである。しかし、これも男色者の相当な知性の賜物なのだとぼくは思う。この季節の交代をseasonといい、また形容してseasonableとe詩人はいっているのだ。The Matrix of the Hart! この四季と天球達の組み合わせ、それに色彩のマトリクスを掛け、男と女の変身を現出させ(To Brooklyn Bridgeで最初の女神が男になり、男の神が女神に永遠の大循環をしていることを思い出してほしい)、この濃密な文体を創造するのだ。
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