2010年12月31日金曜日

Leere Haende(空の両手):第1週

今年31年ぶりであったドイツの友人からもらった2011年53週からなる詩のカレンダーの第1週目の詩を訳し、解釈をつけます。

ドイツのこのカレンダーは、第1週が既にこの12月27日からの1週間で始まり、新年は元旦と2日までとなっています。

新年3日の週にはもうすぐに第2週の詩を上梓しなければならないということで、今日は、その最初の詩です。これは、結構大変です。

というわけで、少しあわてております。


【原文】

Leere Haende

by Ko Un

Im Schneegestoeber
begruesse ich den fruehen Morgen des neujahrstages,
gemeinsam mit Frau und Tochter wandere ich
zu einem Huegel.

Dabei denke ich an meine uebermaessigen Wuensche.

Wusste ich nicht, dass leere Haende leicht und frei machen,
so leicht, dass ich im Moment abheben konnte?


【散文訳】

猛烈な吹雪の中で
わたしは新年の朝に挨拶をする
妻と娘と一緒に
わたしはとある山へと歩いて行くのだ

そうしながら、わたしは余りある願いのことを考えている。

空(から)の両の手が、軽く、そして自由にするので、
かくも軽くするので、わたしが今この瞬間に
こうして始めることができたということを
わたしは知らなかったであろうか?
(いや、この山に来る前に既に知っていたのだ。
わたしは、何も両手に所有していないのだから。)



【散文訳】

猛烈な吹雪の中で
わたしは新年の朝に挨拶をする
妻と娘と一緒に
わたしはとある山へと歩いて行くのだ

そうしながら、わたしは余りある願いのことを考えている。

空(から)の両の手が、軽く、そして自由にするので、
かくも軽くするので、わたしが今この瞬間に
こうして始めることができたということを
わたしは知らなかったであろうか?
(いや、この山に来る前に既に知っていたのだ。
わたしは、何も両手に所有していないのだから。)


【解釈】
Ko Unとアルファベティカルに書かれた名前だが、これは多分中国の詩人であろうと思う。

きっと中国では、元旦にでも、近くの山に登って、日本ならば初日の出を拝むような習俗があるのだろうと思う。

その山に登って(その山もやはりきちんと意義のある山であって)、新年の願いごとをするとみえる。

その日は、吹雪であった。いや、吹雪である。この詩の時制は現在。最初の2連は現在である。

最後の連、第3連のみが過去である。

ということは、最後の連で、去年を、またそれ以前の自分自身の過去を振り返って、そのように思ったということなのだろう。

実は、3連目のふたつの他動詞、一つ目はmachen、マッヘン、二つ目はabheben、アプへーベンは、目的語を持っていない。敢えて目的語を入れなかったのだと思う。

そのために、動詞の意味の輪郭が明瞭ではなくなっている。

これも詩人の意図するところだと思う。

それは、前の2連の現在形から推量する以外にはない。

前の2連の言葉はこうである。

猛烈な吹雪にも拘らず、新年のお参りに戸外に出て行くということは、余程の決心である。

それも、翻訳ではうまく出ていないが、「新年の日の早朝に挨拶する」というところの「早朝に」の助詞「に」は、そのときにという意味ではなく、文字通りに早い朝に対して挨拶をするという意味である。

それほどの思いの強い新年の朝への挨拶なのだ。

それも、伝統的な習俗に従って、小高い山に登るのだ。

妻と娘と一緒に、わたしは、山に(あるいは丘に)歩き行く。

「歩いてゆくのだ」と訳した動詞は、wandern、ヴァンデルンであって、これはヴァンダーフォーゲルという日本語にもある通り、これは、決まりきった、或いはあらかじめ決められた、分かりきった道を真っ直ぐに、一直線に行くのではない。

旅をする、放浪するという含意があることからわかるように、道を探して、或いは道を求めて、道を確かめながら、歩くという意味だ。大きくは、遍歴するという意味もある。

この徒歩(かち)で行くのは、人生の旅で、妻と娘と一緒に、そこの、登れば、登って新年の朝に挨拶すれば得られる何ものかを求めて、わたしは旅に出ているのではないだろうか。

さて、山に登りながら、余りある願いごとをあれこれと思ってみたが、登らなくとも、あるいは既にして登る前に、わたしは、次のことを知っていなかったであろうか、いや知っていたに違いない。と、そう歌っている。

それは、両の手が何も所有していなければ、その手は、かくも軽く、自由にしてくれて、それは
余りに軽くしてくれるので、今この瞬間に何ということはなく、このように(吹雪の中、困難な道を来て)易々と始めることができたのだということを。

Abheben、アプへーベンを仮に、始めると訳したけれども、この言葉を始めるなどと包括的な意味のある言葉にして、その動詞の複数の意味するところをまとめてしまうと、やはり却ってその意義、即ち本来の意味が薄れて行くようである。

ご参考までに、英語で類義語を挙げると次のような語が並びます。

Lift, raise, bast off(space rocket), take off(lid, cover, etc), slip(knitting), draw out(money from bank), pick up(phone, card), get off

このわたしは、何かを求めて決心するものがあるのだと思われる。

それでも、いざ願いごととなると思いはあれもこれもと思うのだ。

この山には不定冠詞がついているので、必ずしも土地のひとたちが習俗的に、習慣的に毎年行く、習い覚えた山ではない。わたしが任意に選んだ山だということがわかる。初めて登る山かも知れない。

あるいは、この不定冠詞は、わたしが敢えて、読者にその山がどの山かを知らせまいとして、そのように表したのかも知れない。この解釈ならば、その願いも一層の秘め事ということになるだろう。

最後の過去形の反語的疑問文の意味するところは、このように吹雪も吹き、しかも初めてでもある困難な道を、毎年新年にはひとのするように山に登ろうとやってみて、しかも妻と娘も伴って、と、そのようなこころがあるのならば、既に答えは、出ていたのだ、何もない両手がかくも易々と自由にしてくれていたのだ、と、そのような意味ではないかと思う。

空(から)の両手は、わたしの空の両手とはいっていないのが味噌だと思う。

無冠詞で、空の両手だといっているのだ。

もっと言えば、いつも、わたしが俺は何も手にしていない奴だなあと繰り返し思っていたとしたら(石川啄木の歌にあるようなことだが)、ドイツ語では無冠詞になると思う。啄木は、じっと手をみた。わが手とはいっていない。同じように、単に(空の)手ということで、手というものが自分の手であることを超えて、何もなさ過ぎて、もうなんということもなくなっている、そんな手になるのではないだろうか。

こうして読んでみると、この手のことばかりというわけではないが、この作品が詩であるのは、表現が作者の個人的な体験に留まっていないからだということができる。

追伸:
第1連の「わたしは新年の朝に挨拶をする/妻と娘と一緒に」というところは、ドイツ語で音読して聴くと、妻と娘と一緒に、わたしが新年の朝に挨拶をするように(時間の中では)聞こえます。

そのように詩人が意図的に詠んだということだと思う。文法的には、ふたりと一緒に山に登るのであるが。

原文の第1連の2行目の最後のコンマは、そのような意味であり、そのような働きをしている。文が切れていないのです。

追伸2:Ko Unというひとは、高銀といい、韓国の有名な詩人だということを後で知りました。Wikipediaに掲載があります。:http://en.wikipedia.org/wiki/Ko_Un

2010年12月30日木曜日

日本語の詩は何故改行するのか、できるのか?

今日も歳末とて午前中大掃除。

その間、頭をよぎることあり。

それは、日本語の詩の改行の問題です。

文書を整理していたら、banさんから戴いた立教大学の詩の講座での教科書が出てきて、そこに秋山基夫さんの「詩行論」の引用があり、再度この問題について考えたい。

とはいえ、あるいは備忘のようなものになるかも知れない。

最新のtabの編集後記、confidenceに書いたわたしの文章をまづ引用します。

「リルケのオルフェウスへのソネットを訳していて思ったことで
あるが、ヨーロッパの詩は脚韻を踏むので、改行しなければ
ならない。改行するのは、脚韻を踏むためである。

これに対して、日本語の詩は何故改行するのであろうか。
ヨーロッパの詩の真似をして改行しなければならないから
改行しているのだろうか。改行する必然的な理由は
なんだろう。脚韻ではない。

今芭蕉七部集を読んでいるので、連句のことを思った。これは、改行の連なりである。付合という必然的な理由がある。

日本人の書く改行詩にある深層意識は、これではないのだろうか。

これは、視点を変えてみれば、モード(話法)の変換の連続ということである。これが連句、俳諧だと思い、日本語の詩の急所、エッセンスだと思う。

そうであれば、それを意識して書けば日本語の詩になるのではないかと思った。」

ここで言っていることは、

1. 日本語の詩は何故改行するのか?という問い。
2. モード(話法)の転換ということなら詩の改行はあり得るということ。

このふたつのことを言っている。

もっと言えば、西脇順三郎の詩の改行は、上の2に当たっているのではないかということです。

さて、秋山さんの詩行論から以下に孫引きします。

「朔太郎の文語詩から口語詩への移行は、文語の美意識の破壊、口語による詩の創造という二段階であった。」

「朔太郎が口語によって詩を書いたとき、文語の場合のように七五などの句を単位として行の長さを決めるわけにはいかなかったこと、にもかかわらず行わけの詩を書いたのだということ、この当然と見えるところに、実は、現在にいたるまで持ちこされた問題の核心があるのだ。連用形を多用すれば、当然そこに脚韻のようなものの、規則化されないその時限りの押韻の効果はあるだろう。また、一行が何によって終わるのか、それを決めることにもなるだろう。しかし、それがただちに、行の長さを決めるすべてにはならないのだ。」

詩と対極にある典型的な散文の文章を想像してみて、もし改行せよといわれて、詩のように改行するとしたら、その区切りの理由は、明確に次のようになるだろう。

1. 主文をひとつ提示する(提示して一行を終わる)
2. 主文と従属文を分けて改行する。
3. 更に、従属文の中の主語と述語で分けて改行する。

例を即興でつくってみると、

今日詩の教室へ行くと
先生が先に来ていたので
おはようございますと
挨拶をした。

というようにです。

同じbanさんの資料にある倉田比羽子さんの「脱落」という詩の、引用されている最初の二行は、次のようになっています。これは、散文でいう上の2の例です。

「わたしは 鏡のなかのその人に慎み深くわたしと呼びかけるだろうから
呼ぶ声は夜明けの航跡 光を導く愛の触媒となってふり返る」

ここでは、形式上、詩と散文の区別はつかない。

この一文(実際には二行の文。しかし、ひとつのセンテンス)が詩であるとしたら、それは何によっているのだろうか。

形式でなければ、実質によるのだという議論になるだろう。

そうして、詩とは何かを定義しなければならなくなり、詩といっても、その言葉の下で、詩の精神、Poesie、詩の制作、詩作品のいづれかを言っているという議論になるだろう。

(詩の定義については、我が詩文楽を御覧ください:

そうすると、ここで問題になるのは、詩の精神とポエジーである。

上の倉田比羽子さんの一行は、ポエジーを有するか?また詩の精神の発露があるか?ということが問われることになる。

わたしの詩文楽の詩の定義によれば、詩は典型的には隠喩(メタファー)によって現れるので、この詩の一行にそれがあれば詩だということになる。

確かにそうみれば、特に主文(2行目の行)は、隠喩の連鎖である。

(この稿続く。)

追伸:詩文楽の詩の定義を、備忘的に、そのままここに転記します。

「2009年10月28日水曜日
詩を、また詩について、書くことについて

リルケの詩について書きながら、あれこれ詩と詩について考えて得たもの、得たことがある。詩とは、ポエジーと詩作品または詩作という意味です。ひとによっては、詩精神という意味まで、詩という一語に籠めているひとがいるように見える。さて、ここで、中間地点で、小さなまとめを記しておきたい。それは、次のような定義です。

1.詩とは、連想の芸術である。

2.詩心とは、無媒介のこころである。

3.分類とは、概念を定義することである。


1の定義は、連想ということから、これは隠喩のありかを既に伝えている一行(センテンス)なり。この定義の中の詩とは、詩作品または詩作という意味です。

2の定義は、これはこの通り。直かなこころのことである。普通は、この世にはない。よほどのことがなければ。人は普通は、媒介、媒体を通じてまた共有して、意思疎通を図っているから。その形式が、ことばと文法ならば、主語と述語ということ。詩は、そうではない。

3の定義は、これは、隠喩の形式でもある。隠喩は、このように、これほど、詩人の宝なり。この定義から、隠喩はまた連想でもあるということが判る。1の定義と実は、同じことを言っている。かくも姿が異なるけれども。


(実は、ひとつのことを、敢て、三つに分けたものである。)」

2010年11月6日土曜日

似たもの同士を集める

今日は、詩のワークショップには、所用あり、残念ながら、行けなかった。

やはり、なんだかんだといって、夕方まで掛かってしまった。

しかし、転んでもただでは起きない、このわたし。

電車に乗って、向こうにある「古代メキシコ、オルメカ文明」の広告写真をみていると、あることに気がついた。

この写真には、このマヤ文明以前の文明の民族のつくった石の仮面、石像の顔が大写して載っているのだが、これをみて、何故人間は、似たもの同士を集めるのだろうと思った。

これらの顔は、この文明の民族の男の典型的な顔のひとつひとつだと思われる。

この顔は、言語、詩の世界ならば、譬喩、特に隠喩(metaphor)というpower(権力)のことを意味する。

論理的な言語形式としては、AはBであると定義すること、何と何が等価であるかを考えることである。

この隠喩とは、あるいは譬喩とは、そもそも、言語の等価原理である。

お金、銭金と同じ淵源から生まれてきているのだ。

この交換原理の、この世界、この世での貫徹を願う詩人は、裏切りという言葉を使って、これを否定的に表現しようとする。

これは、道徳的、倫理的な言葉であり、詩人の考えである。

(これは、前回詩のワークショップにいらした、三角みづ紀さんの言葉を思い出して書いている。)

しかし、詩人は、そのあり方(絶対贈与者)からいって、この言語的交換原理即ち、譬喩を裏切っている。

このようなことを考えた。

ショーペンハウアーが自分の主著の註釈に入れたアリストテレスの言葉はまことに意味深長、意義深いものである。それは、

似たもの同士を集める、これは人類の叡智である

という言葉である。

文字の通りには正確な引用ではないが、これと同じことを言っている。

なぜ、人間は、似せて表現するのであろうか?

なぜ、人間は、似ていることにこんなに感嘆するのであろうか?

これらのことは、すべて、言語は機能であることを証明しているのだ。

ついに、わたしの最後の問いは、何故宇宙はそのように出来ているのか?という問いである。

2010年10月3日日曜日

芭蕉と西脇順三郎

ご縁があって、芭蕉七部集の冬の日を読むことになった。

誠にむつかしいが、また考えること、読み込むことが面白い。

例えば、冬の日の歌仙の3巻の発句:

つつみかねて月とり落とすしぐれかな

(しぐれは本来は雨かんむりの時雨を使っています。)

これは杜国(とこく)の句であるが、この最初からわからない。

というような調子で、冬の日の3巻と4巻を行きつ戻りつ日が暮れた。

俳諧、連句を読んでいて、はたと思ったことがある。

それは、西脇順三郎の詩に実によく似ているということである。

句と句の関係、繋がり具合が、とてもよく似ていいる。

句と句の呼吸といってもよいと思う。

あるいは、句から句への展開が。

西脇順三郎という詩人にとって詩を書くことは、一人で連句をするようなものだったのだと思う。

そうして、その詩を読むと、その句の連続がそのまま旅であったことも、旅であることもわかる。

今日西脇順三郎の書いた「はせをの芸術」というエッセイ(評論、批評)を読んだが、それによれば、芭蕉は老荘思想を学んだということである。

これは、ビジネス、business、忙しい状態というものの対極にある、全く無為なる境地である。しかして、美あり。文学とはそのようなものである。

追伸:境地! ヨーロッパの白人種たちであれば、認識というであろう。

2010年9月28日火曜日

Grünbeinの詩

ドイツ語圏の現代詩人で、Durs Grünbeinという詩人がいる。

日本語で発音すると、デゥルス・グリューンバイン。現在48歳。日本では全くといっていいほど無名です。そもそも現代の日本では、現代ドイツ詩というものを読むということがない。

ドイツ語のWikipediaは、

http://de.wikipedia.org/wiki/Durs_Gr%C3%BCnbein

英語のWikipediaは、

ttp://en.wikipedia.org/wiki/Durs_Gr%C3%BCnbein

この詩人の作品のうち、

Vom Schnee oder Descartes in Deutschland

という作品を日本語に翻訳する試みを、のんびりと始めたいと思います。

日本語に訳せば、雪について、またはドイツでのデカルト、という題になるでしょう。

このように、主人公は、デカルト。従僕のジローと一緒に、17世紀は30年戦争のドイツに来て、その冬を迎えています。

さあ、何がどんな展開になるのやら、今から楽しみです。

乞うご期待、です。

2010年6月4日金曜日

Hart Craneつれづれ草5




柴田宵曲のふたつの著作を読み終え、昨日今日とまたHart Crane論、「Hart Crane and the homosexual text New Thresholds, New Anatomies」(Thomas Yingling著)を読み始める。

今日は、第4章、男色者の叙情詩という章である。

Craneの手紙から、その叙情性のよってきたるところを、このひとは文芸理論、詩理論(日本語でいう詩論ではない、詩の理論である)をもとに歴史的な文脈と、それを否定したCraneの詩の叙情性を論じるのであるが、その論のいう、まことにわが膝を打つばかりの箇所をそのまま引用して読者諸賢の閲覧と理解に供せむと欲す。

同書108ページから:

But Moore was not the only literary authority Crane seemed unable to please; one of his famous prose statements (where he outlines his poetics as a "logic of metaphor") was written to Harret Monroe in an attempt to explain to her that his poetry was not non-sense, that it was in fact grounded in an explicable theory of language."

Mooreというひとは、Marianne Mooreという女性の編集者のことで、CraneのThe Wine Menagerieという詩に大幅に手を加えた編集者である。最初の連ふたつを削除し、その他文言を替えたのだという。Craneがなにもいえなかったのは貧しかったから、お金がなく、お金が欲しかったからである。と、そう書かれている。そうだろうと思う。それに、この編集者には男色者の詩のレトリック、修辞学は理解できなかっただろう。しかし、Craneの詩に魅力を感じていたこともまた事実であり、この詩人も世話になったことではあるのだ。

端的にいって、it (his poem) was in fact grounded in an explicable theory of languageということは、その通りだと思う。Craneの詩は、確かにin an explicable theory of languageに書かれている。わたしがこの詩人の詩を理解したのも、唯単純にウエブスターという辞書をひいて、この詩人の使う言葉ひとつひとつの概念に戻って考えたからである。

詩人はどんなに愚かであっても、嘘をつかない。

もうひとつは、同書109ページ:

Craneが、男色者としての自分の詩を自己検閲をしたということ、社会にその内容、意義と意味を知られることを極度に恐れたということである。

His letters from Ohio refer several times to the "Ulysses situtation" - "terrible to think on" (Letters, 72). "It is my opinion that some fanatic will kill Joyce sometime soon for the wonderful things said in Ulysses" (letters, 95).

Joyceのユリシーズの中の"the wonderful things"とは、男色のことについて書いてあることをいっているのだと思われる。

この引用の前後にある著者の文章とCraneの言葉の引用は、非常にこの詩人の社会に対する恐れを表していて、的確だと思う。その分、この詩人の詩は階層が深く、多重の掛け言葉に満ちていて、理解が難しい。

もうひとつ、ページが相前後するが、ページ106:

著者が論じていうには、Craneの詩の核心にあるのは、the textuality of subjectivityだといっていることである。これが、男色詩人の叙情詩の問題だといっている。

柿沼徹さん、またfiさんが論じていることに多いに関係あることなり、とそう思うのです。敢えて言えば、言語と主観の問題、主観の持つ言語との関係におけるその性質ということになりましょう。

(性質とわたしは言ったが、そうであれば、性質はまた言語なる関数の一要素なり。被演算の対象なり。)

わたしがHart Craneの詩に惹かれるのは、男色詩人であることではなく、それとは無関係に、結果としてこの詩人の有する表現の到達した一般性、普遍性、即ち主観と言語の関係のあらわれにあるのだな、そのあらわれ方の普遍性に。

2010年5月8日土曜日

Hart Craneつれづれ草4

4月27日はHart Craneの命日である。1932年4月27日に、メキシコからニューヨークに向かう船の上から海に身を投げ、33歳の若さで亡くなった。

船の名前は、SS Orizaba。当時のことなので蒸気船です。

手もとにあるCraneの全作品の収録された詩集の一番最初に「C 33」(C, one space 33)という詩が載っています。これは、多分10代の作品。この題名から考える通り、Craneは、もう既にこのときに自分の人生が33歳で終わるのだということを見通していたのではないかと思われるほどです。

わたしの天才の定義は、若年にしてそのひとの人生を見通すひとが天才だという定義なのですが、Craneは、確かに天才なのだと思います。

この詩には、既に後年の詩集にある、男色者として詩を暗号化して書いております。今読んでいる論文、Hart Crane and the homosexual textによれば、Crane若年の折、詩人を男色に誘惑したのはan old manだと、後年詩人自らが言っているということですが、そのような経験をして詩を既に10代で書いたのだということになります。

その他、Craneが私信で書いている好きな男のどこがどのように好きかとういときの言葉は、実に生々しく、男色とはまさしく男性同士の性行為であることを如実にしめしています。それは、男女の性行為とは格別に異なる素晴らしい経験なのだと思います。一寸引用しますと、

I can remember happily. With .... you must think of someone . . . with a face not too thin, but with faun precision of line and feature. Crisp ears, a little pointed, fine and docile hair almost golden, yet darker, - eyes that are a little heavy - but wide apart and usually a little narrowed, - aristocratic (English) jaws, and a mouth that is just mobile enough to suggest voluptuousness. A strong rather slender figure, negligently carried, that is perfect from flanks that hold an easy persistence to shoulders that are soft yet full and hard. A smooth and rather olive skin that is cool - at first.

Execuse this long catalog - (Letters 126-27)

このようなエロエィックな対象が男から見た男なのでしょう。

その他にも、詩に書いているような、男色者特有の隠語で書いている性行為もあって、次のような箇所は、全くTo Brooklyn Bridgeを読んでいるのと全く径庭がありませぬ。男色者の言葉の世界それが、社会に認められずに離反しているがゆえに一層、また隠語で話され書かれている分だけ、一層そのまま詩になっているのだと思います。

And I have been able to give freedom and life which was acknowledged in the ecstasy of walking hand in hand across the most beautiful bridge of the world, the cables enclosing us and pulling us upward in such a dance as I have never walked and never can walk with another. (Letters 181)

男色者同士の性行為、肛門性交のqueを橋、bridgeに譬えている。これはこのまま暗号化された、Craneの詩文になっていると思います。

と、このようにあれこれとHart Craneのことと、その文学を思うことで、今日の供養といたしませう。

2010年4月21日水曜日

Goodbye Yellow Brick Road

Hart Craneの論文を読んでいるせいか、Elton Johnのこの歌を思い出す。

そう思って考えてみれば、Brickとは陽物であるからして、Brick Roadとは既に男色の道という意味である。

Hart Craneの詩の中に色の形容詞を探したが、yellowは無かった。この色にElton Johnなどどういう意味を持たせたのか。

Goodbyeも、男色詩人が使うときには意味がありそうだ。Hart Craneもある詩の中でこの言葉を用いている。

Hart Craneを読みながら、このようなことを考えてみよう。

男色詩人の詩の世界は、実にassociation、連想、概念連鎖が豊かです。幾重にも掛けられる意味の世界。何故人間はこういうことに惹かれるのだろうか。

これが宇宙のありかただからだろうな、というのが、このごろのわたしの感想です。

一つの詩文は、そのままで宇宙の構造が現れていると思う。
(どのように?どうやって?なぜ?)

(しかし、このようなことが何故amoralやimmoralなことになるのであろうか。(それは、すべて主体と客体の関係の問題だ。))

インターネットの世界でこの歌の原詞と和訳を見つけたので転載します。
いい歌だと思います。

When are you gonna come down?
When are you going to land?
I should have stayed on the farm,
I should have listened to my old man.

いつになったら離れるつもり?
いつになったら落ち着くんだい?
僕はあのまま農場にいるべきだったんだ
おやじの言うことを聞いとけばよかった

You know you can't hold me forever,
I didn't sign up with you.
I'm not a present for your friends to open,
This boy's too young to be singing the blues.

僕をずっとつなぎ止めておくのは無理な話
契約書にサインしたわけじゃなし
僕は友達のための贈り物じゃあないからね
子供の僕がブルースを歌うのは十年早いな

So Goodbye Yellow Brick Road,
Where the dogs of society howl.
You can't plant me in your penthouse,
I'm going back to my plough.

だから、さよなら黄色いレンガ道
「上流」のやつらが遠吠えする街よ
ペントハウスなぞに根を生やす気はない
僕は僕の大地に戻るんだ

Back to the howling old owl in the woods,
Hunting the horny back toad.
Oh I've finally decided my future lies
Beyond the yellow brick road.

もう一度、森で鳴く、懐かしい梟のもとへ
イボ蛙を捕りに行こう
ああ、やっと決心できた。僕の明日は
黄色いレンガ道の彼方にあるんだ

What do you think you'll do then?
I bet that'll shoot down your plane.
It'll take you a couple of vodka and tonics
To set you on your feet again.

それでこれからどうする気?
君の飛行機は撃ち落とされること請け合い
また元気に立ち直るまでには
ウォッカ・トニックが何杯必要かな?

Maybe you'll get a replacement,
There's plenty like me to be found.
Mongrels, who ain't got a penny
Sniffing for tit-bits like you on the ground.

僕の替りは、そりゃあ、いるかもね
探せば僕みたいのはいっぱいいるだろうし
地べたでくんくん、君みたいなご馳走を
嗅ぎ回ってる一文無しの雑種の犬どもがね

So Goodbye Yellow Brick Road,
Where the dogs of society howl.
You can't plant me in your penthouse,
I'm going back to my plough.

だから、さよなら黄色いレンガ道
「上流」のやつらが遠吠えする街よ
ペントハウスなんかに根を生やす気はない
やるべき仕事に戻るんだ

Back to the howling old owl in the woods,
Hunting the horny back toad.
Oh I've finally decided my future lies
Beyond the yellow brick road.

もう一度、森で鳴く懐かしい梟のもとへ
イボ蛙を捕りに行こう
ああ、やっと決心できた。僕の明日は
黄色いレンガ道の彼方にあるんだ

(http://www.asahi-net.or.jp/~rj5y-okr/zz/worx/yellow.html)

2010年4月16日金曜日

トーマス・マンの闇について


詩の定義(多義性ある一文)と詩の非政治性について、あることから、引き続き自ら問うたこのふたつの関係を考えてみた。

現実の社会は、その権力者は、あるいは政府は(仮に国民国家、近代の国家ー日本も同様ーを考えると)、何かについてのコンテクストをひとつに限定したい、収斂させたいと考え、実行する。それが支配ということだと思う。法律の体系などというのは、その最たるものではないか。それは所有慾を前提にした所有を正当化するための、言語で記述され、ひとつひとつの言葉が定義されたシステムである。

これに対して、あるいは反して、詩は言葉の本来の性質と言語の構造に従うので、ひとつの文からして多義的であることをあたりまえとしている。

ここに詩が、政治と衝突する契機がある。散文家は、ことばを手段として政治的な批判をすることができるが、詩人は、言葉そのものの多義的な構造に忠実ならむとするので、破格文法的な表現であれ、文法的な表現であれ、その詩人のことばが現実に直接触れたときに生まれる表現が詩だという形をとるのではないだろうか。それはどのような詩の姿をとるのであるだろうか。

以前あるブログで言及した同じトーマス・マン論を移動書斎で読んでいるのだが、マンが、第1次世界大戦のときに書いた文章でFeldpost、訳せば戦場通信という文章がある。Feldは英語でfield、postはpostです。

ここで、マンは、戦時下において芸術家の自由とは何か、芸術家の運命とは何かを問うて、その問いに答えて曰く、それはGleichnis(似ていること)、すなわち比喩に生きることだというのがその答えなのだ。一例を挙げようといって、これがそのひとつだと、その語調からいって断定的に(いささか格好良く)、Soldarish zu leben, aber nicht als Soldatと言っている。訳せば、兵士的に(つまり兵士の比喩として)生きること、しかし(実際の)兵士としては生きないこと、だ。

このせりふの前提には、当時ドイツの作家たちが同様の問題を論じたときのテーマがあったようで、それはKunst als Krieg、戦争としての藝術という考え方があるといっている。芸術家が作品をつくることは、実際に血を流す戦争、血を流して戦場で倒れる兵士と同様の、そのような営為なのだという主張である。そのような議論をしたものであろう。

そのことによって、芸術家は戦争に参加するのかしないのか。

マンがいう兵士的に生きるが兵士としてはいきないという文は、いまこの年齢のわたしが読むと、これは明らかに詭弁だと思う。

今日上に置いた写真は、わたしの持っているトーマス・マン短編集に収められている、わたしがよく言及するマン18歳のときの散文の小作品、Visionを本文右側の隣のページにそれを図解したわたしの絵である。よく見えないかも知れない。うまく見えるとよいが。

主人公の周囲は闇である。夜。ある部屋にいて、主人公は椅子に座り机に向かっている。ランプが点いていて、そのランプからの光が円錐形をなしている。主人公は闇の中にいて、闇の中からその明るい円錐形の中を覗き見ている。そこを舞台にして、ふたつのものが過去の記憶の中から姿を現す。ひとつは、聖杯であり、もうひとつは女性の白い手と腕、青い血管が息づいているエロティックな女性の腕です。それが聖杯のそばにある。このような図を写真の中に読むことができるでしょうか。

従いまた、この男は男性としては性的には無能力者だということになります。実際マンの同性愛の傾向は抜きがたい。(同じ典型的な芸術家をわたしはHart Craneというアメリカの詩人にみますが、こちらはもっと現実的に、つまり肉体として男色者でした。)

この円錐形の光の世界でおこることは、闇の中にいる男は制御することができません。ただbegierig(熱心に)見ていることができるだけです。この熱心にというドイツ語に、わたしはマンの性欲、倒錯した性を感じます。単に熱心というだけではない、もっとエロティックな欲情ともいうべき熱情なのです。しかし、その対象、そのエロスを、外にいる男は所有することができないのです。作品、すなわち言語組織体は、そこで自己の意志を以って自己増殖する。マンが繰り返し述べているところです。どの作品もそうやって生まれる。

わたしは、この作品のいわんとしているところ、あらわしているところは、芸術家の、およそ言語にかかわる芸術家、散文家であろうと詩文家、詩人であろうと、そのようなひとの姿を真率にあらわしていると思っております。

このような構造を持った世界を前に、マンはただ倒錯的に、冒頭に述べたような普通の社会価値観からみれば、転倒した価値観をもって、そこにいるのです。マンを詩人に置き換えてみましょう。詩人が詩人であるのは、作品とこのような関係を持ったときだけです。わたしはそう思います。

昼の、明るい、周囲がそのようである場所で、目の前に起こる現実的な事件に対し、その人間はその事件を制御することが同様にできません。できませんが、それを周囲に闇があり、目の前で起きる言葉の自己増殖と同様だと敢て思いなし、そう考えて、現実の事件、すなわちこの場合は戦争も作品だとし、更に作品の比喩だとして考え違いをすると、詩人の言葉は力を喪失します。それどころか上で大人のマンが示しているように、無残なことになる。

上の論文を読んでいると、マンのBBCでのドイツ民族への呼びかけ(形式的には、ドイツ人に対する反戦のスピーチということになるのでしょうが。こうしてみると反戦などとはいい加減な言葉だ。自分は反戦詩人ではないといっている金子光晴の素晴らしさよ。金子光晴は自分をそのようにいう人たちを嗤っている)は、文字にしたそのたのエッセイなどの散文でそうであるように、言葉の意味、すなわち概念を整理しなおすということを、自分が納得するようになるまで繰り返すだけで、実際に現実に働きかけ、何かを動かすことばにはなっていないと論文の筆者は言っています。これはマンについては、第2次世界大戦時の文章も同様だといっています。

このことは、上のVisionの主人公の姿を見れば明らかなのですが、結婚をして(これをマンは, Ich bin verwirklicht、わたしは現実化したといっています。それまでの青年期のマンは、闇の中にいる人間、現実には死んでいる、死者としているような存在と考えているのでしょう)、国民国家の一員でもある生身の人間としては、戦争も不幸にして経験しなければならない、そのときに芸術家としてどうするか。

マンの失敗から受け取るべきわたしたちの教訓は、詩人が政治的なものに触れて言葉を発するときには、くれぐれも比喩を使うことに慎重でなければならないというものです。比喩はまた言語の本質から生まれるものです。(それでは言語とは何かという問いを問うことになりますが、これは詩誌tabに以前書かせていただいたので、ここでは敢て触れません。)

そして、詩人は比喩を使わずに詩を書くことができない。ここに、非常時の場合の陥穽、落とし穴があります。

闇の中にいて詩を書く場合には強みであるものが、昼の明かりの中に自分自身がいて、暗い世界に見る事件について政治的に発言するときには、その言葉が比喩を使うために逆に威力を失うのです。なんという皮肉でありましょう。前者の言葉は、政治力学と全く無縁ですが、後者の言葉は煽動の言葉となるでしょう。

わたしが詩に惹かれるのは、それが前者の言葉だからです。ひとによってみれば倒錯した、価値の転倒が当たり前の、目の前の光ある世界に対しては全くの無能力者の、18歳のマンが書いたVisionの世界のありよう、これが詩の世界の、というよりもまた言葉による表現の世界の何たるかをあらわしているのだと思います。

ある人に問われた問い、何故お前は詩を選んだのかという問いに対する答えは、今回うまくかけている文章だとは思いませんが、このような理由ではないかと思います。

ああ、それからもうひとつ。以上のべきたったことに大いに関係があるのですが、戦争の起源と性愛の起源とは、言語という観点からみると、これらは全く同じものなのです。(また、言語とは何かでありますが。)そうしてみると、詩人の政治や戦争に対する無能力な姿を、また性的にも政治的にも、もし論じるとすると、ここからもっと論を展開することができると思います。

2010年4月15日木曜日

Hart Craneつれづれ草3

今日もYinglingさんの著作を読む。段々と話しが佳境に入って来る。あるいは、男色者の詩の本質的なことに触れ、その詩の解読に向かう。

男色者の詩は、やはり暗号化されているということ、その詩人の任意の(というのは私の言葉)sign、標識が立っていて、それで書かれているということを述べている。これは、Craneの詩の特徴を言い当てている。特徴は本質に至る。

Craneの詩については、

Meaning in Crane is always structural and relational, and finally, even the morphemes "trans" and "sign" in the passage above locate themselves as meaningful only in their relation to other passages of the text.

とあるのは、やはり、我が意を得たりという思いがします。

話しは変わりますが、まだ東京に出てきたばかりのことなので、19か20のことではなかったかと思いますが、今となっては何故そこにいたのかはわからないけれども、夜の8時頃六本木のアマンドの辺りを歩いていて、向こうから来た見知らぬ若い男に郵便局はどこですかと訊かれたことがあります。あるいは、ひょっとしたら、郵便局はまだやっていますかという質問だったかもしれない。何故か、この問いとその場面が長いことこころの中に引っかかっていて、その後も、あれは一体なんだったのだろうと思うこと度々でありました

しかし、あるときHart Craneの詩を読んでいて、その謎が解けたのであります。

Heterosexualの、そういう意味では正常な男性が、女性の秘所を指して、卑俗なアメリカの英語でpackageと呼ぶのをあるエロいビデオで知ったときに、何故To Brooklyn BridgeでCraneはparcelを歌ったのか、

The City's fiery parcels all undone

と歌ったのかを考えていて、その謎が解けたのでした。

このシティは、ニューヨーク・シティ、その金儲けの中心街区、Craneが夜には男色をもひさいだことのある町。その町と、古代の、ユダヤ人の聖書にある避難の町のシティと、ふたつの掛け言葉です。Craneは神聖なものにいつも冒涜の意味を掛け合わせて言葉を使います。それはもう、素晴らしい位に。

後者も罪を赦す町であるように、前者もそうであるという、そのような一行です。

わたしはが見た、そのエロい場面は、撮影者の男がその女に話し掛ける言葉に、お前のpackageは、素晴らしいという言い方があったのですが、これは、packageというのは、この場合明らかに女性の秘所をいう隠語でしたが、これが何故packageなのかがずっと疑問でありましたが、Craneのこの連に来て、そうして、第2連とは同じfloor、同じclass、同じlevelの連だということを念頭に措いて考えると、その謎が解けたのでした。

それは、何故女性の性器がpackageかというと、それは、男が開くものだから、そうして女が両脚を開いて、包まれている中身を見せるものだからです。開梱されるものだからです。

これに対して、parcelは、小包ですが、しかし、男性がそのpenisを男性の肛門に包んでもらうもの、それは女性のようには開かれないで、包まれるものという感覚であり、意味なのだと思います。それが、fiery parcelなのです。火のように痛く激しく感じる肛門性交。このことと、罪と、その浄めの祈りが、ユダヤ教の聖書という古典に分ち難く一体となって、詠われています。

Undoneとは、そのような男色の罪が一切なかったことになるという意味です。

話しが長くなりましたが、何故六本木の夜の路上で男に郵便局の場所を訊かれたのかというと、これが男色者の符牒であったからなのでしょう。そう気がついた次第です。これで、肯定すれば、その男は男色者であるとわかるのです。郵便局、そこは、郵便物、parcelを出して、隠語の世界でのコミュニケーションを図る場所だというこころなのでしょう。

当時は、今のわたしとは異なり、少年にずっと近い美青年でありましたから(と自分でいってはいけないけれども)、そのようなこともままあったように記憶しております。とはいえ、わたくしは今にいたるまで、女性の方がなによりもずっと好きであります。

2010年4月14日水曜日

Hart Craneつれづれ草2

今日も「Hart Crane and the homosexual text New Thresholds, New Anatomies」(Thomas E. Yingling著)を読む。同時にThe Complete Poems of Hart Craneもポケットに忍ばせる。

解ったことと思ったことを今日も書くようにしよう。大したことではないかも知れないけれども、今書かないと二度と書かないかもしれず、忘れてしまうかも知れないから。

解ったことは、この研究論文の著者の副題である、New thresholds, New Anatomiesという言葉は、Hart Craneの最初の詩集「White Buildings」の18番目の詩、The Wine Menagerieという詩の第7連第1行目にある同じ言葉からとったのだということ。

Thresholdという言葉は、The Bridgeという詩集の中の最初の詩、To Brooklyn Bridgeの第8連第3行目にもterrific thresholdとして単数形で出てきます。これは、Craneにとっては概念化した深い意味を持つ言葉のひとつです。

これがどのような概念であるかは、その概念を展開して以前訳したところを見ていただければと思います:http://shibunraku.blogspot.com/2010/03/to-brooklyn-bridge-8.html

Anatomyは、The Broken Towerという詩の中の最後の連にThe matrix of the heartと書いているように、このmatrixという意味です。Craneは、確かにあるmatrixによって詩を書いているのです。男色者として、また自分独自に概念化した言葉を使って。天体のマトリクス、色彩のマトリクス、鉱物のマトリクス、それかた何よりもWhite Buildingsという題名そのものが正直に示している通りの詩作の構造のマトリクス。これについても、上のURLアドレスのページで解説をしておりますので、ご覧下さるとうれしい。

こうしてみると、このYinglingという著者は、同性愛者のこれらの言葉の意味を充分過ぎる位に知っていて副題としたのだと思われる。同性愛者たちの愛の行為のマトリクスを知っているのだ。

ThresholdやAnatomyという言葉のあるThe Wine Menagerieという詩の題名も、wineという言葉、葡萄酒という言葉の裏の意味は、Sunday Morning Applesという詩の解読からいえば、男色者の性行為の移り行く様を春夏秋冬という四季の遷移に比していて、夏の盛りにペニスが熟して実りとなる亀頭(これを林檎、Appleと呼んでいる)から溢れる精子のことを言っているということがわかりましたから、そのことを言っているのですが、menagerieという言葉との組み合わせで、Craneが何を言っているのかは、詩そのものをこれから読む必要があります。ちなみに、menagerieとは、いつもお世話になっているWebster Onlineによれば、次のようなものです。

(上で言ったAppleも暗号になっていて、これは、A People、すなわち男色者達という意味でもあるのでした。Ppleは、Peopleのneumonicー母音を落とした子音の羅列の仕方ーな表現。)

Main Entry: me·nag·er·ie
Pronunciation: \mə-ˈnaj-rē, -ˈna-jə- also -ˈnazh-rē, -ˈna-zhə-\
Function: noun
Etymology: French ménagerie, from Middle French, management of a household or farm, from menage
Date: 1676
1 a : a place where animals are kept and trained especially for exhibition b : a collection of wild or foreign animals kept especially for exhibition
2 : a varied mixture (a menagerie of comedians ― TV Guide)


男色者たちが、男色の行為をするときに、周りで囃し立てているのだということは、Craneの詩から読みとった通りです。それが、for exhibitionという意味だとして、男色者を動物に見立てたのか、いづれにせよ、そのような場所を暗に意味しているのでしょうか。わが筆が先走らぬように、解釈のための推測はここまでとして、後日に解釈を委ねましょう。

もうひとつ、思ったことをしるすことにします。それは、最初に挙げた論文に打たれているページ番号のことです。

奇妙なことに、普通の本ならば、大抵はページの一番下にある番号がいつも、どのページも例外なく一番上に、そして行の真ん中の位置に打たれているのです。これは、意味のあることではないでしょうか。

Pageという言葉は、ページと読めば、その通りの意味ですが、パージュと読めば、お小姓という意味になるからです。Websterからまた引きますと、

Main Entry: 1page
Pronunciation: \ˈpāj\
Function: noun
Etymology: Middle English, from Anglo-French
Date: 14th century
1 a (1) : a youth being trained for the medieval rank of knight and in the personal service of a knight (2) : a youth attendant on a person of rank especially in the medieval period b : a boy serving as an honorary attendant at a formal function (as a wedding)
2 : one employed to deliver messages, assist patrons, serve as a guide, or attend to similar duties
3 : an act or instance of paging (a page came over the loudspeaker) (got a page from the client)

この意味にもあるように、またChaplinesqueを読めば、男色者たちが、聖杯探究の中世の騎士にその身をなぞらえて性愛の行為に耽るということは、その裏の詩から読むことができたのでした。そうして、hostとguestという立場で歓待の限りを尽くす。そこには、お小姓もいたのでしょう。騎士に仕えて、その身の廻りの世話し、絶対的に服従する行為を受け持ったのだと思います。

(こうして今思ってみると、Chaplinesqueの最後の連にあるa grail of laughter、笑いの聖杯という言葉は、実際に性行為をして、性感極まり、wine、即ち精子の酒を注ぐhost役の相手から、口を聖杯に見立ててその歓待を受ける騎士役の受け手のその口のことを言っているのかも知れません。そのような連想が働きます。)

To Brooklyn Bridgeの第2連に、

Some page of figures to be filed away

として、出てきたpageです。

Pageの前にsomeがついているので、これも男色者の少年という意味になります。この解釈については、以前の詩文楽のページをみてください:http://shibunraku.blogspot.com/2010/03/to-brooklyn-bridge-2-version-20.html

これは、いつも若い子が一番上、最高という意味なのでしょうか。

Yinglingという人の言っていることは、極々当たり前のことで、gayの詩、男色者の詩は男色者の詩として読むということなのです。これはその通りですが、それが文学史の上ではどれほど難しかったかを、T.S.Eliotの詩人論、芸術家論(「伝統と個人」)の考えと対比的に、というよりも全くそれを否定する詩のありかたとして、正統的な伝統には連ならない詩のあり方として、Hart Craneを論じているのです。

Hart Craneつれづれ草1

自由が丘の西村文生堂なる古書店に行って、今日、「Hart Crane and the homosexual text New Thresholds, New Anatomies」(Thomas E. Yingling著)というHart Crane論を買うことができた。

書き込みの全くないきれいな古書でした。誠に感謝です。

この著者と通信ができるといいなあと思っていたのですが、事前にインターネットで調べると、既に1992年に亡くなっている。このひとも男色者であって(とはいえ家庭も構えていたことは、この本の序文で知るところですが)、AIDSで亡くなったのだと思われる、そのような書き方をしてありました。

早速読み始めると、やはり、このひとがgayであったごとく、論文中に男色者の隠語が入っておりました。普通のひとは、普通に読めば、なんということもなく読み過ごしてしまう隠語です。

わたしのHart Crane論の読者であるならば直ちにきづくところです。

それは、英語の定冠詞のa、でありました。例えば序文で、次のように使う。

著述に協力してくれた友人たちの名前を挙げ(それも多分男色者なのだと思います)、その名前を主語として、

...must stand in here for a longer list of faculty at the University of Pennsylvania who brought me to some understanding of my own stake inthe critical act. May they accept this book as, in some measure, a return in kind.

この文のsome understandingのsome、in some measureのsomeは、辞書によれば、語源的には、sameと同じ意味で、homosという意味であることから、この友人たちにそっと男色者の隠語を使って、異性性愛者には全く隠して、わからぬようにして、御礼を述べたのでありましょう。

some understandingとは、男色者としての理解、男色者についての理解という意味になるでしょうし、in some measureは、男色者の基準ではという意味を隠しているのです。あるいは男色者の流儀ではという意味になるでしょうか。そのお返しだというのです。

また本文に入って6ページ目に、

It is not, that is, that sexuality in Whitman is not intertexual with (and thus not simply a screen for) these other concerns.

この文のa screenも、定冠詞がついていることから当然としても、screenの裏の意味は、To The Brooklyn Bridgeの第3連にあったthe same screenと同じで、男色者の使用する性具を指しているのです。

また、この文の次の段落の2行目(同じ6ページ)には、

I refer to Whiteman here because his poetry is "frankly and directly sexual" in a way that Crane's more often is not, and therefore the historical critical silence on it is that much more obvious.

とある、この文のin a way。これは上のin some measureと同じ意味です。Chaplinesqueの第4連にも、この同じin a wayが出てきておりました。それは、男色者の流儀で、処刑をする(男色の性愛の行為の絶頂に達して死の状態になること)のは、決して金儲け、金のためではなく、純粋な行為なのだと歌っているところです。

それから、125ページにも次のような文があります。Hart Craneが詩集White BuildingのエピグラムにランボーのEnfanceからの一行を引用していることを指摘している次の文、

The section of "Enfance" Crane quoted is in fact a map of slippages and unsettled identities leading not to some resolution of crisis but dissolving in a forbidding and inhuman wasteland.

ここにある不定冠詞はみな男色者の暗号だと考えることができます。それから、someも。

まだ全体を読んではいませんが、このような男色者の世界の暗号を、この著者は決して表の世界に文字で書き表し、註釈することがないと思います。読めば、解る者には解る、それを楽しめるように書いてあるということなのです。

興味深く思ったことは、この論者が、Hart Craneを論ずるに当たって、まづアメリカ文学の詩の批評の歴史と傾向に触れて、それを批判する形で文章を書き始めていることでした。それは、もちろんアメリカ文学の中で不当に無視されてきた、この男色詩人達の詩のテキストを豊かに読むために必要な批判ではあるのですが。

読み進めながら、思うところ、発見を、Hart Craneつれづれ草としてあらわすことにいたします。

2010年3月31日水曜日

Sunday Morning Apples 6-2

【原文】
I have seen the apples there that toss you secrets, ---
Beloved apples of seasonable madness
That feed your inquiries with aerial wine.
Put them again beside a pitcher with a knife.
And poise them full and ready for explosion ---
The apples, Bill, the apples!

【表の訳】
ぼくは、お前に幾つもの秘密を、ほら行くよといってトスする林檎をみたよ
時機を迎えて成熟した狂気の林檎を、愛すべき林檎達を
お前の様々な問いを、精霊の葡萄酒で養う林檎達を
その林檎達を再び、林檎のエキスを注ぎ貯えるピッチャーのそばに
林檎の皮剥くナイフと一緒に措くが好い
そうして、その林檎達を抱き締め、いつ爆発しても よいように
するのだ
ああ、林檎だよ、ビル、林檎はいいなあ。



【裏の訳】
次の解釈に裏の訳をしました。敢えて、一緒にまとめるとこうなります。


ぼくは、お前に数々の秘密をトスして、ほらこれがこの秘密のことだよ、
こんなに感じるだろう、それがほうらその秘密のことだよ、ここもこんなに
感じるだろうと、お前の様子を伺いながら、こうして亀頭の林檎を上げ下げし、何度も繰り返して捻るようにして丹誠込めて愛撫して摩擦してやれば、膨張して精子が溜まり、十分に大きくなった成熟したビルの林檎を、それもうっかりとお前が感じ過ぎてしまったから、そうやってその精子をまき散らすビルの林檎を見たのだ。いや、見たばかりではない、ぼくはお前の精子を飲んだのだ。

時機が来て十分熟した狂気の果実、愛しい林檎達、亀頭達よ、男色者達よ
それが、ぼくたちなのさ。

その男色者達が、そうやって刺激しあって発酵させた天上、天空の飲み物、
葡萄酒のように1年の季節のそれぞれを大切に慈しんで到頭そこに至った
精子という夢の飲み物を、この季節の成熟を求める狂気、これは自然の狂気だ、この狂気を含んだ愛しい林檎達、男色者達よ。

男色者の使用する性具の受けの中に勢い良く
勃起した男根から一挙に噴射する、その精子の受け具はそれはそれとして
その横に、やはり同じく男色者のナイフ、林檎の皮を剥く、擦りあわせると亀頭が剥き出しになるほどに剥ける男根のナイフと一緒に林檎達をまた措く事にしようぜ。

そうして、林檎達、この男色者達を目一杯にして、そうして行きたくないのに、嫌でも爆発できるように、我慢できずに、もっと快楽をむさぼっていたいのにどうしても思いを裏切って射精できるようにと、バランスよく互いの攻撃と防御が快楽の中でできるように、このとき何の苦しみもなく安心して、容易に自己に充足できるのだから、

男色者であるということは、ビル、この夏のひとときよ、林檎という奴、亀頭という奴は、本当にいいよなあ。



【解釈】
1. 解釈の基本はこうでした。Craneはwhite buildingするということです。つまり、

(1、5)
(2、4)
(3、3)

という、このような階層の構造体を建設する。これがそのまま、次の季節に関係している。

(1、5):(秋、秋)
(2、4):(春、春)
(3、3):(冬、冬)

Craneは主題をいつも白い色の中に隠す。この場合は、夏、恋人の、多分少年のSommer、すなわちsummer、夏がこの詩の主題なのだ。

さて、こうして思い出して、考えてみて、最後の連は3階層の最上位に位置する秋を歌っている筈だし、実際にそうだ。相違はどこにあるかといえば、To Brooklyn Bridgeの場合と同様に、最初の連の秋は、落ちて行く秋、最後の連の秋、同じ階層に帰属する対の秋は、厳しい冬を経て上昇して来た、登る秋というところにある。

それは、最初の一行目でわかることでしょう。つまり、

I have seen the apples there that toss you secrets

とある、このtossはやはりボールか類似の形を上に投げ上げるというそのようなモーションを指しているから。

これを裏声で訳すとどうなるか。

ぼくは、お前に数々の秘密をトスして、ほらこれがこの秘密のことだよ、
こんなに感じるだろう、それがほうらその秘密のことだよ、ここもこんなに
感じるだろうと、お前の様子を伺いながら、こうして亀頭の林檎を上げ下げし、何度も繰り返して捻るようにして丹誠込めて愛撫して摩擦してやれば、膨張して精子が溜まり、十分に大きくなった成熟したビルの林檎を、それもうっかりとお前が感じ過ぎてしまったから、そうやってその精子をまき散らすビルの林檎を見たのだ。いや、見たばかりではない、ぼくはお前の精子を飲んだのだ。

という訳になるだろう。

2.
Beloved apples of seasonable madness

Applesが頻出し過ぎだが、これは本当にCraneにとっては得難い経験であり、ひとを慈しむことの極みであったのではないだろうかとぼくは思うのだ。
だから、この一行はこう訳してみる。

時機が来て十分熟した狂気の果実、愛しい林檎達、亀頭達よ、男色者達よ
それが、ぼくたちなのさ。

3.
That feed your inquiries with aerial wine.

その男色者達が、そうやって刺激しあって発酵させた天上、天空の飲み物、
葡萄酒のように1年の季節のそれぞれを大切に慈しんで到頭そこに至った
精子という夢の飲み物を、この季節の成熟を求める狂気、これは自然の狂気だ、この狂気を含んだ愛しい林檎達、男色者達よ。

4.
Put them again beside a pitcher with a knife.

その林檎をpitcherに入れるわけだが、このpitcherの語源をWebster Onlineにてみると、やはりgobletとあるので、これは聖杯を暗示している。中世の騎士道の物語をここでも男色者達は演じているのだ。相手が男だということを除けば、求道の対象は、the puritity、すなわち純粋ということである。これが男色者達の生活の規範なのであり規準なのだとぼくは、こうして、思うのだ。だから、その行為、最低の冬の季節、射精に至る前の惨憺たる姿態、駆け引き、その陰惨を、Craneは死刑執行と呼んだのだ。どんな利害もない自殺だ。損得勘定抜きの、純粋の自殺だ。Obsequiesとは、こうしてこのように考えて読むと、そういう意味になる。段々とCraneがぼくの傍にやって来るようだ。このように平易なぼくの日本語で話、解釈し、その謎を解きあかすことができるのだから。そうして、大切なことは、暴力的にではなく、礼儀正しく、ぼくは多分Craneに相対していることができているということなのだ。これが、ぼくは人生で、あるいはこの世で一番大切なことだと思う。たとえ、Craneに会う事ができなくとも。言葉の世界で会う事のできる歓びを。

そうすると、この一行の訳は、

男色者の使用する性具の受けの中に勢い良く
勃起した男根から一挙に噴射する、その精子の受け具はそれはそれとして
その横に、やはり同じく男色者のナイフ、林檎の皮を剥く、擦りあわせると亀頭が剥き出しになるほどに剥ける男根のナイフと一緒に林檎達をまた措く事にしようぜ。

5.
And poise them full and ready for explosion ---
The apples, Bill, the apples!

そうして、林檎達、この男色者達を目一杯にして、そうして行きたくないのに、嫌でも爆発できるように、射精できるようにと、バランスよく互いの攻撃と防御が快楽の中でできるように、このとき何の苦しみもなく安心して、容易に自己に充足できるのだから、
男色者であるということは、ビル、この夏のひとときよ、林檎という奴、亀頭という奴は、本当にいいよなあ。

That Sunday, that summerという歌をぼくは歌いたい。

つまり、こうだ、

a mouthpart (as the beak of a turtle) that resembles a bird's bill

と辞書にはあるように、BillはWilhamという名前の愛称であるが、同時に小文字のbillは、亀頭という意味でも、英語でもあるのだということ。


【語釈】
0. seasonable
0.1 madness
1. toss
2. secret
3. beloved
4. inquiry
5. wine
6. aerial
7. pitcher
8. knife
8.1 spout
8.2 receptacle
8.3 elongate
8.4 knife
9. poise
10. explosion
10.1 explode
11. Bill (?)
Main Entry: 1bill
Pronunciation: 'bil
Function: noun
Etymology: Middle English bile, from Old English; akin to Old English bill
1 : the jaws of a bird together with their horny covering
2 : a mouthpart (as the beak of a turtle) that resembles a bird's bill
3 : the point of an anchor fluke -- see ANCHOR illustration
4 : the visor of a cap or hood

Sunday Morning Apples 6-1

The khairein takes place in the name of truth: that is, in the name of knowledge of truth and, more precisely, of truth in the knowledge of the self. This is what Socrates explains (230a). But this imperative of self-knowledge is not first felt or dictated by any transparent immediacy of self-presence. It is not perceived. Only interpreted, read, deciphered. (Dissemination > Pharmakon by Jack Derrida)

自己を知るために、主語である支配者の秘密を知るために、今日も言葉の聖杯探究の旅に出よう。

【原文】
I have seen the apples there that toss you secrets, ---
Beloved apples of seasonable madness
That feed your inquiries with aerial wine.
Put them again beside a pitcher with a knife.
And poise them full and ready for explosion ---
The apples, Bill, the apples!

【表の訳】
ぼくは、お前に幾つもの秘密を、ほら行くよといってトスする林檎をみたよ
時機を迎えて成熟した狂気の林檎を、愛すべき林檎達を
お前の様々な問いを、精霊の葡萄酒で養う林檎達を
その林檎達を再び、林檎のエキスを注ぎ貯えるピッチャーのそばに
林檎の皮剥くナイフと一緒に措くが好い
そうして、その林檎達を抱き締め、いつ爆発しても よいように
するのだ
ああ、林檎だよ、ビル、林檎はいいなあ。



【裏の訳】
明日訳しましょう。お楽しみに。
あなたも裏声で訳してみて下さい。メールをお待ちしています。




【解釈】
これも明日、つれづれなるままに。


【語釈】
辞書はいつもながらWebster Onlineです。

0. seasonable
0.1 madness
1. toss
2. secret
3. beloved
4. inquiry
5. wine
6. aerial
7. pitcher
8. knife
8.1 spout
8.2 receptacle
8.3 elongate
9. poise
9.1p poise
10. explosion
10.1 explode
11. Bill (?)

Sunday Morning Apples 5

今日は、Jack Derridaから始めよう。移動書斎の中でDisseminationを読む。その中のPharmakonを。

今という時間を止めることができない。しかし、それは何故だろうか。この問いに、人間のすべの苦しみや悲しみが宿っているようにぼくには思われる。

The khairein takes place in the name of truth: that is, in the name of knowledge of truth and, more precisely, of truth in the knowledge of the self. This is what Socrates explains (230a). But this imperative of self-knowledge is not first felt or dictated by any transparent immediacy of self-presence. It is not perceived. Only interpreted, read, deciphered.

自己を知るために、主語である支配者の秘密を知るために、今日も言葉の聖杯探究を始めよう。


【原文】
A boy runs with a dog before the sun, straddling
Spontaneities that form their independent orbits,
Their own perennials of light
In the valley where you live

【表の訳】
太陽の前で、ひとりの少年が一匹の犬と一緒に走っている
遊戯をし、戯れるので、それぞれが互いに独立した円を描いていて
その軌道は形成する様々な自然の動き、自発的な喜びに股がって
恰も馬を駆るように  そうして、つまり、
お前が住む谷の光の持つ、少年と犬のそれぞれ自分自身の一年の四季に
股がって

【裏の訳】
太陽の役割を演ずるホストの男色者、この死刑執行者の眼前で
うぶな可愛い少年が、その魅力に惚れて犬のように従順になっている
人間の神、そのような年長の男色者と一緒に運行している。
それぞれの独立した、何ものにも従属することのない軌道を形成しているのは
その自然の姿態でありモーションの数々で、黙っていても腰が自動的に動くのさ、いわば馬に股がるように、両脚を開いて尻を上げながら、つまりお前の生きている男色街のその男達の尻の中に差すその光、夜明け前の薄暮の光を、そのビジョン、この世にはあらぬ土地で、一年中春夏秋冬相も変わらず、それぞれ自分の尻を性交ごとに立たせながら

【解釈】
1. ひとりの少年が犬と戯れている様を書いているのが、この連の第1行。A boyは、そのAから、既に恋人の少年を指している。だから、こうして解釈すると、これはWilhelm Sommerのことだとぼくは思う。A dogとは、これも犬のような人間としての男色者と、自分を卑下し、自虐的に犬に喩えたのだ。しかし、この犬は主人が必要で、いや犬と主人はいつも対の言葉であるから、ここでの主人は、隠れたる太陽、すなわち男色者ふたりに対する命令者なのだ。太陽系の運行の中心人物、支配者である。
2. Craneは、言葉遊びを、勿論よくして、a god、すなわち人間の、その少年にとっての神をひっくり返してa dogと呼んだのだとぼくは思う。同じ言葉遊びを、Craneはよくする。同じWhite Buildingsの中の、以前未完で翻訳をそのままにしているBlack Tambourineの中の第2連は、Aesopで始まる。これはイソップ物語のイソップ。しかし、この詩人の場合は、最初の文字が大文字のAであることに意味がある。これはLoftのA。AssのA、尻を持ち上げた、男女を問わぬ人間の姿である。これを別な言い換えで、tentedとその状態をいっている。すなわち、テントを張るということは、三角形の形に尻を突き出すことを意味するのだ。

このAesopは、dogと同様にひっくり返すと、Pose Aとなる。Aの姿態をとるという、その姿勢の意味である。そうぼくは解釈する。
3. Straddlingは、Webster Onlineによれば、またしてもstrideであるので、これはTo Brooklyn Bridgeにあったように、太陽の性的モーションを指している。それに合わせて、queingしているその他の惑星、celestial bodiesは、side stepを踏み、円を描いて、周行するのだ。
4. Perennialは、同じ辞書によれば、ラテン語のper annus, throughout yearという意味であるから、annusとあるように、これは尻毎にという意味を裏に隠している。そうして、表向きには、一年を通じてといっているのだ。Craneの詩は、表も裏も縁語だらけだ。この1年の四季は永遠に回帰する。
5. 上記2にあるような同じ言葉遊びを、詩人はここでもしている。というよりは、これは当時の、そうして多分今も英語圏の男色者達のjargon、隠語なのだとぼくは思う。それが、valleyである。Vはここでは小文字であるが、これは、同じ詩集の中のEmblems of Conductの第1連の第2行目のThe uneven valley gravesとあるvalley。それから、Passageという詩の第4連第3行目のVine-stanchioned valleysとあるvalleyと同様に、そうChaplinesqueを思い出してもらいたい、そこの第5連にあるlonely alleyのalleyを。V-alleyは、Aを転倒させ倒錯させたalley、すなわちvalley、更にすなわち男色者の尻の谷間という意味なのだ。だから、こうしてChaplinesqueからいっても、更に第3の意味は、男色者達の集う街、男色街という意味が、このvalleyなのだ。

辞書に戻ると、an elongate depression of the earthユs surface usually between ranges of hills or mountains, an area drained by a river and its tributariesとある。Earthユs surfaceが既に、地球の役割を担う、太陽に直かに接し、月を後ろに従えた男色者の役割、またはその役割を演ずる男色者の異名である。

6. Lightも日常では平凡な意味に堕しているが、詩人という存在の素晴らしさは、その言葉を源に遡って考え、またこの世に戻って来るということなのだ。同じ辞書によれば、lightとは、something that makes vision possible, the sensation aroused by stimulation of the visual receptors、さらに同義語でDAWNとあり、DAYLIGHTとある。光とは、薄暮であり、薄明であり、真昼の光でもあるのだ。そうしてまた、TRUTH。

【語釈】
1. straddle
2. spontaneity
2.1 spontaneous
3. orbit
4. perennial
5. light
6. valley
7. live
8 : to have a life rich in experience
9 : COHABIT

Sunday Morning Apples 4

さて、こんなことから今日は書きはじめようと思う。同じWHITE BUILDINGSの詩集の中からのRECITATIVE の一篇。第4連と第6連である。

第4連の最後の一行:

And gradually white buildings answer day.

そうして1連飛ばして、第6連:

The highest tower, --- let her ribs palisade
Wrenched gold of Nineveh; --- yet leave the tower,
The bridge swings over salvage, beyond wharves;
A wind abides the ensign of your will . . .

この詩のwhite buildingsと、towerに着目して欲しい。前者は、こうしてみるといつも複数形である。後者は、これはTHE BROKEN TOWERという詩もあるように、これはやはり、WHIE BUILDINGSそのものなのである。このRECITATIVEという詩を論じることは、また後日としたい。例によって、この題名は2重の意味があり、またその裏の意味、いや真の意味というべきか、それは、RECITATIVE形容詞という品詞であるということに大いに関係のある筈だ。この詮索は後日としよう。同じ品詞と意味の組み合わせを、ぼくたちは、GARDEN ABSTRACTという詩の題で論じることになる。すなわち、このGARDENが動詞か名詞かという問いに対して、それぞれの正解があるのだ。WHITE BUILDINGSの中のFOR THE MARRIAGE OF FAUSTUS AND HELENのIIの最後の連の最後の3語が、the gardened skiesなのである。GARDEN ABSTRACTに歌われた当の歌の中身が、そのままそうである、そのようにさせるGARDENという動詞の意味なのだと思う。それでは、gardenされた複数の空とは何か。すべてCraneの言葉は暗号のように見えるが、それはそうだろう、当時であればなほ、男色は禁色であったろうからである。Chaplinesqueに歌ったように、法律に従うのでもなく、金儲けなのでもない、すなわち嘘ではない行為、それがChaplinesque、つまり、Chaplineユs que、男色者の尻にペニスを入れての数珠連なりなのだ。そうして太陽のstrideに合わせてサイド・ステップを踏む。

何が言いたいか。TowerもBridgeも、男色者達の性の営為のformationだということが言いたいのだ。前者は垂直方向の、後者は水平方向の。後者の詩は、既に論じたように、The Bridgeの中のProemたるTo Brooklyn Bridgeに明らかである。それは、beadsであり、queであり、男色者達が数珠連なりになる、太陽の役割の男に支配される、苦しみと歓びの世界と再帰的・自己鏡像的な死刑執行の世界である。そのmotionを。さて、これに対し、前者は、Towerというのであるが、それは、一体男色者達がどのように塔を作るのか、塔と今僕は日本語でいうが、その日本語でいう概念が果たして、英語のtowerかというと、既にして明らかなように、それは、言語の本質からいって、実際にもそうではないのだ。詩人は、この同じ概念だと思われるものを、幾つもの詩の中で、altitudes、緯度と言い換えている。さて、そうであれば、それはどうであるのか。垂直方向の、この性の営為の理解と解釈には、ぼくはもう少し時間を必要とする。男色者達は別に騎馬戦をしたわけではないだろう。幾つかのキーワードを使ってGoogleで検索すれば、この間のbalooningやloftのように、男色者の写真が現れて、一目で直ぐにわかるのかも知れないが、それではぼくには少しも面白くはないのだ。でも、興味のある読者は検索してみるとよい。結果をお知らせ下さい。それから、そのときのキーワードも。如何か。


【原文】
Into a realm of swords, her purple shadow
Bursting on the winter of the world
From whiteness that cries defiance to the snow

【表の訳】
剣の王国へ、すなわち自然の紫色の影の中へと成長するのであり、
世界の冬の上でこそ時満ちて一挙に春になり芽吹くのである。雪の白色に挑戦し、これに戦って雄叫びを上げる、汚れなき無垢の白さから破裂して。

【裏の訳】
さあ、剣の王国、騎士達の国へと飛び込む、そのような挑戦があり、つまり、ペニスの男色者王国、満足の言葉を漏して絶頂に達するあの王国の中へ、高度の修辞に満ちた高貴な自然の紫色の影の世界、聖なるものを侮辱し、濫用する世界、ぼくたち男色者の避難所、影であるがゆえに、どうしても我が身と分ちがたい数珠つなぎの世界へと勇気を以て飛び込むのだ。そうして、男色者の世界の冬の季節、すなわち宇宙の星辰のシステムに則った運動によれば、夜が長く昼の短い、ペニスの萎えた季節の上へと直かに、満足の果てに射精をする。しかし、その季節の色は白なのだ。この色は、汚れのない純潔の白なのであり、冬の単なる雪の白い色に、そう、今この瞬間この時にだけ満足していればよいという、そのような見せ掛けのうつろい行く儚い白い世俗の一瞬の白色なのではなく、これに挑戦して戦いの叫びを上げる、そうしてそれが快楽の叫びである純潔純白の白、その抽象的な色の白さから、女性たる自然の紫色の雪上の影を高度な修辞と比喩の体系を、永遠の歓びの声を上げて、そうやって射精とともにペニスから吐き出すのさ。


【解釈】
1.a realmは、不定冠詞が付してあるので、これはAの意味から、既にTo Brooklyn Bridgeで説明したように、男色者の意味である。従い、これは男色者の王国という意味。
2.Swords。これも実は剣であって、もし裏の訳ならば、一目男根の形象なのであるが、最後の行のsnowと相俟って、僕には、更にもうひとつ奥の意味があるように思われる。実は、ここまで読むと、これは深読みのし過ぎであるのかと思うのであるが、それでもいってみずにはいられない。

Chaplinesqueの第3連にits puckered index toward usという文句あり、そこにindexという言葉がでてくるが、これは、多分この詩の解釈をする際にも論じたことだけれども、男色者達が、AはAppleのA、AはAssのA、AはAnusのAとか、またPはPenisのPといったように、indexを持っていて、それを性行為の指示や命令や連絡や、要するに本当に幸せな意思疎通、お互いに疑うことなく意志と意味の通じ合う歓びに身もこころも任せるときに発した隠語というべき符牒なのだと思う。

下にある語釈のSまたはsを見ても、性行為の姿のSなのか、何かいわば男者の辞書というものがあって、そう、男色者用語辞典があって、Sはアルファベットの19番目の文字だということに意味があるのかも知れない。今ここで何か思うことができるのは、その語釈の意味の中で、abbreviation for satisfactoryとあることだ。

つまり、swordsとは、the words that are satisfactoryであり、snowとは、NOW that is satisfactoryという意味である。だれにとってかというと、それは男色者達、すなわちthe worldに住むgay達にとってである。Chaplinesqueの第2連で同じ語を解釈したように、それは定冠詞のあることからも男色者の世界だということをぼくは言った。勿論表の意味は、世界である。

つまり、swordsとは、満足のゆく言葉、ああいいという満足の言葉、快楽の言葉という意味であり、snowとは、やはり満足のゆく瞬間、この今という時間、溜め息の漏れる、沈黙の今なのであるとぼくは思うのだ。

同じことは、C_33のCについても、実は、言えるのだと思う。このことは、更に後日論ず。

【語釈】
辞書はいつもながら、Webster Onlineです。ぼくが見つけた意味以外にもまだ隠れた意味がある筈。どうかご自分で言葉の聖杯探究をして下さい。

1.s
2.Realm
3. swords
4. purple
4.1 profanity
4.2 profane
5. shadow
6. burst
7. winter
8. world
9. whiteness
10. cry
11. defiance
11.1 defy
12. snow

Sunday Morning Apples 3

さて、今日は、昨日に引き続き、次のwhitel buildingのうち、第2連、たった2行の短い連、すなわち2階の春へと階層を降りて行くことにしよう。

(1、5):(秋、秋)
(2、4):(春、春)
(3、3):(冬、冬)

このwhite buildingをみて直ぐのぼくの疑問は、何故秋からすぐに春へと行くのか、何故冬を過ごしてから春にならないのかというものでした。Craneの詩の構造は、To Brooklyn Bridgeに典型的であるように、最下層の階層は、世間の性道徳から見れば男色者の地獄である。こうして性道徳などという言葉を書いてみると、この言葉も変な言葉である。性に道徳はないからであり、道徳が性から生まれるからである。

さて、この3階層の最下層、すなわち1階は、その男色者の死刑執行の儀式、まったく純粋の、何かの対価を受け取ることのない死の季節、罰せられる地獄の季節である。この詩では、それが冬なのだ。

しかし、まづ、詩人の導きの糸を手探りしながら、ぼくは、この迷路を進むことにしよう。

こうして、また新たな稿の筆を執り、この数日毎日机に向かい、こうして同じように文章を書いていると、これがぼくのとても大切な仕事なのだと、しみじみと思われる。

とは、いいながら、この詩を構成するこの少数の語彙をみて、語釈に引用したWebsterの説明をみて、ぼくは、その意味の多義的な幾つものcontextの存在に気付き、今また溜め息をついた。1行のto springのspringは、春へと、あるいは春においてという意味もあるが、これは名詞の場合の意味であり、to springを不定句ととれば、それは飛ぶということになり、この動詞のspringも、下の語釈をみれば、男色者の性行為もあれば(Chaplinesqueを思い出してほしい)、Craneの大好きな帆船の比喩もあれば、Springには、To Brooklyn Bridgeの最初に詠われたDAWNという意味もあるのだ。Dawnとは何か、to begin to blow。LegendというWhite Buildingsの中の詩の第4連第2行にthe smoking souvenirとあるが、この場合もそうであるように、ハバナあたりの土産の葉巻きを吸うように、男の性器を口にくわえてスパスパと、それがARISEして大きくなるように、to grow as a plantのように大きくなるように、そうしてその樹木が成長して、林檎の実がその頂きにたわわに成るように、つまりは実りの秋を迎えるようにと、そのようにするのが生命力溢れる春なのだ。そうしてその行為が春の行為、動詞としての活動なのだ。



【原文】
But now there are challenges to spring
In that ripe nude with head
reared

【表の訳】
しかし、今この秋にこそ、春への挑戦というものが色々と胎動しているのだ
この木の葉がすべて散り落ちて裸になり、そうして
その頂きが垂直に立っている その姿の中には

【裏の訳】
しかし、今は、さあ、攻撃と防御の競争をしようぜといって
正当な要求をお互いにぶつけ刺激をしながら、男性の生殖器が植物のように
大きく成長することが何度も幾つもあるのだが、それは
あの、十分に大きくなって成熟している裸のもの 立派に上を向いた
亀頭を備えた剥き出しの一物が、相手の言うことに逆らわずに無理強いに耐えてでもとる柔軟な姿勢をとりながら、最後に射精をするために、そうするのさ

【解釈】
1. 冒頭の文章が既に解釈になっている。
2. さて、何故rearedがこんな位置にあるかということであるが、これはこう
うことではないだろう。rearedの次の行は、このようなものである。


In that ripe nude with head
reared
Into a realm of swords, her purple shadow

このような配列の詩は、他にもあり、ここでの解釈が他でもそのまま応用ができるかどうかわからないが、ぼくはここではこのように考える。上の配列を見ると、次の意味の集合がある。

(head, reared, shadow)
(reared, purple)

つまり、前者のように斜めに集合をつくるか、それとも後者のように一番近い言葉同士のみに意味の関係の親近性を求めるかという、このふたつである。

これは、裏の意味としては、両方を合わせて考えるのがよいのではないだろうか。つまり、亀頭が屹立するほどに男根が立ち、その影は、冬の自然の常として、雪地の上には紫色の影を映じるのだ。そうしてまた、今日も移動書斎にてあちこちを散見しながら、裏の世界での、Craneの色彩の使い方をみてみると、次のようなことが解る。

(秋、gold,purple?)
(夏、?)
(春、green)
(冬、white)

ぼくがこれを見つけたのは、同じWhite Buildingsの中の詩、FOR THE MARRIAGE OF FAUSTUS AND HELENのIIの第2連に、White shadowとあったからである。

また、上の色彩の階層は、そのまま男色者の性行為の中の四季を詠っているので、たとえば、性器が小さい芽から大きな樹木に成長し、立派な亀頭の林檎の実がなるまでの季節のそれぞれに、それぞれに相応しい色彩を配している。紫、purpleがどれにあたるのか、今はぼくはわからない。それは、やはり高貴な色、最高位の色であるのだろう。

話が今日の題からいささかはづれるようであるけれども、性器が小さい芽から大きな樹木に成長するときの、そのような男色仲間をbud(芽)であるが故に、Buddhasと読んでいる。仏陀の最後の2文字は、言うまでもなく、尻の穴のことである。十字架のCROSSという詩のこの題名も、小文字で詩中に出て来る場合でも、Craneの背徳的、冒涜的に割り当てた意味は、それぞれ男色者の性交であったから、仏陀も同様の意味を以て使われている。天使、Angelもまた、そうではないかと思われる。

実は、語釈を読んでみると解るように、このたった3行を、裏の訳で訳すにせよ、多くの解釈を論じることになるのだが、これは先々の楽しみとして、またこの行に戻って来ることにしよう。上の訳は、平凡なものかも知れないが、まづは、今日はこれでよいとぼくは思う。

【語釈】
語釈はすべてWebster Onlineから。このweb上のdisctionaryを参照下さい。

1. challenge
2. spring
3. ripe
4. summer
5. autumn
6. fall
7. winter
8. nude
9. head
10. rear

Sunday Morning Apples 2

まづ昨日の推察を修正しよう。Appleが男色者の仲間を指すということは述べた。これを更に詩人は多義性を持たせて、the appleを何だといったか。昨日のぼくの推測では、睾丸としたのだが、これは間違いだと思う。そうではなくて、日本語でいう亀頭を林檎に見立てたのだ。その方がずっとよく詩を読むことができる。To Brooklyn Bridgeの第6連第2行のrip-tooth of the skyユs ascetyleneのrip、確かに林檎は歯を立てて齧るものだ。男色者が、アセチレンの地獄の炎で焼くような痛みを伴う愛撫をその亀頭にする、そのことを林檎に見立てて、いつもripと縁語にして、Craneは、いや英語圏の男色者達は、an apple, the apple, applesを愛でるのだ。

何故Craneは、詩集The Bridgeの第2部、II Powhatanユs Daughte中の題名の一つをVan Winkleとしたのだろうか。それは、Rip Van WinkleのRip、即ち亀頭たる林檎を隠していいたかったからだ。この詩の第4連がすべて斜字体で表記されていることは、意味のあることだ。RipとVan Winkleを敢えて二つに分けて、Craneは、それぞれを主語に立て、男色の無償の歓びを詠っている。

さて、また、この詩の題名、Sunday Morning Applesとは、更に考えてみると、Apples that are mourning Sundayという意味となり、これは、この詩を歌う人間が、太陽の役割を演じて日曜の朝になる、そのようなSun-nightが終わり、朝になってしまうことを嘆き哀しむ男色者達という意味になるのだ。

さて、この詩のwhite buildingの構造を考えることにしよう。これは、既にTo Brooklyn Bridgeにおいて、十分過ぎる位に考察したものであるが、今や、この経験と知識が、すべてのCraneの詩に活かされることをぼく達は知ることができる。

(1、5)
(2、4)
(3、3)

という3階層の構造物が、この詩の構造であった。さて、またそれぞれの季節はどうだろうかと考えてみる。Craneは、男色者達の性の営為に春夏秋冬を擬しているからだ。その連の言葉から季節を拾って見ると次のようになる。

(1、5):(秋、秋)
(2、4):(春、春)
(3、3):(冬、冬)

そうして、やはりTo Brooklyn Bridgeの場合と同じように、最初の3階層の秋から始まり、その下の階層の春へ、そうして1階の最初の冬へ、更に同じ層の二つ目の冬から二つ目の冬へ上がり、その冬から二つ目の春へ、その春からまた2つめの秋へと3階層に戻り、循環する、そのような季節が巡っているのだ。

おや、それでは、夏がないではないかと読者は思うだろう。しかし、朱夏は、既に題名の直ぐ下に、To William Sommerという名前としてあるのだ。Sommerとはドイツ語で夏、英語のsummer である。このように考えて来ると、Craneは、この恋人の名前にこそ最初に惚れたのではないかと思われるほどだ。何故なら、そこには、男色者達の性の営みの四季のひとつをcelestial bodyとして現出しているからだ。

To Brooklyn Bridgeがそうであったように、上の階層から下の階層へと詩人は落ちて来て、最下層の世界で、再び上昇の機縁を得、最下層から最上層へと生命力豊かに登って行くのだ。この詩も同様であると考える。

最初の3階層の秋、即ち第1連は、そうしてみると、やはり、落剥の秋、樹木の落ちる秋である。それに対して、冬を通り抜けてきた第5連の秋は、実りの秋となっている。御覧あれ。勿論訳には、表の訳と裏の訳があることは、言うまでもない。

【原文】
The leaves will fall again sometime and fill
The fleece of nature with those purposes
That are our rich and faithful strength of line.

【表の訳】
樹木の葉は、いづれはまた落ちることになり、そうして
自然の、やわらかい毛で織られた 落ち葉の織物を満たすのは
その織物の 生命力に溢れた糸の持つ、わたしたちの豊かで実り多き 自然の規則に忠実にその義務を果たすことのできる強靭さを以てなのだ

【裏の訳】
男の精液がいつかは男色の時間に耽っていると、再び落ちて、
自然の毛で織られた織物を一杯に満たすのだ。それは
自然の運行に従って、太陽と地球と月の天球の関係を一線に配置して
それゆえにぼくたちは実り豊かになり、互いに忠実で、互いに満足のゆくようなこと、それが目的であり、同時に様々な姿態をよろこんで相手のためにとり、攻撃と防御の役割を演じて 一体いつまでホストの攻撃に射精せずに我慢できるかと 快楽をできるだけ先延ばしにして そのゲームを堪能することによってなのだ。


【解釈】
1. 落ち葉が落ちる。木の葉はいつかは地面に落ちる。落ちて、また豊かに、季節を迎えて、成熟し、果実を身につけるためなのだ。Lineという語の意味を語釈でみるとそういう意味になる。更に、lineにはropeという意味もあるから、The Broken Towerという詩の第1連第1行の The bell-rope that gathers God at dawnのropeも同じ意味であると考えられる。この詩については、また別に稿を改める。

2. richについては、Craneの処女作、C 33の第2連に、to enrich thy gold headとあり、この場合のthy gold headは、ここでいうapple、ペニスの亀頭であると読むことができる。つまりなにをいいたいかというと、enrichとは亀頭たる林檎を実り豊かに大きくするという意味だということ、これが裏の意味だということがいいたいのだ。

3. sometimeとは、やはりsomeということから、これは男色の時間という意味であることは、既にTo Brooklyn Bridgeで述べた通り。

4. Purposesは、pur poses、すなわちpro-posesであるとぼくは思う。つまり、様々な姿勢を専らによろこんでするという意味。

5. このようになってくると、fleeceとは、男色者が使用するblack tambourineやChaplinesqueの山高帽がそうであるように、これは性具である。柔らかなbalooningのための、男性器を決して傷つけない、女性のpackageのように開かれないで、parcelのように男性のペニスを柔らかく包んでくれる織物のことである。

6. leafが男色者の隠語の世界で何を意味するかは、今は解らない。もう少し様子をみることにする。まづ、leafの形をしたものがあるのだろう。あるいは、秋になるとハラハラと樹木、たとえばthorny treeから落ちるもの。と考えてくると、これは精液のことではないかと連想される。その色は白だ。そうして、冬がやってくる。

【語釈】

1. fleece
2. rich
3. faithful
4. strength
6. line
7.leaf

Sunday Morning Apples

White Buildingから、この詩を読んでみよう。読んでみようとは、解釈してみようということだ。しかし、他方ぼくはHart Craneの詩の秘密に触れているので、あちこちの詩に言及しならが、この詩を読むことにしよう。

いつものように題名から。Sunday Morning Appleとは何か。Craneの題名は、いつも表と裏とふたつの意味が掛けてあるのでした。もしこれだけで解らない方は、以前のぼくのTo Brooklyn BridgeやChaplinesqueについての論を読んで下さい。

表の訳は、日曜日の朝の林檎という題名.裏の訳は、男色に耽って日曜の朝を迎えた男色者達という意味だ。もっと正確に言葉を費やすと、Sundayとは、宇宙の運行でひとつのlineを成す、sun, earth, moonのうちのsun太陽のことをいう。これがhost役、男色の営為の中心であり、その太陽の周りを地球と月が廻る。地球はside stepを踏むのだ。太陽は命令者である。さて、そのような役廻りを演じたのはHart Craneだろうか、それともこの題名の下に斜字体で書かれているWilliam Sommerという恋人だろうか。Toとあるので、これは男色者を指す。それもCraneにとって価値ある、飛び切りの仲間のことだ。To Brooklyn BridgeのToがそうであったように、この男の恋人の前置詞も、いやその名前丸ごとが斜字体である。相当な、Crane流の言い方を真似すると完璧な恋人、perfectな仲間なのだろうと思う。つまり、絶頂に達して声なく、沈黙の世界を醸成することのできる親密な数少ない本当の仲間のひとり。同じ詩集にあるLegendの第4連第1行にあるモa perfect cryモと叫ばしめる恋人なのだろう。

Sun-eartch-moonというとなんということもないが、しかし、これは英語で言い換えるとcelestial bodiesだというと、神聖で、またbodyということからも実に具体的に臨場感を以て、男色者達の言はむとすることが感じられるのではないだろうか。実は、Chaplinesqueをあらためて読み、また他の幾つかの詩から、男色者達は、男色の営為の中に、このような天球の配置を考えるとともに、西洋の騎士の叙勲の儀式を真似て性行為として執り行っているのだということを僕は知ることができた。だから、Chaplinesqueの第5連、最後の連にある、a grailも、gaietyもquestも、宮廷で旅の途上の騎士、聖杯を求め、女性を崇拝してそのために死ぬことも厭わぬ、純潔の男達として、その比喩をふんだんに使って、女を排除した男だけの世界を創造しているのだ。それは、このように、またこの文章のあちこちに見られるように、言葉と概念と比喩の体系を実際に自分の肉体で実感しながらの、それはgayなのであり、through all sound of gaiety and questのgaietyなのである。Gayとはそのような知的な歓びの世界なのだ。Joyなのではない。

さて、さらに、この場合、そのようなSundayを、いやそのようなSun-nightを演出したホストはいづれかであろうか。詩の中に入っていくと、これはBillがsunなのだろうと思われる。そうして、Chaplinesqueの第4連第3行にある通りに、太陽は、obsequiesを執行したのであろう。Crane詩を読むと、hostとguestは役割が交代できるので、互いに自分の似姿を見ることになるのだろう。そのような自在の境地をCraneはこの恋人とともに分ちあった筈である。

Appleとは何か。PPLEは、peopleの略号表記である。従い、Appleとは男色者仲間、男色者達という意味である。Aは既に男色者を意味すること、それは何故かは、To Brooklyn Bridgeで論じたので、ここでは触れない。

つまり、Sunday Morning Appleとは、自分が太陽の役割を演じて男色行為に耽ることのできて迎えた朝、その朝の男色者達という意味である。

上に言及したGarden Abstractの第1連の出だし、

The apple on its bough is her desire, ----

このappleも同じである。しかし、Craneは一筋縄では行かない。これ定冠詞を付けて、やはり語義に戻り、林檎に似た男の体の一部を指しているようである。わたしは睾丸であると思っているが、それも詩を読み込むに従い、解ることだろう。詩の中に、よくappleをtossするという言い廻しが出て来るが、これも男色者達の隠語なのだと思う。例えば、Legendeという、White Buildingのlegend(こちらは末尾のeがない)という詩と別の詩の第1行は、

The tossing loneliness of many nightsと始まる。

Tossingするその目的語はballであると思われる。男の自慰行為をこのように表現しているのだ。それは、その次に続く第2行が、

Rounds off my memory of her

と続くので間違いがないと思う。

また、しかし、このherも曲者で、上に引用した

The apple on its bough is her desire, ----

このherと同様に、場合によっては、これが男性であることがあるのです。このGarden AbstractではCrane自身のことを指していると読めるが、その詩の中では、男たるものが樹木の女に変身をする。その場所がGarden Abstractである。この庭、gardenというモチーフは頻出する。家ではなく、庭に生きる空間があるのだ。

そうして、この場合、boughとはbowであるから、男色者が性行為をするとき屈曲した姿勢、Chaplinesqueで第4連2行にany pliant caneと書いた姿勢である。そうして、さて、The apple on its bough is her desireとは、そのthe apple on its boughのitsがappleを指すことからいっても、the apple on its boughとは、tautologyの関係となる。この自己鏡像的な姿が陶酔の源なのだとぼくは思う。The apple on its bough is her desire、この一行を味わって貰いたい。

さて、そうして何故庭なのだろうか。そこに樹木があるから。Craneが世にでることになった最初の詩、その題は、C 33という。この詩の題名の解釈もまた以前の文章の中で解釈したところであるが、更にもうひとつを付け加えれば、この詩の中、第1連にあるthorny treeとは、勿論この詩の中でCraneが17歳で男色を教えた相手の少年に与える苦痛がthornyなのであり、そのthorny treeの持ち主がCrane自身なのだ。もちろんこの樹木は、ここでは薔薇の木であるが(何故男色者が薔薇に連想されるかは後日論じよう)、こうして読んで来るとお判りのように、C 33の33の裏の意味は、thirty threeという発音であり、それはそのままthorny treeという意味なのである。実際に発音されるがよい。CはCraneのC。しかし、多義的にこの17歳の若者はその天才を発揮する。See a space 33!このA space、すなわち男色する場所にあるthorny three、僕の汚れなき純潔のペニスを見よ!と。A spaceとは、その定冠詞からいって、男色の場所という意味である。C33ではなく、C_33とした所以である。

ぼくは、今日も移動書斎にてCraneの詩のあちこちを往来して、確かにThe Broken TowerでCraneがthe matrix of the heartと詠んだ心臓のマトリクスを更に発見した。その中に色彩のマトリクスがあった。ぼくに既知のこととしては、方位、宇宙の星々のシステム。そうして、これらの組み合わせのマトリクスも。

The matrix of the heartとは、the matrix of the Hart、すなわちこのHart、俺様の、何を差し置いてもこの僕自身のマトリクスといっているのだ。それが心臓のマトリクス、生命の、生きていることのマトリクス、すなわちHart Craneの宇宙である。

White Buildingがどのような構造を備えているかは既にTo Brooklyn Bridgeのところで述べた。この詩もWhite Building中の詩なので、そうなっている筈。そう読むのが正しいだろう。そうすると、この詩のmatrix、white buildingは次のようになる。計5連からなっているので、

(1、5)
(2、4)
(3、3)

3階層のwhite buildingである。この3階建ての建築物をみて行くことにしよう。しかし、既に僕達は、To Brooklyn Bridgeを読みこなし、日本語の世界に嚥下咀嚼した。その財産を活用することにしよう。

そうして、庭にある薔薇の木ノ.いやいや、これらは順に論じよう。今日ここでこの稿で書くべきことは、Craneは、男色者の性の営為を春夏秋冬に擬したことである。しかし、これも男色者の相当な知性の賜物なのだとぼくは思う。この季節の交代をseasonといい、また形容してseasonableとe詩人はいっているのだ。The Matrix of the Hart! この四季と天球達の組み合わせ、それに色彩のマトリクスを掛け、男と女の変身を現出させ(To Brooklyn Bridgeで最初の女神が男になり、男の神が女神に永遠の大循環をしていることを思い出してほしい)、この濃密な文体を創造するのだ。

Chaplinesque再び(第3連)

第3連を読む。今日は1万文字を1693文字超えたので、語釈は相当削りました。ウエブスターをご覧下さい。

〔第3連〕
We will sidestep, and to the final smirk
Dally the doom of that inevitable thumb
That slowly chafes its puckered index toward us,
Facing the dull squint with what innocence
And what surprise!

〔表の訳〕
僕達は、正面から当たらずに、身をかわそうとし(あるいは、身をかわして、サイドステップを踏み)、いよいよとなったら作り笑いの最後の奥の手は、僕達がどうしても逃げようのない、あの権力者、そいつが古臭て黴のはえたような(愛情も無くなってしまったように)カサカサに乾いて皺のよった(法律書の)見出し、社会の絶対分類指標(”お前達が幾らどうなっても、こいつは変わらないのさ”といわんばかりに)、その皺を何度も何度も、僕達に向けて、ゆっくりと(嫌みたっぷりに)、これ見よがしに延ばして見せるあの権力者の制定した法令という奴(”ほら、ここには、そう書いてあるだろう!”)、こいつを、性的な比喩も交えて言葉遊びで洒落のめし、解釈に時間を掛けさせて、軽くいなして取り引きすることだが、しかし、鈍感で、反応も遅くて、精神的な斜視に、今度は直面するのは、僕らの方だ。それも何という無知蒙昧、何ってこった、ここまで酷いのか(僕らの冗談が通じないのだ)。

〔裏の訳〕
僕達、地球と月の役割を演じる男色者は、色を金に換えて、太陽たるホストの腰の動きに合わせてサイド・ステップを踏みたいと思うが、いやそうして、しかし、僕達太陽の支配下にある若い男色者たちに、その権力者の皺のよってよれよれのペニス、最初の宇宙の名前、アルファベットの秩序に従い最初のA、次がB、そうしてCという順序で書いてあるその権力者の最初のアルファベットの文字、尻の穴のAをその親指でしごかれること、これは避けられないことさ、さてこいつは、そうしておいて今までの男色人生で使い古した自分のP、ペニスを両手で摩擦して暖かくしてゆっくりと大きくしながら僕達の尻に押し付けてくる、この避けがたい親指、僕達の尻の穴に挿入する親指の、好きでする相手ではない金のためなのだから、死刑執行のその判決文と性的な遊戯であしらいながら、しかし、ついには合わせてへつらいながらいってしまうのだ、その間抜けなしかし快楽の阿呆面をして。しかも、奴のその、このような行為を罪とも思わぬような無知蒙昧、それから何たる腰の遅い、合わせるのも下手糞な、目も悪くてずれてばかりいて男の性交も満足にできぬ、そうして何の予告もしないで突然と突いてくるような拙劣で何と下手糞な野郎だ、こいつは!


〔解釈〕
(1)Weとは、earth and moonであるわたしたち。Inevitable thumbは、権力者たるsunのホストの親指という文字通りの男色行為に必要な指の名前。
(2) doom。死刑の判決を下すのは、太陽。
(3)後は、今日はほとんどみな訳の中に解釈を入れました。Indexもこのような意味です。
(4)Facing the dull squintとは、文字通りに、男色者の顔にペニスをあてがい口に入れさせようとしても、それすらできぬほどに、何と言うこの男色も知らぬ無知なる男よという意味も掛けてある。
(5)また、what surpriseは、こうして下手糞な相手と金を色に換えて男色をしていて、sur-、すなわちtoo ample pocketsの金を貰ってはいるのだが、こんなひどい性交なのでは、素晴らしいといって驚くどころの話ではない、やはり僕の欲しいのは男色仲間からのpraise、賞賛なのだ、お金儲け、お金目当ての行為ではないのだという意味を掛けている。

〔語釈〕
(1) doom
Function: noun
Etymology: Middle English, from Old English dOm; akin to Old High German tuom condition, state, Old English dOn to do
1 : a law or ordinance especially in Anglo-Saxon England
2 a : JUDGMENT, DECISION; especially : a judicial condemnation or sentence b (1) : JUDGMENT 3a (2) : JUDGMENT DAY 1
3 a : DESTINY; especially : unhappy destiny b : DEATH, RUIN
synonym see FATE

(2) smirk
Function: intransitive verb
Etymology: Middle English, from Old English smearcian to smile; akin to Old English smerian to laugh
: to smile in an affected or smug manner : SIMPER
- smirk noun

(2.1) simper
(2.2) smug
(2.3) coy
(3) dally
Pronunciation: 'da-lE
Function: intransitive verb
Etymology: Middle English dalyen, from Anglo-French dalier
1 a : to act playfully; especially : to play amorously b : to deal lightly : TOY (accused him of dallying with a serious problem)
2 a : to waste time b : LINGER, DAWDLE
synonym see TRIFLE, DELAY

(3.1) amorously

(4) thumb
Main Entry: 1thumb
Function: noun
Etymology: Middle English thoume, thoumbe, from Old English thuma; akin to Old High German thumo thumb, Latin tumEre to swell
1 : the short thick digit of the human hand that is analogous in position to the big toe and differs from the other fingers in having only two phalanges, allowing greater freedom of movement, and being opposable to each of them; also : a corresponding digit in lower animals
2 : the part of a glove or mitten that covers the thumb
3 : a convex molding : OVOLO
- all thumbs : extremely awkward or clumsy
- under one's thumb or under the thumb : under control : in a state of subservience (her father did not have her that much under his thumb -- Hamilton Basso)

(5) inevitable
Function: adjective
Etymology: Middle English, from Latin inevitabilis, from in- + evitabilis evitable
: incapable of being avoided or evaded

(6) chafe
Main Entry: 1chafe
Function: verb
Etymology: Middle English chaufen to warm, from Middle French chaufer, from (assumed) Vulgar Latin calfare, alteration of Latin calefacere, from calEre to be warm + facere to make -- more at LEE, DO
transitive senses
1 : IRRITATE, VEX
2 : to warm by rubbing especially with the hands
3 a : to rub so as to wear away : ABRADE (the boat chafed its sides against the dock) b : to make sore by or as if by rubbing
intransitive senses
1 : to feel irritation or discontent : FRET (chafes at his restrictive desk job)
2 : to rub and thereby cause wear or irritation
(6.1) sore
Main Entry: 1sore
Pronunciation: 'sOr, 'sor
Function: adjective
Etymology: Middle English sor, from Old English sAr; akin to Old High German sEr sore and probably to Old Irish saeth distress
1 a : causing pain or distress b : painfully sensitive : TENDER (sore muscles) c : hurt or inflamed so as to be or seem painful (sore runny eyes) (a dog limping on a sore leg)
2 : attended by difficulties, hardship, or exertion

(7) pucker
Function: verb
Etymology: probably irregular from 1poke
intransitive senses : to become wrinkled or constricted
transitive senses : to contract into folds or wrinkles

(8) index
Pronunciation: 'in-"deks
Function: noun
Etymology: Latin indic-, index, from indicare to indicate
1 a : a device (as the pointer on a scale or the gnomon of a sundial) that serves to indicate a value or quantity b : something (as a physical feature or a mode of expression) that leads one to a particular fact or conclusion : INDICATION
2 : a list (as of bibliographical information or citations to a body of literature) arranged usually in alphabetical order of some specified datum (as author, subject, or keyword): as a : a list of items (as topics or names) treated in a printed work that gives for each item the page number where it may be found b : THUMB INDEX c : a bibliographical analysis of groups of publications that is usually published periodically
3 : a list of restricted or prohibited material; specifically capitalized : a list of books the reading of which is prohibited or restricted for Roman Catholics by the church authorities
4 plural usually indices : a number or symbol or expression (as an exponent) associated with another to indicate a mathematical operation to be performed or to indicate use or position in an arrangement
5 : a character (fist) used to direct attention to a note or paragraph -- called also fist
6 a : a number (as a ratio) derived from a series of observations and used as an indicator or measure; specifically : INDEX NUMBER b : the ratio of one dimension of a thing (as an anatomical structure) to another dimension

(9) dull
Main Entry: 1dull
Function: adjective
Etymology: Middle English dul; akin to Old English dol foolish, Old Irish dall blind
1 : mentally slow : STUPID
2 a : slow in perception or sensibility : INSENSIBLE b : lacking zest or vivacity : LISTLESS
3 : slow in action : SLUGGISH
4 a : lacking in force, intensity, or sharpness b : not resonant or ringing (a dull booming sound)
5 : lacking sharpness of edge or point
6 : lacking brilliance or luster
7 of a color : low in saturation and low in lightness
8 : CLOUDY
9 : TEDIOUS, UNINTERESTING
synonyms DULL, BLUNT, OBTUSE mean not sharp, keen, or acute. DULL suggests a lack or loss of keenness, zest, or pungency (a dull pain) (a dull mind). BLUNT suggests an inherent lack of sharpness or quickness of feeling or perception (a person of blunt sensibility). OBTUSE implies such bluntness as makes one insensitive in perception or imagination (too obtuse to take the hint). synonym see in addition STUPID

(10) squint
Main Entry: 1squint
Pronunciation: 'skwint
Function: adjective
Etymology: Middle English asquint
1 of an eye : looking or tending to look obliquely or askance (as with envy or disdain)
2 of the eyes : not having the visual axes parallel : CROSSED

(10.1) oblique
(11) innocence
Function: noun
1 a : freedom from guilt or sin through being unacquainted with evil : BLAMELESSNESS b : CHASTITY c : freedom from legal guilt of a particular crime or offense d (1) : freedom from guile or cunning : SIMPLICITY (2) : lack of worldly experience or sophistication e : lack of knowledge : IGNORANCE (written in entire innocence of the Italian language -- E. R. Bentley)
2 : one that is innocent
3 : BLUET

(12) surprise
Function: noun
Etymology: Middle English, from Middle French, from feminine of surpris, past participle of surprendre to take over, surprise, from sur- + prendre to take -- more at PRIZE
1 a : an attack made without warning b : a taking unawares
2 : something that surprises
3 : the state of being surprised : ASTONISHMENT

Chaplinesque再び(5)【第4連】

Chaplinesqueの第2階層(2,4)のうちの後者、すなわち第4連の詩を今日は読む。
いうまでもなく、同じ階層の連同士は呼応し合っている。これは、ほかの詩の場合もすべて、white buildingしている限り、Hart Craneの詩はそうなっていることは言うまでももはやない。

C 33というCraneの処女詩を今日も電車の中で読んでいて幾つもの意味を知った。謎を解く喜び。この題はCraneらしく幾つものことを掛け合わせた題であるのだが、後僕の未知の領域は、33をラテン語で言った場合にanus(尻の穴)という文字配列が並ぶことがあるかどうかという領域である。時間との関係ではあるのだが、純粋に数詞としては、どのようになるものか。誰か知っている人がいたら教えて欲しい。

さて、しかし、仕事とは単調なものだ。今日の日課に励むことにしよう。珍奇なるものは一瞬人の目を驚かせるが、その発見をもし僕が本当に大切にし、Craneの言葉を大切にしようと思ったのであれば、やはり胸底ならぬきょう底に秘めて熟成させることになるから。こういうときには、神をも複数形にして、詩の神と呼びたくなる。そうして沈黙したくなる。

〔第4連〕
And yet these fine collapses are not lies
More than the pirouettes of any pliant cane;
Our obsequies are, in a way, no enterprise.
We can evade you, and all else but the heart:
What blame to us if the heart live on.

〔表の訳〕
前回の訳をそのまま転用する。

しかし、こういった、強権的にやられての、繊細な意気消沈、意志阻喪、これらは、どれひとつとっても、決して嘘ではない(”ここには嘘がない。”)。それは、どんなに幾ら曲げられても折れることない、(あのパスカルのいった)蘆、その蘆(すなわち、人間)が、バレーのピルエットをやって、一本脚でクルクル独楽のように激しく素早く回転するその踊りの(訓練されて獲得する表現)様式以上のものだ。
僕らの刑死、その死刑の儀式は、ある意味では、事業ではない。
(法令書には、そうしろと書いてあるのだからな。しかし、だからこそ、また、それにもかかわらず、別の意味では、僕らが死刑になり、法律に則った儀式に従うというのは、これは、立派な一個の社会的な事業なのさ。)
僕達は、戦略的に、お前達を正面から攻めること、正面衝突を避けて、サイドステップを踏むことができるし、それは、その他にも何だって、やろうとおもえば、そうやって身をかわすことができる、しかし、心臓だけは別だ(”それは、お前達にもできないことなのだ。ここが、僕達とお前達の共通の場所だ”)。つまり、心臓が脈拍を打っているのに、だれが、こうすることが悪いといって、僕達を責める奴がいるか、いるわけがない。お前達にできるか?できるわけがない。

〔裏の訳〕
さて、しかし、このような最高の堕落、極限まで肉体を訓練して成し遂げられる夜の無意識の中でのこの男色者であることの崩壊と分解は、嘘ではないが、しかし安息でもないのだ。だから、これらの男色者が快楽を得るためにとる様々な姿勢は、バレーの踊り子という女性がその身体を鍛えて一本の葦が独楽のように一本脚で回転して見せる以上の難しいものなのだ。
ぼくたちの死刑執行は、男色者の方法で、このように行われ、それは、だから、バレーのような観衆の面前での興行などではなく、従って金儲けのビジネスでもないのだ。興行ならば拍手喝采で prizeももらえようが、僕達男色者は男色者仲間ではpraiseを貰うことが名誉なのさ。何故ならば、このような男色行為そのものが、社会の掟に違反した者達としての僕達の死刑執行なのだから。
だから、自分たちの掟を持っているのだから、僕達男色者は、そうしようと思えば、おまえ達昼間の人間達に我が身を翻して身を避けて、生きることができる自由を手にしているのだし、そのほかのことでも皆そうすることができるのだが、しかし心臓、この生きているということそのものの象徴である心臓だけは別だ。この事実から身をかわすことは、男色者もできないのだ。しかし、だからといって、この男色者の心臓が脈々と生きているのであれば、だれがそうだからといって僕達男色者とその社会を非難することができようか、できるわけが無い。

〔解釈〕
(1) a wayは、不定冠詞がついているので男色者の方法、流儀という意味。
(2) lieには、二つの矛盾した意味、第1連のcovertと嘘の意味が掛け合わされている。これはCraneらしい言葉遊び。そうして論理展開としてもCrane好みなのは、not liesとしていることで、言いたいことは、真実なのだという意味である。しかし、Truthとはいわないのだし、むしろ言ってはいけないのだ。ふたつの両極端のもののそれぞれのいづれかを否定するが、しかし、否定されたその極端が、反対側の他端であるかというと論理的にはそうはならないという不分明を詩人は愛しているのだ。その典型的な詩のひとつがWhat Nots?という題名の即興のような詩であるが、勿論これ以外にもこの詩あの詩のあちこちにこの論理展開が、段落、文、語に亘る階層のそれぞれに仕掛けてある。
(3)この論理の上に、uncoiled shellといったような形容詞が成立している。原初的な、原初に戻る、戻らせる力を有する形容詞。そうして、冠詞と名詞と形容詞の組み合わせ、僕が前回To Brooklyn Bridgeを訳し論じたときに「揺れる形容詞」と名付けた形容詞の配置もここにある。The dessert whiteといったように(C 33)。
(4)昼間の社会での褒賞はprise or prizeであるが、そうしてこれはこれで身を粉にして働いて得るものであるが、他方夜の男色者の社会での褒賞は、男色行為の最中に得られるpraise、自分がstarsの一つとして舞台に立って演じた役割の見事さに賞賛の嵐の来るpraiseなのさ。
(5)the heartは、定冠詞がついていて、先日解釈を伝えたthe worldとともに、男色者の心臓を言っている。同性愛者も異性愛者も共に共有し定冠詞をつけて、従って社会的な心臓。
(6)この連の最後の一行にあるto usのusは勿論男色仲間の僕達であり、前置詞のtoは男色仲間の社会を示すときにCraneがいつも使用する前置詞である。これは場所を表す。To Brooklyn Brideといったように。このToは斜字体になっていることを思い出して欲しい。その他にも、The Complete Poems of Hart Craneをぱらぱらと捲(めく)って見ると、To Emily Dickinson, To Shakespeare, To Earth, To Liberty, To the Empress Josephine’s Statue, To Buddha, To Conquer Varietyと題してある詩は皆この男色者の仲間の社会を意味している。堅牢な前置詞、zu。詩の中でのzuも同様である。Shakespeareについてはこのブログのどこかで述べたことだが、槍を振れ振れというのであるから、これも男根を動かす男の比喩である。前回Chaplinesqueを論じ、訳したときに、何故ここにzuが必要なのか、何故What blame us….ではいけないのかと僕が問うたことに対するこれが今回の答えである。千石先生は、CraneはMelvilleの直径の子孫だとおっしゃたけれども、Melvilleを歌った詩の題は、At Melville's Tombであるので、Zu Melville's Tombとはなっていない。これはまた別の評価がこのMelvilleに対しては、Craneは持っていることを示している。MelvilleはCraneとは別の宇宙の住人である。

〔語釈〕
(1) fine
(1.1 ) noun
Function: noun
Etymology: Middle English, from Old French fin, from Latin finis boundary, end
1 obsolete : END, CONCLUSION
2 : a compromise of a fictitious suit used as a form of conveyance of lands
3 a : a sum imposed as punishment for an offense b : a forfeiture or penalty paid to an injured party in a civil action
- in fine : in short
(1.2) adj
Etymology: Middle English fin, from Old French, from Latin finis, noun, end, limit
1 a : free from impurity b of a metal : having a stated proportion of pure metal in the composition expressed in parts per thousand (a gold coin .9166 fine)
2 a (1) : very thin in gauge or texture (fine thread) (2) : not coarse (fine sand) (3) : very small (fine print) (4) : KEEN (a knife with a fine edge) (5) : very precise or accurate (a fine adjustment) (trying to be too fine with his pitches) b : physically trained or hardened close to the limit of efficiency -- used of an athlete or animal
3 : delicate, subtle, or sensitive in quality, perception, or discrimination (a fine distinction)
4 : superior in kind, quality, or appearance : EXCELLENT (a fine job) (a fine day) (fine wines)
5 a : ORNATE 1 (fine writing) b : marked by or affecting elegance or refinement (fine manners)
6 a : very well (feel fine) b : ALL RIGHT (that's fine with me)
7 -- used as an intensive (the leader, in a fine frenzy, beheaded one of his wives -- Brian Crozier)
(3) collapse
Function: verb
Etymology: Latin collapsus, past participle of collabi, from com- + labi to fall, slide -- more at SLEEP
intransitive senses
1 : to fall or shrink together abruptly and completely : fall into a jumbled or flattened mass through the force of external pressure (a blood vessel that collapsed)
2 : to break down completely : DISINTEGRATE (his case had collapsed in a mass of legal wreckage -- Erle Stanley Gardner)
3 : to cave or fall in or give way
4 : to suddenly lose force, significance, effectiveness, or worth
5 : to break down in vital energy, stamina, or self-control through exhaustion or disease; especially : to fall helpless or unconscious
6 : to fold down into a more compact shape (a chair that collapses)
transitive senses : to cause to collapse
(4) lie
(4.1)noun
1 chiefly British : LAY 6
2 : the position or situation in which something lies (a golf ball in a difficult lie)
3 : the haunt of an animal (as a fish) : COVERT
4 British : an act or instance of lying or resting
(4.2)noun
Etymology: Middle English lige, lie, from Old English lyge; akin to Old High German lugI, Old English lEogan to lie
1 a : an assertion of something known or believed by the speaker to be untrue with intent to deceive b : an untrue or inaccurate statement that may or may not be believed true by the speaker
2 : something that misleads or deceives
3 : a charge of lying

(5) enterprise
Main Entry: ;prise
Function: noun
Etymology: Middle English, from Middle French, from Old French entreprendre to undertake, from entre- inter- + prendre to take -- more at PRIZE
1 : a project or undertaking that is especially difficult, complicated, or risky
2 : readiness to engage in daring action : INITIATIVE
3 a : a unit of economic organization or activity; especially : a business organization b : a systematic purposeful activity (agriculture is the main economic enterprise among these people)

(6) evade
Function: verb
Inflected Form(s):
Etymology: Middle French & Latin; Middle French evader, from Latin evadere, from e- + vadere to go, walk -- more at WADE
intransitive senses
1 : to slip away
2 : to take refuge in evasion
transitive senses
1 : to elude by dexterity or stratagem
2 a : to avoid facing up to (evaded the real issues) b : to avoid the performance of : DODGE, CIRCUMVENT; especially : to fail to pay (taxes) c : to avoid answering directly : turn aside
3 : to be elusive to : BAFFLE (the simple, personal meaning evaded them -- C. D. Lewis)
synonym see ESCAPE

Chaplinesque再び(4) 【第2連】

今日はWhite Buildingの第2階の(2,4)のうちの前者、すなわち第2連を読みましょう。

〔第2連〕

For we can still love the world, who find
A famished kitten on the step, and know
Recesses for it from the fury of the street,
Or warm torn elbow coverts.

〔表の訳〕
前回の訳をそのまま引用します。

僕らは、世界をまだ愛することができるのだから、階段の途中に、
昇ろうとしたのか降りようとしたのか解らないが、しかし、その途中でもう腹を空かして飢え死に寸前になって動かない子猫を、誰か見つけてくれないか、見つけないことはないだろう、そして、こいつのために、お金儲けの事業で喧(やかま)しい表通りのビジネス街の怒りから、幾らでも避難場所のあることを、誰か知っているだろう、その筈だ。そうでなければ、暖かな、ボロボロの服を身にまとい、それでもいいから(”襤褸(ぼろ)は着ててもこころは錦”)、その肘と肘を組んで(弱いものを護るための)環をつくる密やかな同盟のあることを、誰か知っているだろう。知らないわけがない。

〔裏の訳〕
僕達は静かに動かぬときも、動きながらしているときも、そう、こうして男色者の性交をして段々といい気持ちになり、お互いを理解しあい、こうして男色者仲間を愛することができるのだから、一匹の男色者の、この若い男が、まさしくその男色者のステップ、性器を抽送したりされたりするそのステップのリズムに触れて、硬く直立したシャフトを受け容れる帆船となり、初心(うぶ)でまだ子猫のような可愛らしい快楽の声をあげるのをみてくれよ、そうしてまた、売春や貧困や廃物や犯罪で一杯のこの裏通りの怒りから、人間ではないこの一匹の動物、子猫が我が身を護るための、この傾斜のついたいい尻の中へと、つまりこの暖かいだれもが退避できるこの秘密の尻という隠れ家の仲間達、手を突き、肘を屈し、頭を下げて腰をひん曲げて、無理やり抉(こ)じ開けられて分けられてペニスを入れられるこの尻の姿勢の休憩所があることを知ってくれよ。

〔解釈〕
(1) 不定冠詞は男色者の印。A famished kitten。
(2 ) the worldは、男色者仲間のことです。他の詩でも、the worldといえば、男色者の世界であり、男色者の宇宙です。この宇宙には、太陽、地球、そして月と呼ばれる男色者の性戯の役割分担があり、これらの総称をstars、星、星々とCraneは呼んでいます。

To Brooklyn Bridgeの第9連の第2行、immaculate sigh of starsとは、sun, earth and moonの穢れの無い、無垢の、純粋の快楽の溜息であったことを思い出すことにしましょう。

また、この第9連に対応する同じ階層、フロアーにある第3連で、何故一人称は映画を観に行くのかというと、その銀幕には映画スターと呼ばれるstars、星々が映写されるからであり、ここにまさしく書いてある通りに、some flashing sceneがthe same screenに映写されるからです。そうして男色者たちの世界、the worldの常で、男色行為に耽っているスター達の周囲に観客がいて、囃したり、冷やかしたり、励ましたり、嘲ったりしているのです。a grail of laughterやall sound of gaiety and questがそこにはある、そのような世界。

Someやsameは、不定冠詞のanと同様、勿論男色者の印でした。

(3) recessという概念の中には、slantという概念が入っていること、それからrecessが夜の男色者の世界のことですので、上の訳には、「この傾斜のついていい尻」と敢えて訳出しました。Slantという形容詞が掛かる名詞は尻を意味しています。例えば、White Buildingという詩集の中の「Praise for An Urn In Memoriam: Ernest Nelson」と題した詩の中に次の一行があります。Ernest Nelsonもいい恋人の一人なのでしょう。

The slant moon on the slanting hill

Moonは男色行為に耽るときの役割のひとつ、そうしてhillとは尻のことです。Quaker Hill。快楽に身を打ち震わせ、尻を振るわせる者、すなわち男色者の尻というのが裏の意味です。丘を尻に喩えた。これは、The BridgeのVIに当たる詩の題名です。表の訳は自明でありましょう。このように大胆不敵に、冒涜に、Craneは言葉を使う、いや、そのように見える。Craneは、何故釈迦の詩を詠ったのか、釈迦とは何か、あなたも考えてみて下さい。このようなCraneの概念体系図が今僕の眼の前に展開している。これはHart Craneの童貞のペニスから生えた一本の樹木。

さて、この尻を拡げるのに、手を貸して、そうして尻が一翼の両の翼にみえるまでにして、太陽たるホストがそのペニスを挿入し易くする役割を演じるのが月。そのように月が開いた尻の姿をwing、翼と呼ぶ。これは空での名前。陸での名前は丘、hillである。海での名前は?
もちろんこれらばかりではない。そのmatrixは本当に贅沢にある。よくもやってくれるぜと、今回もやはり僕は一層深くお前を知ったが故に感嘆する。しかも、stillという副詞を以って。でも僕は男色者ではないぜ、Craneよ。

太陽がペニスを挿入する先は地球。月は、地球には尻を見せない。見せるのは、太陽に対してだけで、つまり、地球の周りを廻りながら、太陽―月―地球という配置をとったときだけである。太陽にそのエネルギーのペニスを挿入してもらえる配置もあるのだ。

1万字を超えたので、僕の検索した言葉のみを以下に掲げます。勿論辞書は、Merrian-Webster Onlineです。

〔語釈〕
(1) still
Main Entry: 3still
Function: adverb
1 : without motion (sit still)
2 archaic a : ALWAYS, CONTINUALLY b : in a progressive manner : INCREASINGLY
3 -- used as a function word to indicate the continuance of an action or condition (still lives there) (drink it while it's still hot)
4 : in spite of that : NEVERTHELESS (those who take the greatest care still make mistakes)
5 a : EVEN 2c (a still more difficult problem) b : YET 1a

(2) step
Main Entry: 1step
Pronunciation: 'step
Function: noun
Etymology: Middle English, from Old English st-aelig;pe; akin to Old High German stapfo step, stampfOn to stamp
1 : a rest for the foot in ascending or descending: as a : one of a series of structures consisting of a riser and a tread b : a ladder rung
2 a (1) : an advance or movement made by raising the foot and bringing it down elsewhere (2) : a combination of foot or foot and body movements constituting a unit or a repeated pattern (a dance step) (3) : manner of walking : STRIDE b : FOOTPRINT 1 c : the sound of a footstep (heard steps in the hall)
3 a : the space passed over in one step b : a short distance (just a step away from the bank) c : the height of one stair
4 plural : COURSE, WAY (directed his steps toward the river)
5 a : a degree, grade, or rank in a scale b : a stage in a process (was guided through every step of my career)
6 : a frame on a ship designed to receive an upright shaft; especially : a block supporting the heel of a mast
7 : an action, proceeding, or measure often occurring as one in a series (taking steps to improve the situation)
8 : a steplike offset or part usually occurring in a series
9 : an interval in a musical scale
- step;like /-"lIk/ adjective
- stepped /'stept/ adjective
- in step 1 : with each foot moving to the same time as the corresponding foot of others or in time to music 2 : in harmony or agreement
- out of step : not in step (out of step with the times)
(3) street
Main Entry: 1street
Pronunciation: 'strEt
Function: noun
Etymology: Middle English strete, from Old English str[AE]t, from Late Latin strata paved road, from Latin, feminine of stratus, past participle -- more at STRATUM
1 a : a thoroughfare especially in a city, town, or village that is wider than an alley or lane and that usually includes sidewalks b : the part of a street reserved for vehicles c : a thoroughfare with abutting property (lives on a fashionable street)
2 : the people occupying property on a street (the whole street knew about the accident)
3 : a promising line of development or a channeling of effort
4 capitalized : a district (as Wall Street or Fleet Street) identified with a particular profession
5 : an environment (as in a depressed neighborhood or section of a city) of prostitution, poverty, dereliction, or crime
- on the street or in the street 1 : idle, homeless, or out of a job 2 : out of prison : at liberty
- up one's street or down one's street : suited to one's abilities or taste

(3.1) dereliction
Pronunciation:
Function: noun
1 a : an intentional abandonment b : the state of being abandoned
2 : a recession of water leaving permanently dry land
3 a : intentional or conscious neglect : DELINQUENCY (dereliction of duty)b : FAULT, SHORTCOMING

(3.2) recession
Main Entry:
Pronunciation:
Function: noun
1 : the act or action of receding : WITHDRAWAL
2 : a departing procession (as of clergy and choir at the end of a church service)
3 : a period of reduced economic activity
-
(3.2.1) recede
Main Entry: ;cede
Pronunciation: ri-'sEd
Function: intransitive verb
Inflected Form(s):
Etymology: Middle English, from Latin recedere to go back, from re- + cedere to go
1 a : to move back or away : WITHDRAW b : to slant backward
2 : to grow less or smaller : DIMINISH, DECREASE
synonyms RECEDE, RETREAT, RETRACT, BACK mean to move backward. RECEDE implies a gradual withdrawing from a forward or high fixed point in time or space (the flood waters gradually receded). RETREAT implies withdrawal from a point or position reached (retreating soldiers). RETRACT implies drawing back from an extended position (a cat retracting its claws). BACK is used with up, down, out, or off to refer to any retrograde motion (backed off on the throttle).

(3.2.1.1) slant
(3.2.1.2) slant
(4) covert
Main Entry: ;vert
Pronunciation:
Function: adjective
Etymology: Middle English, from Middle French, past participle of covrir to cover
1 : not openly shown, engaged in, or avowed : VEILED (a covert alliance)
2 : covered over : SHELTERED
synonym see SECRET

(5) elbow
Main Entry: ;bow
Pronunciation: 'el-"bO
Function: noun
Etymology: Middle English elbowe, from Old English elboga, from el- (akin to eln ell) + Old English boga bow -- more at ELL, BOW
1 a : the joint of the human arm b : a corresponding joint in the anterior limb of a lower vertebrate
2 : something (as macaroni or an angular pipe fitting) resembling an elbow
- at one's elbow : at one's side
- out at elbows or out at the elbows 1 : shabbily dressed 2 : short of funds

(5.1) el
(5.2) bow
(6) torn

Chapinesque再び(3):第5連の裏表の訳を

今日はWhitel Buildingの第3階の(1,5)のうちの後者、すなわち第5連を表と裏で訳します。

裏の訳を読んだ読者は、これは一体なんだと驚き、こんな訳が何故生まれるのかと訝しく思われることでしょうが、他の詩とあわせて読んだときに、やはり、これは正しい訳なのです。いづれHart Craneの言葉の体系図、matrixを作成しましょう。

なぜこのような裏の訳が可能であるかは、過去の僕のTo Brooklyn Bridgeの連載をお読み下さい。


【原詩】

Chaplinesque

We will make our meek adjustments,
Contented with such random consolations
As the wind deposits
In slithered and too ample pockets.

For we can still love the world, who find
A famished kitten on the step, and know
Recesses for it from the fury of the street,
Or warm torn elbow coverts.

We will sidestep, and to the final smirk
Dally the doom of that inevitable thumb
That slowly chafes its puckered index toward us,
Facing the dull squint with what innocence
And what surprise!

And yet these fine collapses are not lies
More than the pirouettes of any pliant cane;
Our obsequies are, in a way, no enterprise.
We can evade you, and all else but the heart:
What blame to us if the heart live on.

The game enforces smirks; but we have seen
The moon in lonely alleys make
A grail of laughter of an empty ash can,
And through all sound of gaiety and quest
Have heard a kitten in the wilderness.


〔第5連〕

The game enforces smirks; but we have seen
The moon in lonely alleys make
A grail of laughter of an empty ash can,
And through all sound of gaiety and quest
Have heard a kitten in the wilderness.

〔表の訳〕
前回の訳をそのまま引用します。

ゲームをするならば、ゲームの規則があるから、いやでもその最高法規の執行命令を受け容れて、相手に点を取らせまいとし、相手のミスを誘い、嫌やでも応でも、(僕らの願う本来の規則正しい解決を図ろうとしながらも、やはり)作り笑いを作るが、しかし、僕達が実際にみて来たのは何かといえば、賑やかな笑い声の(小文字で書いた、世俗の)聖杯を、灰皿代わりに使われてそこに打ち捨てられていた(空虚な、空しい)空き缶から作ったのは、ビジネス街の表通りから一本裏に入った寂しい通りに映る月であり、そして、陽気なドンチャン騒ぎと世俗の騎士道の聖杯探求の賑やかな音や響きを通じて、その音響のどこからでも絶えず聞こえて来たのは、人間がまだ脚を踏み入れたことのない未開拓の領域、即ち荒野にあって、今にも飢え死に寸前の、一匹の子猫の鳴き声なのだ。

〔裏の訳〕
この薄汚い、金で色を売るような男色者のhostとguestの役割で行う性行為は、無理に愚かなへつらった笑いを強制執行し、相手に性具や歯でペニスを傷つけられても痛くないよといった顔をするようにその罰を男色者に与えるが、しかし僕達男色者仲間が現実に見たことがあるのは、そうではなく、男色者の中には、寂しい裏通りを相手の男を選り好みしながら歩いている初めての若者がいて、まだペニスの挿入されていない空っぽの尻の穴を担いで歩いているぜ、ほら俺の精液を詰め込んでやろうか、そんなことでもして刑務所暮らしで臭い飯でも一緒に食おうぜといったような、からかいの笑い声からなる男色者達の、精液を受ける聖杯となるのを見た若者の姿なのであり、そして男色者の陽気なお祭り騒ぎと相方探究のありとあらゆる行為の音や響きを伴う性行為を通じて聞こえるのは、まだ普通の人間どもの開拓していない未知の領域、この男色というまだ耕かされていない領域にいる一匹のか弱い猫のような快楽の声を上げる、そのような初心(うぶ)な男色者のその声なのだ。

〔解釈〕
(1) 不定冠詞が男色者の印であることは既に今までの連載で書いた通り。今回も同じです。A kitten, a grail。

(2) The moonは、いつも地球に後ろを見せずに、前だけを見せている衛星。実は、Craneは、男色者の行為とそのhostとguestの関係を宇宙の天体の運行の関係、そのシステムの関係と対応させて詩を書いているのです。それらの天体の名前は、sun, earth and moon、です。地球に対して月はいつもその尻を見せないのです。これらのことについてはもっと後日詳述します。この3つの男色者の関係を、例えば、To Brooklyn BridgeのVでは、Three Songsと題しています。勿論、C a space 33の33も同じ関係を表している。この詩についてはもっと詳しく論じたいと思っています。

(3)lonely alleyをここでは、上のように訳しましたが、実はまだ足りない。Lonelyには、ひとりでマスターベーションをするという意味をCraneは掛けている。だから、明るい通りから身を隠して、一人建物の後ろ側で暗闇に隠れてマスターベーションをしている初心(うぶ)な若者、尻を誰にもまだ売っていない若者という意味です。The moon in lonely alley.実感があるでしょう?発音してみると。

後はWebsterから引用した語釈をお読み下さい。

〔語釈〕
(1) smirk
Main Entry: smirk
Pronunciation: 'sm&rk
Function: intransitive verb
Etymology: Middle English, from Old English smearcian to smile; akin to Old English smerian to laugh
: to smile in an affected or smug manner : SIMPER
- smirk noun

(1.1) simper
Entry: 1sim·per
Pronunciation: 'sim-p&r
Function: verb
Inflected Form(s): sim·pered; sim·per·ing /-p(&-)ri[ng]/
Etymology: perhaps of Scandinavian origin; akin to Danish dialect simper affected, coy
intransitive senses : to smile in a silly manner
transitive senses : to say with a simper (simpered an apology)
- sim·per·er /-p&r-&r/ noun

(2) alley
Main Entry: 1al·ley
Pronunciation: 'a-lE
Function: noun
Inflected Form(s): plural alleys
Etymology: Middle English, from Middle French alee, from Old French, from aler to go
1 : a garden or park walk bordered by trees or bushes
2 a (1) : a grassed enclosure for bowling or skittles (2) : a hardwood lane for bowling; also : a room or building housing a group of such lanes b : the space on each side of a tennis doubles court between the sideline and the service sideline c : an area in a baseball outfield between two outfielders when they are in normal positions
3 : a narrow street; especially : a thoroughfare through the middle of a block giving access to the rear of lots or buildings
- up one's alley also down one's alley : suited to one's own tastes or abilities

(3) ash
Entry: 1ash
Pronunciation: 'ash
Function: noun
Etymology: Middle English asshe, from Old English æsc; akin to Old High German ask ash, Latin ornus mountain ash
1 : any of a genus (Fraxinus) of trees of the olive family with pinnate leaves, thin furrowed bark, and gray branchlets
2 : the tough elastic wood of an ash
3 [Old English æsc, name of the corresponding runic letter] : the ligature æ used in Old English and some phonetic alphabets to represent a low front vowel \a\

(4) canMain Entry: 2can
Pronunciation: 'kan
Function: noun
Etymology: Middle English canne, from Old English; akin to Old High German channa
1 : a usually cylindrical receptacle: a : a vessel for holding liquids; specifically : a drinking vessel b : a usually metal typically cylindrical receptacle usually with an open top, often with a removable cover, and sometimes with a spout or side handles (as for holding milk or trash) c : a container (as of tinplate) in which products (as perishable foods) are hermetically sealed for preservation until use d : a jar for packing or preserving fruit or vegetables
2 : JAIL
3 a : TOILET b : BATHROOM 1
4 : BUTTOCKS
5 : DESTROYER 2
6 slang : an ounce of marijuana
- can·ful /'kan-"ful/ noun
- in the can of a film or videotape : completed and ready for release

(5)wilderness
Main Entry: wil·der·ness
Pronunciation: 'wil-d&r-n&s
Function: noun
Etymology: Middle English, from wildern wild, from Old English wilddEoren of wild beasts
1 a (1) : a tract or region uncultivated and uninhabited by human beings (2) : an area essentially undisturbed by human activity together with its naturally developed life community b : an empty or pathless area or region (in remote wildernesses of space groups of nebulae are found -- G. W. Gray died 1960) c : a part of a garden devoted to wild growth
2 obsolete : wild or uncultivated state
3 a : a confusing multitude or mass : an indefinitely great number or quantity (I would not have given it for a wilderness of monkeys -- Shakespeare)b : a bewildering situation (those moral wildernesses of civilized life -- Norman Mailer)