2010年3月31日水曜日

Legend (2)

I am not ready for repentance;
Nor to match regrets. For the moth
Bends no more than the still
Imploring flame. And tremorous
In the white falling flakes
Kisses are, ―
The only worth all granting.

〔翻訳〕
僕は、法令に従って下される判決の命令には従って
悔悛し、この行為を改めることをする用意はない。
それに、後悔をあれこれして、それに合わせて仲良くするつもりもないし、それが済まないとも全然思わないのだ。
それは、夜羽ばたき、その羽根でノクターン、夜曲をを奏でる蛾が
静寂、炎に静かに密やかに神を祈るその静けさよりも、または
目的無く、静かにひそかに祈る、その炎よりも
それ以上に体を屈めて(腰をひん曲げて)
羽ばたき、音楽を奏でることがないからだ。
(僕は、そのように祈っているのだから)
雪の薄片、僕を酔わせる白い麻薬のような薄の片々を天から降らせる白そのもの
または、恰も白く墜ちてくる、または墜ちつつ、そうして、そのことによって白くなる
その雪の片々(天空にあっては白は黒いのか?)、麻薬のような、媚薬のような、その片々の中では、
様々な接吻があり、それは尻にも、だから、自らの死刑執行のキスであり、それはとりわけ、お前の好意を獲得せんがための行為なのだが、
すべての許しに匹敵して、また僕のすべてを譲渡することに匹敵して価値ある、唯一の価値なのだ。

〔註釈〕
(1)揺れる形容詞
第3連で、3行目のthe stillで何故Craneは改行したかという理由は、明白です。それは、、その次の行のimploring flameと揺れる形容詞の関係を保ち、明瞭にするためです。

つまり、the still imploring flameから、ふたつの句が生まれるのです。

the still that is imploring flame.
the flame that is stil imploring

そうして、この詩のこの連の場合、Craneは、どちらかというと、前者、すなわち、the still that is imploring flameを優先させたということになります。もちろん後者も否定しているのではなく、詠っているのです。

前者は、炎に静かに密やかに神を祈るその静けさ。静けさ、静寂自体が炎に神を祈っている。
後者は、目的語がないが、しかし、目的無く、静かにひそかに祈る、その炎。

このふたつの意味があるのです。他の場合も、すべて同様です。しかし、この言葉と意味の転倒と倒立の言祝(ことほ)ぎよ。しかし男色者の苦痛と共に。

(2)bendは、To Brooklyn Bridgeの第3連のbent (bend)と、同じレベルの第9連のbeading thy pathに相当します。Beading thy pathとは、第1連の形象、the chained bay waters、男色者が連鎖して灼熱の肛門性交を意味しています。

(3)the mothは、"any of various usually nocturnal lepidopteran insects "ということから、nocturnal、羽のはばたきとその奏でる音楽、夜曲とを掛け合わせ、更に、自分自身を蛾に見立てて、夜で歩く男色者といっているのです。

(4)the white falling falkesは、上の(1)と同じ揺れる形容詞。

the white that is falling flakes.
the flakes that are white falling.

White buildingではなく、white falling。白く墜ちるのです。ここでは、white-fallingと書きたいところです。To Brooklyn Bridgeの第2連と第10連のように。白い場所から、まっさかさまに黒い場所へと。

前者は、雪の薄片、僕を酔わせる白い麻薬のような薄の片々を天から降らせる白そのもの
後者は、恰も白く墜ちてくる、または墜ちつつ、そうして、そのことによって白くなる、雪の片々(天空にあっては黒いのか?)、麻薬のような、媚薬のような、その片々。

Whiteという言葉には、形容詞はあっても、副詞はないのです。これは、To Brooklyn Bridgeの第2連、officeでの男色者の交流の可能性を詠った第2連にあるapprationalが、そうであるのと同じです。このような言葉、つまり、品詞の機能に形容詞しかなく、副詞を持たない品詞(そもそも)はCrane好みの言葉なのです。
To Brooklyn Bridgeの、Crane独特の詩の作法のところで、それは論じた通りです。

(5)Kissesのあとの「―」は、To Brooklyn Bridgeでは、第4連と第8連でありました。これらの「―」の意味するところは、ここから、橋の詩化と共にひとの夜明けがやってくる、そのいわば合図でした。
その切っ掛け、契機は、男色の行為なのです。

Legendの場合は、どうでしょうか。吟味してみましょう。Kissesの意味するところは、まさにその行為でありましたから、これは、つまり、To Brooklyn Bridgeにそのまま倣えば、こうなります。

「―」は、その前にある男色の言葉と行為の後に来る、次の連において、object(visionとなる対象)の詩化と共に、夜明けがやってきて、日常生活の喧騒が始まる。

(6)grantは、禁止と肯定の、否定と肯定の意味があるので、それを訳しました。前者は、許す(原則禁止のものを、一部解除、解放して)、あるいは赦す(罪ならば)。後者は、To Brooklyn Bridgeにあるように
自分を売ることがない、そうではなく、詩人がこころを許して、その身をゆだねることのできる、そのような価値を賦与するものだといっているのです。
ブルックリン橋の第7連、地獄の世界から第8連へと行く、この連の、いやまた第5連に小さく循環してまた地獄に墜ちるのかという、その分岐の連にあるbestowに同じgrantです。これは、お前、聖なるブルックリン橋よ、お前が決めるのだ。ここでは、一体だれが決めるのでしょうか。この合わせ鏡の世界では、そのa mirrorの、鏡像の、その対応関係を安全保障するものは、一体だれなのだろうか。そのものの名前は何か?
それが、Legendだというのです。丁度やはり、To Brooklyn Bridgeといったように。僕は何をいいたいか。再帰的に、legendはlegendsを含むのです。それが(例:水平橋のbridgeと、垂直橋の帆船のbridge)、ブルックリン橋ならば、その前置詞のToによって表に表れ、このlegendならば、最初にそれが同じ複数の名前で、単数の名前の中にあって、そうして、また、この詩の場合には、第1連の前置詞、byなのです。

(7)最後の1行の、すべてを譲渡しても尚値する価値あるものとは、To Brooklyn Bridgeの第5連の、橋の欄干から身を投げる気狂い騎士に相当する文言です。そうして、ウオール街の日中へ落ちて行き、昼間は死者として仕事をするというのでした。THE BOOK OF JOBでした。
ゲーテのDivan、西東詩集の中の僕の好きな詩「Selige Sehnsucht」(神聖なる憧憬)では、死して成れと日本語で訳される行為です。第3連で、これと同じ思想が詠われています。

(8)こうしてみると、実は、昨日の「a mirror」も、男色の鏡であることが、やはり分かります。ですから、表の訳と裏の訳をすることができます。

それは、明日おみせしましょう。また、この第2連もふたつに分けて、以後表の訳と裏の訳を並列させることにします。

〔語釈〕
(1) repentance
・pen・tance
Pronunciation: ri-'pen-t&n(t)s
Function: noun
: the action or process of repenting especially for misdeeds or moral shortcomings
synonym see PENITENCE

この言葉は、既に、C 33にある言葉、penitenceと同義語。C 33では、最終連、第3連で、次のようにinscribeされている。

From penitence, must needs bring pain,
And with it song of minor, broken strain.

これは、既にTo Brooklyn Bridgeの語釈の中で触れた通りです。ここには男色的な意味での性的な含意がある。
Penitenceは、penisに、strainは、lofty strainというように、これらは、painも含めて、The City's fiery parcelなのです。
それは、そのままmisdeedsであり、moral shortcomingsの罪(sin)を悔い改め、悔悛させる行動またはプロセスのことです。このactionやprocessとは、このまま法律用語で、裁判にかけ、かけられること、その訴状をfileすることを意味しています。To Brooklyn Bridgeの"Some page of figures to be filed away"、この1行を含む第2連を思い出してください。

そうすると、2行目のregretsは、その結果だといっているのです。これらは、すべて縁語です。

(1-1) repent
(省略)

(10) kiss
(省略)
1 : to touch with the lips especially as a mark of affection or greeting
2 : to touch gently or lightly (wind gently kissing the trees)
intransitive senses
1 : to salute or caress one another with the lips
2 : to come in gentle contact
- kiss・able /'ki-s&-b&l/ adjective
- kiss ass usually vulgar : to act obsequiously especially to gain favor
- kiss good-bye 1 : LEAVE 2 : to resign oneself to the loss of

そうか、白人種のキス、接吻には、さよならの意味もあったのだな。確かに、そうだ。to resign oneself to the loss of something. Some-thingを。
それから、そのままの言葉で、猥雑に、尻にキスをするという意味を。Chaplinesqueにある、次の1行、

Our obsequies are, in a way, no enterprise.

そうすると、この一行の正確な意味も、今や明らかです。

僕達の死刑執行とはいかなる意味をかけていたのか、

僕達の自ら下す死刑執行は、ある意味では、それは男色者のやり方で、またそうであるから、それは、そもそもビジネスなどはあり得ないし、金儲けにもならないのだ。なぜならば、それは、ひとえに支配者に、この世の支配者にではなく、神という支配者に捧げるものだからだ。それは、そのような死であるからだ。
これは、To Brooklyn Bridgeの第6連にある、Down Wallに応ずる。ウオール街にては、死んだ人間として仕事をするCraneを。
(省略)
(10-1) obsequious
ous
Pronunciation: &b-'sE-kwE-&s, ab-
Function: adjective
Etymology: Middle English, compliant, from Latin obsequiosus, from obsequium compliance, from obsequi to comply, from ob- toward + sequi to follow -- more at OB-, SUE
: marked by or exhibiting a fawning attentiveness
synonym see SUBSERVIENT
- ob・se・qui・ous・ly adverb
- ob・se・qui・ous・ness noun

この定義から、obsequiousとは、男色者のホスト、ゲストの役割のうち、後者、すなわちゲストのことをいっている。そのように支配される側のことを。そうなってもいいという程に、相手のいう通りになすがままに身を任せて、いわば死ぬのだ。
だから、Chaplinesqueの、僕達の死刑執行とは、そのような意味であったのだ。それは、もちろんそもそもビジネスの事業、enterpriseではない。どのような意味で、すなわち、ある意味で。あるとは、a way、更にすなわち、男色者の特有の方法でやるわけだからだ。
また僕は声にだす、なんてやろうだ、このCraneという野郎は、と。世界中の英文学の専門家達は、このことに気づいていないと、僕は確信している。こんなに巧妙に隠しているとは、僕の手元にあるこの詩人の研究者、Bloomも、絵画との関係を論じたり、他の詩人との関係を論じていて、このようには読んでいないのです。
英語の世界に生まれたからといって、英語の作品が読めるとは限らないのだ。逆もまた真なり。しかし、自分でいってはおかしいが、何故僕は、こんなにCraneがわかるのだ?ひょっとしたら、Craneの生まれ変わりならむや。僕が生まれたのは、Craneの没年から20年後、そうすると伊勢神宮の遷宮と同じ時間間隔だ。

結局、今日の結局詩:
結局
僕は
Hart Craneだった。

しかし、実際にやっていることは、散文的な、だれにでもわかる透明で、平明なやり方だから、これに徹したせいであろうし、それに何よりも、僕自身が、a kitten in the wilderness (Chaplinesque)であるからだろう。

結局詩2:
結局
僕も
荒野の一匹狼ならぬ(これならヘッセ)
荒野に棲む
しょっちゅう腹を空かせている子猫だった

(*)「しょっちゅう腹を空かせている」は事実です。体脂肪率の高い子猫。

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