2010年3月31日水曜日

Hart Crane余語5【Elements】

以下今日Hart Craneの詩集を逍遥しながら思ったこと。

1.自然
自然科学は、自然を要素分解して、自然を、つまり、自然の運行を理解しようとした、理解しようとは、すなわち原理的に説明をしようとした。だから「理」解。

しかし、自然を崇拝するだけでは、どんな人間も、その社会も運営(自然は運行、人間の社会は、運営)することができない。何故か。Hart CraneのTo Brooklyn Bridgeを読み終えて、その答えがありました。

それは、自然の要素、すなわちelement(s)を、人間が既に、その自身の内に持っているからです。そうして、生活し、生きているからです。

僕の場合は、寒さです。これについて考えることなくしては、生きることができない。つまり、生きる術、手段を考え、講じることができない。それは、一義的には風土。しかし、それだけでは、人は詩を書くことはない。それだけでは、ただ耐えるだけだ。

Hart Craneは、11連を読んだあと、そのほかの詩も読んでいるのですが、それはいづれまたこのブログで翻訳もし注釈もつけるとして、よく夜明けにchillと言っています。夜明けというのは、1日の夜明けであるとともに、既にして、既にして、です、象徴的な夜明けです。Craneの生まれたOhaioという州は、寒いのだろうか。僕はいま、Ohaioがどこにあるのかも、正確には知らない。でも、きっとそうなのだろう。

2.同じ連想から、Craneが少年の頃のことを思ってみることが、僕はできる。それは、17歳のときに書いたC33という最初の詩、発表した最初の詩を読んで、わかることだ。

この少年がいつも、rest, harbor, pledgeとしたものは、僕は、その土地の教会堂なのだと思う。それは、出来うれば、ローマン・カトリックの堂宇であればよかったけれども、そうではなかったのではないかとも思うのだ。アメリカの歴史からいって。だから、この少年は、ヨーロッパに憧れて、そうして、自分の祖先のことを考えて、この少年の母親は、ひょっとしたらアイルランドの出身ではないかと思うし、そうであれば、なおよくわかるのだが、この少年の詩が、そうして、その方が僕にもよくぴったりと、しっくりと来るのだが、その曲線美、言葉の綾、そうして比喩、他方、構造的な論理的な構築物をwhite buildingする能力、これを一体どこで養ったのか。しかも、一家の長としてのこの能力を。これが、僕の不思議だが、しかし、何も不思議ではない。これは、そのままこの少年の苦しみ、苦悩、苦痛の代償だったのだと僕は思う。

そうして、その教会の庭があり、そこには、その歴史からいっても葡萄の樹木があった。蔦は教会堂の壁をつたってあったのではないだろうか。そこで、行われた秘め事もあったのだ。

それが、To Brooklyn Bridgeを生んだ、事実が、ではなく、その苦しみを克服しようとした意志が、この詩を生んだ。そうして、それ以外のすべての詩が生まれた。目に見える現実の事象を形象化するその方法も、既にして、小さな子供の苦悩の中に、その解答があったのだ。あとは、自分を発見する旅ではなかったろうか。

そうして、20世紀初頭のニューヨークに出てきた。チャップリンの描いたような。

3。Crane最後の詩。未刊行の。断片の。

しかし、この詩人の真骨頂は断片にある。古典的であろうとすると、この時代にあっては、表現は断片的になる。しかし、この詩人のすばらしさは、それがどの時代でもそうであったし、時代に拘わらず、時代、すなわち時間という要素、elementを言葉に入れると、どのような表現も、必然的に且つ偶然にも、そうなるのだとういことを、よくよく承知して、そうではない、したがって、抽象的に見える詩をwhite buildingしたことだと僕は思う。

最後の詩、と見える、編集上の最後の詩を。

TO CONQUER VARIETY

I have seen my gohst broken
My body blessed
And Eden
Scrapedfrom my mother's breast
When the charge was spoken
Love dispossed
And the seal broken .....

数多性を克服すること、その為には:

僕は、僕が所有し、僕が所有されていた亡霊が破壊され、壊れるのを見たのだ。
そうして、僕の肉体が祝福され、
更に、僕の母の胸からエデンの園、この楽園を
だれが何度も試みて、削りとろうとしたのかは
知らないが、しかし、終(つい)には削りとられるのを
見たのだ。
それに対価を支払えと、お金を払えというのか?
そうであるならば、そのことを正式に、公式に言うのであれば、
愛は、所有を脱し、その頚城(くびき)を脱し、
だから、封印も壊れるのだ。その封蝋が。


〔注釈〕
(1)the sealという言葉は、僕達日本語人が思うよりも、遥かに重い言葉だ。これは契約の用語。勝手にその封を解くわけには、そうして蝋でできていようから、溶くわけにはいかない。一体だれの許可がいるというのだろうか?父親の許可か?否。上で述べたように、詩人自身が家長なのだ。自己が自己に許可を求めて、自己を封じた封印を溶く。

(2)Craneの再帰性、recurrsiveness(などという英語はあるのだろうか。僕が今勝手に造語したこのこと)が生まれるのだ。合わせ鏡のような世界。本質的な。交換の世界。男と女の性の世界、男と男の役割交換、自然と人間の合わせ鏡、たとえばそれがブルックリン橋のような人工物であろうとも、その周りに自然があれば。

(3)そうして、今日の冒頭に戻る。自然は、人間を満足させることがない。安息を与えない。それは、一時の避難場所。rest, harbor, pledge, reprieve。

同じ問いを発しよう。一体だれが、その許可を与えるというのだろう。この詩人に、すべての詩人に。そうして、あなたに。男であり、女である。そうして、男であり女であり、女であり男である、あなたに。


〔語釈〕
(1) scrape
1scrape
Pronunciation: 'skrAp
Function: verb
Inflected Form(s): scraped; scrap·ing
Etymology: Middle English, from Old Norse skrapa; akin to Old English scrapian to scrape, Latin scrobis ditch, Russian skresti to scrape
transitive senses
1 a : to remove from a surface by usually repeated strokes of an edged instrument b : to make (a surface) smooth or clean with strokes of an edged instrument or an abrasive
2 a : to grate harshly over or against b : to damage or injure the surface of by contact with a rough surface c : to draw roughly or noisily over a surface
3 : to collect by or as if by scraping -- often used with up or together (scrape up the price of a ticket)
intransitive senses
1 : to move in sliding contact with a rough surface
2 : to accumulate money by small economies
3 : to draw back the foot along the ground in making a bow
4 : to make one's way with difficulty or succeed by a narrow margin (just scraped by at school)
- scrap·er noun
- scrape a leg : to make a low bow


(2) dispossess
Pronunciation: "dis-p&-'zes also -'ses
Function: transitive verb
Etymology: Middle French despossesser, from des- dis- + possesser to possess
: to put out of possession or occupancy (dispossessed the nobles of their land)

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