2010年3月31日水曜日

BLACK TAMBOURINE 2

Hart Craneは、この詩の中にいつものように暗号を隠している。あるいは、詩を暗号化して、裏の詩、すなわち男色者の喜びと悲しみを歌う詩としても読めるように書いている。

この詩の題名から見てみたい。

Blackという色の名前がつけられている。これは、詩集の名前であるWhite Buildingのwhite、この白と対極の、それゆえCraneの詩の中では、互いに相通じて最後には反転してもう一方の意味になる、そのような黒、即ち罪深い、男色者の黒という意味である。Whiteは、それに対して、浄化された、汚れの無い、男色の罪の赦されたという意味である。それが、White Buildingの意味。詩をbuildingすることで、文字通りに垂直方向に言葉の建物を階層化して立てることで、更に、そうやって構築された詩が、男色者の罪を赦されるものとしてある、そのような祈りの詩とすることで、whiteになる男色を歌った詩。

Tambourineとは、同じ詩集の中の別の詩、Chaplinesqueで述べた、チャーリー・チャップリンの主人公がかぶっている黒い山高帽、black hatと同じものを指している。あるいは、The Bridgeという別の詩集の冒頭にあるTo Brooklyn Bridge (このToは斜字体でなければならない。その理由は既に述べたので、わたくしの以前に掲載したTo Brooklyn Bridgeの解釈をご一読下さい。)、その詩の中の3連目の最後の行に、the same screenと歌っているものと同一物である。

それは、何かタンバリンのような形をしていて、あるいは山高帽のような形をしていて、円環の枠に柔らかな布をスクリーンとして掛けてある、そのような代物、男色者の性具。これをどのように使って、そこから複数の男が快楽を引き出すのか、わたしは一寸想像が難しいのだが、しかし互いに役割を演じ分けて、ホストとゲストになって、それぞれサービスを提供する側と享受する側になって、互いによろこびを分ちあうのだろう。その場合に、往々にして、男色者は、自らを中世の騎士に喩えて、その役割を演じ、ということは、ゲストになり、ホストである貴婦人からの、性的にはどういうものかはわからないが、褒美をもらうという、そのような劇を演ずるということも、思い出しておこう。

さて、Blackという色は、そのような色だとして、実はCraneは、それ以外に、whiteは勿論のこと、purple、gold、green、violet、amber、grey、sapphire、red、pink、blueなどという色彩を詩の中にちりばめていて、天体の場合と同様に、ここにも色に関するCraneの創造したシステムがあるものと思われる。Amberやsapphireは、色彩ばかりではなく、もうひとつある鉱物の名前のシステムと踵を接する色彩語だと思う。これらの言葉の体系については、また後日探究することにしたいと思う。

いつもやるように、まづ英語の不定冠詞、aまたはanを探してみよう。そうすると、次のようなものがあることに気付く。

a black man
a celler
a bottle
a roach
a crevice
a carcass

Aという不定冠詞は、その意味がAという文字の形から、男色者が尻を相手に向けているときの尻と脚の形であることから、またその複数形がAsであり、発音が尻の穴に同じであることから、この冠詞を冠したことばには、男色者としての意味が掛けられているということは、既に見て来た通りである。

そうすると、

a black manは、文字通りに罪深き男色者

a cellerは、男色者の地獄、秘密の場所

a bottleは、その形から、男色者のペニス

a roachは、ゴキブリであるが、しかしcockroachということのcock、即ちペニスが無い、言わば男としては性的に無能力の、そのような男、男色者という意味である。このように語を隠して顕すというやり方をCraneは行う。詩集The Bridgeの中の一篇、Van Winkleという題も、本来ならば、Rip Van Winkleの筈であるが、敢えてRipという男色に関わる言葉を隠して題としている。Ripとは、ペニスに歯を立てて快楽を与えると同時に、いささかの血も流れる位に傷をつけること。このVan Winkleという詩は、そういう男色の詩だよという含意をそこにこめている。このRipもCrane好みの言葉で、To Brooklyn Bridgeの第1連にも、Ripplingとして、また同じ詩の第6連には、Rip-toothとして出て来る。

a creviceは、男色者の割れ目、すなわち尻の割れ目とその穴のこと。
a carcassは、Websterによれば、

1: a dead body : corpse; especially : the dressed body of a meat animal
2: the living, material, or physical body (I hauled my carcass out of bed)
3: the decaying or worthless remains of a structure <(he carcass of an abandoned automobile)
4: the underlying structure or frame of something (as of a piece of furniture)

とあることから、性的快楽の絶頂を経験した後、死体のように横たわっている人間のことか、あるいは、そもそも男色者が人間としては、男性の能力もなく、さながら生ける屍だという意味。

そうするとこの詩の訳と解釈は、次のようになる。第1連から見て見よう。


【訳】

The interests of a black man in a cellar
Mark tardy judgment on the world’s closed door.
Gnats toss in the shadow of a bottle,
And a roach spans a crevice in the floor.

男色者の秘密の場所、地獄か地下牢ともいうべき場所にいる
男色者の興味は、世間から閉め出された、あるいは男色者が世間に対して締めて閉ざしたドアの上に、遅い判決を書きしるす。
ペニスの蔭で、蚊がさすような微妙なトス、ベニスを下から上へと
快楽を感じるように撫で上げる、そのことよ。そうして、
ベニスは、大きくなって、この地獄のフロアーで
男色者の尻の割れ目に突っ込んで、目一杯鰓(えら)も張り出すのだ。

【解釈】

男色者達は、快楽をむさぼり終わるごとに、ドアに回数を書き、そのよかった程度を何らかの印で書きしるしたものなのではないだろうか。それは、快楽の余韻を味わうのに忙しく、点数を書きしるすのは、つまり、判決を書く事は、それよりも遅れてしまうのだろう。
判決と訳したのは、Chaplinesqueにおいて、男色者の性的行為に、

our obsequies are, in a way, no enterpris.
とあるから。

男色者の世界の死刑執行は、男色者の流儀で、やりかたで(in a way)、ビジネスなのではなく、利害打算のない純粋なものであり、そのような形で男色者は性交の一回毎に、死ぬのだといっているから。このobsequiesは複数でもあるから、実際に、男色者の裁く側がいて、相手が絶頂のときに、死ねというのかも知れない。

Tossは、Craneの好みの言葉、他の詩でも出て来る(たとえば、同じ詩集のSunday Morning Appleの第5連の1行目)。大きく膨張した状態の亀頭を林檎と呼び、林檎Appleを、A peopleのneumonic(母音を約した縮約形)にして、男色者達という意味に掛け、その林檎をtossすると歌う。林檎をトスすると、実際に男色者達は言葉として使ったのだろう。

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