2010年3月31日水曜日

Legend (1) by Hart Crane

Hart Craneの最初の詩集、White Buildingsの最初の詩から、Legendを。

実は、今広くこの詩人の作品に目を通す、漠然と眺めながら、

Did one look at what one saw
Or did one see what one looked at?

そこにあるものを日本語に変換しようと、あちこち
メモをとりながら、その諸々の詩を味わっている、
玩味している、賞玩している、享受している、ところによっては享楽している(これは他動詞で使えただろうか、この日本語の動詞は?)、吟味している(これが散文人)ところなのですが、こうしてみると、やはり、これまで見てきた、To Brooklyn Bridgeの解釈は、正しい。これを規準にして、これ以外の詩を比較しながら、論じることにします。直接表立って、ブルックリン橋の名前を出さなくとも、これから読み、理解し、解釈し、翻訳するときの基軸は、ブルックリン橋です。

Craneの人生の時間はC33、33年間と、余りにも短い時間でありましたので(恰も計画したかのように)、その、これだけ構造化をした詩は、素晴らしい結構の詩、委曲を尽くした詩、彫心鏤骨の傑作にあるものは、その他の詩のすべてにもあったのです。

CraneのHieroglyphicを解くことに致しましょう。Craneに礼を失うことなく、他方、しかし、Craneの持つ猥雑と無礼と軽蔑もまた大切にしながら。

Craneのすべての詩は、互いに連鎖しています。ですから、それらの詩を、完成品も部品も(と、Craneの父親である、成功したキャンディー会社の社長ならば、つまり、ビジネスマンならば、そう言ったことでしょうが、また)作品も断片も行きつ戻りつし、相互に参照し、引用しながら、Craneの求めたるところを求めましょう。それは、結局、この詩人のvisionを明確にすること、このひとことに尽きます。

これまでと同様、これからも、僕の立場は、徹頭徹尾、durch und durch、through and through、最初から最後まで、言語、です。

Legendという詩と同じ意味の題名、Legende(これはそのままドイツ語でもあり得ますが)という詩もありますので、これを引用することがあるかも知れません。実は、僕は、まだ、このLegendをすべては、知らないのです。未知なるものへの探究、言葉の聖杯探究の旅に、それでは、出かけることに致しましょう。全5連のうちの最初の1連、この2行を。なんだか最初の出だしは、昨日翻訳したゲーテの西東詩集の最初の詩にどこか似ている。つまり、言語を扱い、沈黙を扱い、信頼と信仰を扱い、過去に戻って、避難することといい。
そうして、やはり、僕はThomas Mannの18歳の作品Visionを思う。その見かけとは別に、余りにも同じだから。何が?構造が。


Legend

As silent as a mirror is believed
Realities plunge in silence by . . .




〔翻訳〕

伝説

ひとつの鏡が、それが鏡だというだけで、そのまま
人に信じられているような
沈黙の、静寂の
数限りない現実が、byという前置詞とともに
(一体どこにやって来るというのか、即ち)
ここに、沈黙の中に、闖入する。




〔註釈〕
(1) 一番最後のCrane余語で述べたように、再帰的な関係が(実はCraneばかりではなく、普通に普段僕達がものを考えていてもそうなのですが)、その詩の特徴です。その余語では、合わせ鏡のようにといいましたが、早速出て参りました。それが、mirror。しかし、mirrorとは何か、です。鏡とは、何か、です。Craneの詩の言葉は、どんなに変哲のない言葉であっても、辞書を(英和ではいけません)引くことが大切です。

(2) a mirror とあるaは、僕がTo Brooklyn Bridgeで見つけた、loftyのAでしょうか。どうでしょうか。

(3) legendという言葉も、興趣の尽きることがない。たとえば、次の引用を。

2 a : an inscription or title on an object (as a coin)

Craneは、そのobject、すなわち客観、客体(更に即ち、主観の認識の対象)に、一体なんと文字を刻んだのか、そうして、その題名は何か。その答えが、legendなり。また、

b : CAPTION 2b c : an explanatory list of the symbols on a map or chart

このmapやchartは、この詩集の総称の題名になっている、buildingと同じ概念です。階層化するということ、そうやって、建築物を作ること、地図も同じにできています。そばにある地図を仔細に御覧なさい。

この定義に従えば、an explanatory list of the symbolsとは、この詩人のひとつひとつの詩をまとめた目次が、それであり、the symbolsとは、詩人の言葉でもあります。また、一篇の詩のひとつの題名が an explanatory listであり(そうすると、題名を見れば、俺の詩はわかるだろうとCraneはいっているのだ。ほら、White Buildingsって言うんだぜ、と)、その中に刻まれた(inscription)言葉が、the symbolsだということなのです。このような、僕の書いている構造そのもの、これをCraneは、White Buildingsといい、別のThe Broken Towerという詩では、"The matrix of the heart"と呼んでいます。これは、僕が作成し曼荼羅と呼んでいるもの、実に論理的な、大循環の構造表のことです(この構造の基本については、既にTo Brooklyn Bridgeの詩を翻訳した中で明確にした通りです)。

さて、上の定義にあるobjectのことを、Craneは、そうしてCraneでなくとも、それが一個の存在、entityであれば、あるいはCraneの場合ならば、複数のentities同士の唯一の関係のあり方を、実に活き活きと、一言でvisionと、詩中には、小文字で、措いてあるのです。措いてというのは、僕の日本語人の感覚とsense。Crane inscribes a vision.

しかし、Craneの父親は、coinにinscribeされたvisionを愛したのだ。これが、Chaplinesqueの表通りの小文字の聖杯探究、他方、それは、その息子、Craneの大文字の(とすらさへだにも、Craneは言はない)聖杯探究。貨幣と言語は、裏表。
コイン、貨幣は流通し、言葉も流通する。

(3) 「. . .」
第1連のこの3つの点は、To Brooklyn Bridgeの場合と同様に、深い沈黙と僕が呼んだものです。これがあると、そうしてここから、次元の変換が行われるのです。次の連や如何に。To Brooklyn Bridgeの第2連と、それに対応する同じ階層の第9連を思い出してください。


〔語釈〕
(1) legend
Legend
Pronunciation: 'le-j&nd
Function: noun
Etymology: Middle English legende, from Middle French & Medieval Latin; Middle French legende, from Medieval Latin legenda, from Latin, feminine of legendus, gerundive of legere to gather, select, read; akin to Greek legein to gather, say, logos speech, word, reason
1 a : a story coming down from the past; especially : one popularly regarded as historical although not verifiable b : a body of such stories (a place in the legend of the frontier) c : a popular myth of recent origin d : a person or thing that inspires legends e : the subject of a legend (its violence was legend even in its own time -- William Broyles Jr.)
2 a : an inscription or title on an object (as a coin) b : CAPTION 2b c : an explanatory list of the symbols on a map or chart

(2) mirror
Pronunciation: 'mir-&r
Function: noun
Etymology: Middle English mirour, from Old French, from mirer to look at, from Latin mirari to wonder at
1 : a polished or smooth surface (as of glass) that forms images by reflection
2 a : something that gives a true representation b : an exemplary model

(4) plunge
1plunge
Pronunciation: 'pl&nj
Function: verb
Inflected Form(s): plunged; plung·ing
Etymology: Middle English, from Middle French plonger, from (assumed) Vulgar Latin plumbicare, from Latin plumbum lead
transitive senses
1 : to cause to penetrate or enter quickly and forcibly into something
2 : to cause to enter a state or course of action usually suddenly, unexpectedly, or violently
intransitive senses
1 : to thrust or cast oneself into or as if into water
2 a : to become pitched or thrown headlong or violently forward and downward; also : to move oneself in such a manner b : to act with reckless haste : enter suddenly or unexpectedly c : to bet or gamble heavily and recklessly
3 : to descend or dip suddenly


"transitive senses
1 : to cause to penetrate or enter quickly and forcibly into something
2 : to cause to enter a state or course of action usually suddenly, unexpectedly, or violently
intransitive senses"ということから、既に男色を思うことは易しい。それから、

to descend or dip suddenly

これらの動詞も、To Brooklyn Bridgeで見たもの。これらは、Craneのthe symbols。

僕は、闖入と訳しましたが、それでもまだこの言葉の半分の意味しか伝えていない。残りは、聖化するdip、この航海と帆船と浄化の概念を。さて、この詩のどこに、地獄があるというのだ?

By the subway、これは、明日も考えることに致しましょう。By the subway、これは、by the wayの言葉遊び、Craneの詩のMoment Fugueという詩の第1連にある洒落です。

(5) by

Pronunciation: 'bI, before consonants also b&
Function: preposition
Etymology: Middle English, preposition & adverb, from Old English, preposition, be, bI; akin to Old High German bI by, near, Latin ambi- on both sides, around, Greek amphi
1 : in proximity to : NEAR (standing by the window)
2 a : through or through the medium of : VIA (enter by the door) b : in the direction of : TOWARD (north by east) c : into the vicinity of and beyond : PAST (went right by him)
3 a : during the course of
(ここから6までの文字が楽天の余計なHTML規則のために上梓できないので、直接Merrian-Webster Onlineに当たってください。これを余計なお世話という。余りに過剰なる。)
7 a : on behalf of (did right by his children) b : with respect to (a lawyer by profession)
8 a : in or to the amount or extent of (win by a nose) b chiefly Scottish : in comparison with : BESIDE
9 -- used as a function word to indicate successive units or increments (little by little) (walk two by two)
10 -- used as a function word in multiplication, in division, and in measurements (divide a by b)(multiply 10 by 4) (a room 15 feet by 20 feet)
11 : in the opinion of (okay by me)
- by the by or by the bye : INCIDENTALLY 2

この最後の10項のbyの意味も、この詩でCraneは掛け合わせている。なんて野郎だと、僕はまた声を出す。これほど論理的に詩を造り、造るばかりではなく、それを詩の中に歌い織り込むとは。

さあ、象形文字の謎を解くことにしましょう。

C 33 とは、何か、です。この詩人の人生の計画を。

007 lives twice. Hart Crane lives twice? And How?

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