2009年11月29日日曜日

オルフェウスへのソネット(XXVI)

XXVI

Du aber, Göttlicher, du, bis zuletzt noch Ertöner,
da ihn der Schwarm der verschmähten Mänaden befiel,
hast ihr Geschrei übertönt mit Ordnung, du Schöner,
aus den Zerstörenden stieg dein erbauendes Spiel.

Keine war da, daß sie Haupt dir und Leier zerstör.
Wie sie auch rangen und rasten, und alle die scharfen
Steine, die sie nach deinem Herzen warfen,
wurden zu Sanftem an dir und begabt mit Gehör.

Schließlich zerschlugen sie dich, von der Rache gehetzt,
während dein Klang noch in Löwen und Felsen verweilte
und in den Bäumen und Vögeln. Dort singst du noch jetzt.

O du verlorener Gott! Du unendliche Spur!
Nur weil dich reißend zuletzt die Feindschaft verteilte,
sind wir die Hörenden jetzt und ein Mund der Natur.

【散文訳】

お前、しかし、神々しき者、お前、最後まで依然として音を響かす者よ、

拒絶されたバッカスの巫女の群れと熱狂が、お前を襲撃したので、

巫女たちの叫び声は、秩序を以って、耳を聾するばかりに聞こえた、お前、美しき者よ、

破壊する者たちの中から、お前の慰め建立する演奏が、立ち昇った。

お前の頭(こうべ)と竪琴を破壊することのできるバッカスの巫女は誰もいなかった。

巫女たちが、どんなに激しく戦い、怒り狂って暴れ廻ったか、そして、お前の心臓に投げつけた石が、お前のところに来ると柔らかなものになり、そうして、聴覚が授けられた。

ついに、巫女たちはお前を叩き壊してしまった、復讐心に駆られて、その間、お前の響きは、獅子の中、巌の中に、まだ留まっていたし、木々や鳥たちの中にも、鳴り響いていた。そこで、お前はまだ今も歌っている。

ああ、お前、喪われた神よ。お前、果てしない痕跡よ。

ついには敵意がお前を引き裂いて分割したという、ただそれだけの理由で、わたしたちは、今や聴く者であり、そして自然の口であるのだ。

【解釈】

オルフェウスが殺される場面を歌ったソネット。第1部の最後のソネットです。第2部は、死んだ後のオルフェウスが登場します。

さて、「巫女たちの叫び声は、秩序を以って、耳を聾するばかりに聞こえた」の「秩序を以って」というのは、殺されるのがオルフェウスだから。オルフェウスは、このようなときにあっても、その本性から美しい秩序を生み出す。

神的な若者が、自らの死を犠牲にして、その無私の行為から、全くあらたな世界の生命となるという主題、主調は、悲歌と同じ(特に1番の最後の連)であり、オルフェウスへのソネットでも同じです。これは、すでにこれまで論じて来た通りです。

「お前の頭(こうべ)と竪琴を破壊することのできるバッカスの巫女は誰もいなかった。」とあるので、オルフェウスの首と竪琴は、破壊されずに、残ったのでしょう。残酷な形象でもありますが、またそれゆえの美的な感覚がないとは言えません。

このソネットを読んで、呼びかける言葉に、わたしはリルケの感情が相当入っているように感じます。恰もオルフェウスがリルケ自身であるかのように感じます。そうだとすると、

リルケは詩人で、読者たるわたしたちは、「聴く者であり、自然の口」だという関係になるでしょう。

口ということから、わたしは、第2部XVの泉の口を歌ったソネットを連想しますが、それは、オルフェウスの死後のソネットの展開となるのでしょう。

第2部では、どのような展開のソネットが待っているのでしょうか。

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