2009年11月22日日曜日

オルフェウスへのソネット(XIX)

XIX

WANDELT sich rasch auch die Welt
wie Wolkengestalten,
alles Vollendete fällt
heim zum Uralten.

Über dem Wandel und Gang,
weiter und freier,
währt noch dein Vor-Gesang,
Gott mit der Leier.

Nicht sind die Leiden erkannt,
nicht ist die Liebe gelernt,
und was im Tod uns entfernt,

ist nicht entschleiert.
Einzig das Lied überm Land
heiligt und feiert.

【散文訳】

世界は素早く変化する

雲の姿のように

すべて完成したものは

ふるさとへ、太古へと落ちる

逍遥と歩みについては

もっと遥かに、そしてもっと自由に

まだ、お前の序の歌が続いているよ、

竪琴を抱いた神よ。

苦しみは、ひとに認識されないし、

愛は、学ばれないものだし、

そして、私たちを死の中で遠ざけるものは、

そのヴェールをとって本当の姿をあらわされることはないのだ。

国、土地の上にある歌だけが、唯一、荘厳し、そして祝うのだ。

【解釈】

まだ、序の歌が続いているという「まだ」とは、オルフェウスが引き裂かれて殺されたあともなお、まだという意味だ。序の歌と何故リルケは歌ったのだろうか。それは、まだまだ、その先の本歌が歌われるまで、その持続を言いたいからだろう。

1連のfallen、ファレン、落ちるという動詞は、リルケの美しい言葉だ。太古とは訳したが、そうして言葉としては確かにそうだが、しかし、時系列で遡っての太古という意味ではない。その前にふるさとへとあるように、原初の状態を言っているのだと思う。

完成したものはすべて、原初の状態へ落ちるとは、その循環を言っていると解釈することができる。循環と言う言葉を、リルケは、ひとことも使ってはいないけれども。これもリルケのヴィジョンのひとつの性格を示していると思う。

オルフェウスの死後も、こうしてオルフェウスの歌声は絶えることなく、響いている。

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