2009年11月28日土曜日

オルフェウスへのソネット(XXIII)

XXIII

O ERST dann, wenn der Flug
nicht mehr um seinetwillen
wird in die Himmelstillen
steigen, sich selber genug,

um in lichten Profilen,
als das Gerät, das gelang,
Liebling der Winde zu spielen,
sicher, schwenkend und schlank,

erst, wenn ein reines Wohin
wachsender Apparate
Knabenstolz überwiegt,

wird, überstürzt von Gewinn,
jener den Fernen Genahte
sein, was er einsam erfliegt.

このソネットは、前のソネットの速度と飛行の試みから、飛行機が歌われている。飛行機も詩になるのだ。

【散文訳】

飛行というものが、もはや自分のためではなく、天の静けさの中へと

昇って行くのであれば、そうして、それが、明るい横顔を様々にみせながら、

風の好きな遊びをすることに成功した器具として、しっかりと、揺れながら、

みめかたちよく遊ぶためであるならば、そうなって、ああ、初めて、

成長する器具たちのひとつの純粋な方向、彼方へ行くことが、少年の名誉心を凌駕するならば、そのとき初めて、

そうやって得るものに驚いて慌てて、遠い距離に近いあの者は、自分が孤独に飛行して到達して得るものになる。

【解釈】

少年の名誉心を凌駕する、とは、少年が飛行機に魅了される様を言っているのでしょう。我を忘れて、飛行に見入ってしまい、魅入られる少年。

「遠い距離に近い」というリルケの発想は、いつもの言葉。既に何度も論じてきた通り、一番そばにいるものほど遠いところにいるというのがリルケの詩想でした。それを克服するために何をしなければならないか。オルフェウスの変身は、そのためでもありました。

「遠い距離に近いあの者」とは、オルフェウスととっても良いし、それ以外の、ここで歌われている心性のひとなら誰でもと理解してよいのではないでしょうか。

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