2009年11月22日日曜日

オルフェウスへのソネット(XVII)

XVII

Zu unterst der Alte, verworrn,
all der Erbauten
Wurzel, verborgener Born,
den sie nie schauten.

Sturmhelm und Jägerhorn,
Spruch von Ergrauten,
Männer im Bruderzorn,
Frauen wie Lauten...

Drängender Zweig an Zweig,
nirgends ein freier....
Einer! O steig... o steig...

Aber sie brechen noch.
Dieser erst oben doch
biegt sich zur Leier.

【散文訳】

一番下のところには、老人がいる、惑乱して、途方に暮れて

それから、栽培して収穫された者たちすべての根、

その者たちの決してみたことのない隠れた泉

突撃のための兜と、狩猟の角笛、

髪が白くなった者たちの箴言、

兄弟の間で起こる怒りの中にいる男達、

ラウテという(マンドリンに似た弦楽器)のような女達….

押し迫る枝また枝

どこにも自由な者はいない….

ひとりだけ、そういう者がいる、おお、昇って行く、昇って行く….

しかし、それらのものは、まだ砕けている。

その男は、やっと、なんとか上に昇って、

竪琴の響きに合わせて身を撓(たわ)めている。

【解釈】

このソネットは、言葉の数も少なく、表現も淡々としている。一寸、調子に変化がある。

実は、その次のソネットXVIIIも、同じ趣きがある。この調子は、更にその次のソネットXIXまで続いている。

さて、このソネットは、上に訳したように、それをそのまま受け取る以外にはないと思う。

後半をみると、やはりひとりの男が上昇して、成長していく様が歌われている。これは、オルフェスだろう。オルフェウスが、高いところで、竪琴を弾きながら、その音色に合わせて、身を曲げ、撓めている。

その後半に対して、最初の連は、地下の世界を歌っている。地下の世界は、死者の住む世界であったが、老人は、その近しい仲間だということだろうか。何故、途方に暮れているのかは、わからない。この老人はだれだろう。

中の連では、天と地の間の、この地上の情景を歌っている。

最後の連の第1行の「それらのもの」が何を指すのか、はっきりしない。第1連と第2連にあげられたものたちと考えることは、できる。しかし、それらがbrechen、砕けるとは、どういうことなのかという問いは残る。垂直に成長せずに、途中で折れてしまうということなのか、そのように理解することはできる。

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