2015年9月19日土曜日

Über Nacht(徹宵):第37週 by Elisabeth Borchers(1926~2013)


Über Nacht(徹宵):第37週 by Elisabeth Borchers1926~2013    


【原文】

Über Nacht
um dich her
in allen Farben
sind Rosen gewachsen,
über die schwarze
werf ich schnell einen Schatten.
Sieh nur wie schön,
und jedes Blatt
so groß wie ein kleines Gedicht.


【散文訳】

徹宵
お前の周りで
総ての色をして
薔薇たちが成長した
黒い薔薇の上に
わたしは、急いで、一つの影を投げる
ただ、どんなに美しいかだけを見よ
そして、一つ一つの葉が
小さな詩のやうに大きいといふことをだけを見よ。


【解釈と鑑賞】


この詩人は、ドイツの女流詩人です。


このWikipediaを読みますと、インゼルやズーアカンプといふ有名なドイツの出版社の編集者でもあつたことがわかります。

またフランス語にも堪能で、Pierre Jean Jouveの『Paulina』( 1880)を翻訳してゐます。

最後の行に、

小さな詩のやうに大きいといふことをだけを見よ。

といふ「大きい」と訳したドイツ語のgroßには、偉大なといふ意味もありますので、言葉の意味が掛け合わされてゐると解することもできます。しかし、小さな詩とありますので、大きな葉といふことでありませう。

また、

黒い薔薇の上に
わたしは、急いで、一つの影を投げる

と訳した「黒い薔薇」は、一本の薔薇であつて、そこに咲いてゐる総ての薔薇ではありません。ある特定の、この話者の選んだ一つの、夜の薔薇に影を投げるのです。

黒い薔薇に影を投げるとは一体何をいつてゐるのでせうか。

黒い薔薇を更に一層黒いものとなし、夜の更に夜の影の中に其の黒い薔薇を措くことになります。

そのやうな薔薇、黒にあつて黒になつてしまひ、普通の人の眼には、また夜眼には見えなくなつてしまつた薔薇をみることは、一つ一つの葉が/小さな詩のやうに大きいといふことをだけを見」るためにみるのであり、それはまた、そのやうに在る葉一枚一枚が「ただ、どんなに美しいかだけを見」ることでもあるのです。



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