2015年5月23日土曜日

【Eichendorfの詩118】 Sonette(ソネット) 3


Eichendorfの詩118 Sonette(ソネット) 
  

【原文】
Es will die Zeit mit ihrem Schutz verdecken
Den hellen Quell, der meiner Brust entsprungen,
Umsonst Gebete Himmelan geschwungen,
Sie mögen nicht das Ohr der Gnade wecken.

So lass die Nacht die grausen Flügel strecken,
Nur immerzu, mein tapfres Schiff gedrungen!
Wer einmal mit den Wogen hat gerungen,
Fühlt sich das Herz gehoben in den Schrecken.

Schiesst zu, trefft, Pfeile, die durchs Dunkel schwirren!
Ruhvoll um Klippen ueberm tueck'schen Grunde
Lenk ich mein Schiff, wohin die Sterne winken.

Mag dann der Steuermann nach langem Irren,
Rasch ziehend alle Pfeile aus der Wunde,
Tot an der Heimat Küste niedersinken!


【散文訳】
時間は、その保護によつて覆い隠す
明朗なる源泉を、わたしの胸から湧き出す源泉を
無償で祈りを天に向かつて振り上げた其の源泉を
祈りは、恩寵の耳を覚めさせてはならないのだ。

さて、かうして、夜をして恐ろしい双の翼を伸ばしめよ
只々どこまでも、わたしの勇敢な船は突き進んだ
一度でも大波と闘つた者は
心臓が高鳴つて驚き入るのを感じるものだ。

撃(う)て、狙つて当てろ、矢といふ矢は、暗闇を貫いて音立てて飛ぶ其の数々の矢を!
静かに、陰険な、悪意ある大地を越えてある断崖絶壁を巡って
わたしは、わたしの船を操縦する、星々の瞬く方向へと。

そうすればこそ、操舵士は、長いあゐだ道に迷った挙句に
急いで総ての矢という矢を、傷の中から引き抜きながら
故郷の岸辺で沈んで、死ぬがいいのだ。


【解釈と鑑賞】

A何某に寄せると題した詩の三つ目のソネットです。

第一連では、自分の詩作の源泉は、時間が守護してくれてゐると歌つています。

さうして、恩寵の耳を覚ましてはならぬというのは、神の恩寵すらさへも期待してはならぬといふ意味でありませう。

さうして、やはり詩作は夜の仕事であるといふのが第二連です。繰り返してさうであるやうに、アイヒェンドルフは自分の乗ってゐる器(乗り物)を船に譬えて表します。

さうして、それは矢を番(つが)へて撃つやうな戦ひだといふのです。

第四連の操舵士とは、詩人自身のことでありませう。


傷の中からすべての矢を引き抜くとは、その戦闘の激しさをいひ、何物をも、とりわけ死をも恐れぬ詩人のこころを表してをります。

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