2015年5月17日日曜日

【Eichendorfの詩116】 Sonette(ソネット) A何某に


Eichendorfの詩116 Sonette(ソネット)  A何某に
  

【原文】
Die Klugen, die nach Gott nicht wollten fragen,
Den heil'gen Kampf gern irdisch möchten schlichten,
Zum Tod kein Herz, nicht Lieb, sich aufzurichten,
Verzehren sich nur selbst in eitlen Klagen.

Sind alle eure Schiffe denn zerschlagen:
Sieht man die heil'ge Flagge dich aufrichten,
Vom Liebessturm, der jene mußt vernichten,
Dein junges Schiff siegreich hinweggetragen.

Südwinde spielen lau um Laut und Locken,
Im Morgenrot des Hutes Federn schwanken,
Und Gottes Atem macht die Segel schwellen.

Wen noch die alten Heimatklänge locken,
Dem füllt der Segel wie der Töne Schwellen
Die Brust mit jungen, ewigen Gedanken.



【散文訳】

神がゐるのかと問はうとは思はぬ聡明なひとたちは
神聖なる戦ひを戦ひ、よろこんで此の地上を平定したいと思つてをり
死に臨んでは、自らの元気を取り戻す心を、そのやうな愛を、
虚しいの嘆きの中でのみ、衰弱することはないのだ。

みな御前たちの船は、従ひ、打ち砕かれてしまつたのだ、即ち、
神聖なる旗がお前をして元気を取り戻させるのを、ひとは目にするのであり
その旗を絶滅させずにはをかない愛の嵐から
お前の若い船が、圧倒的な勝利を博して、運び去られるのを目にするのだから。

南の風が、音と誘いを巡つて、なごやかに遊んでゐる
光の赤い光の中で、帽子の羽根が揺れてゐる
さうして、神の息吹が、数々の帆を一杯に膨らませてゐる。

懐かしい故郷の数々の響きが依然として誘つてゐる者
この者には、数々の帆の、また同様に数々の音の響きが膨れ上がり、それが
若く、永遠の思想を以つて、その胸を満たすのだ。


【解釈と鑑賞】

A何某に寄せると題した詩の最初のソネットです。

この人物が女であるか男であるかは不明です。しかし、このような詩を書かしめる力を持つてゐる人間であつたのでありませう。

二人の共有した此の世界、この詩境を味はうことで十分ではないかと思ひます。


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