【Eichendorfの詩 56】Lass das Trauern(悲しむことを止めよ)
【原文】
Lass, mein Herz, das bange Trauern
Um vergangnes Erdenglueck,
Ach, von diesen Felsenmauern
Schweifet nur umsonst der Blick.
Sind denn alle fortgegangen:
Jugend, Sang und Frühlingslust?
Lassen scheidend, nur Verlangen
Einsam mir in meiner Brust?
Voeglein hoch in Lüften reisen,
Schiffe fahren auf der See,
Ihre Segel, ihre Weisen
Mehren nur des Herzens Weh.
Ist vorbei das bunte Ziehen,
Lustig über Berg und Kluft,
Wenn die Bilder wechselnd fliehen,
Waldhorn immer weiterruft?
Soll die Lieb auf sonn'gen Matten
Nicht mehr baun ihr prächtig Zelt,
Übergolden Wald und Schatten
Und die weite, schöne Welt?―
Lass das Bangen, lass das Trauern,
Helle wieder nur den Blick!
Fern von dieser Felsen Mauern
Blüht dir noch gar manches Glück!
【散文訳】
わたしのこころよ、不安に悲しむことを止めよ
過ぎ去った地上の幸福の周囲を巡って悲しむことは
ああ、この岩の壁たちから
視線は、ただ無駄に漂っているのだ。
それでは、すべてのひとびとはみな、立ち去って、先へと行ってしまったのだろうか:
青春、歌、そして、春の歓びは?
きっぱりと止めて、欲するだけをせよというのか
孤独にわたしの胸の内で?
小鳥は、高く、空を旅する
船たちは、海を行く
その帆、その様子は
ただこころの悲しみ(傷み)を増幅するだけだ。
既に、あの色とりどりに行く事は、終ったのだろうか?
陽気に、山や谷を越えて
もし形象という形象が、無常に逃げて行くのならば
森の笛は、いつまでも、更に呼び続けているだろうか?
愛は、陽の光のよく当たった牧場で
もはや、その壮麗なテントを張ることは叶わないのだろうか?
森と影たちを黄金に塗ることは
そして、遥かな、美しい世界を塗ることは?
不安にすることを止めよ、悲しむことを止めよ
明るく再び、ただ見る事のみを止めよ!
これらの岩の壁たちから遠く離れて
お前には、まだ幾多の幸せが花咲くのだから!
【解釈と鑑賞】
第1連の、
ああ、この岩の壁たちから
視線は、ただ無駄に漂っているのだ。
と、最後の連の
明るく再び、ただ見る事のみを止めよ!
これらの岩の壁たちから遠く離れて
お前には、まだ幾多の幸せが花咲くのだから!
とは、お互いに呼応、照応しております。
このふたつの連の間にある詩句を通って、最初の視線が何か朦朧としている状態から、きっぱりと決心をして、積極的に離れて行くというように、詩の内容が変化して、明るい方へ(Helle wieder―明るく再び)と向かって行く結末になっています。
こうして、この詩を読むと、やはり、アイヒェンドルフとい詩人の特徴は、改めて挙げてみると、
1。喪失(青春、歌、春の)
2。喪失の場所から離れないこと、そこへ回帰すること。
3。世俗的な幸せへの全き断念と諦念
4。森、狩り、笛の音
5。詩人の孤独
と、このようになるでしょう。
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