2012年6月17日日曜日

第26週:Regen in der Daemmerung (黄昏の中の雨) by Hugo von Hofmannstahl (1874 - 1929)



第26週:Regen in der Daemmerung (黄昏の中の雨) by Hugo von Hofmannstahl (1874 - 1929) 

【原文】

Regen in der Daemmerung

Der wandernde Wind auf den Wegen
War angefuellt mit suessem Laut,
Der daemmernde rieselnde Regen
War mit Verlangen feucht betaut.

Das rinnende rauschende Wasser
Berauschte verwirrend die Stimmen
Der Träume, die blasser und blasser
Im schwebenden Nebel verschwimmen.

Der Wind in den wehenden Weiden,
Am Wasser der wandernde Wind
Berauschte die sehnenden Leiden,
Die in der Dämmerung sind.

Der Weg im daemmernden Wehen,
Er führte zu keinem Ziel
Doch war er gut zu gehen,
Im Regen, der rieselnd fiel.


【散文訳】

黄昏の中の雨

道々を放浪している風は
甘い音に満たされていた
黄昏れる、さらさらと降る雨は
欲望に湿って濡れていた

迸(ほとばし)り、潺湲(せんかん)と流れる水は
浮かんでいる霧の中に
より青白く、より青白くと融解している夢の声を
混乱させながら、陶然とさせた

吹くに任せている枝垂れ柳の風は
水辺で放浪している風は
黄昏の中にある憧憬する苦しみを
陶然とさせた

黄昏れる風のそよぎの中にある道
この道は、どこにも行き着かなかった
が、しかし、行くに値する道であった
さらさらと落ち来たる雨の降る中を


【解釈と鑑賞】

これは、フーゴー・フォン・ホーフマンスタールの詩です。

この詩人も、文学史に名のある詩人です。

わたしは、20代の始めに、この詩人の美しい散文を読んだ記憶があります。言葉が、本当に美しい。

この詩人の日本語のWikipediaがありました。日本にもこの詩人のファンがいるものと思われます。

http://ja.wikipedia.org/wiki/フーゴ・フォン・ホーフマンスタール

この詩は、叙景の詩でもあり、しかし同時に叙情詩でもあり、更に且つまた、もっとその景色の奥に何かを秘めて、訴求する詩でもあります。

連と連は、それぞれの連に使用している語で関連を持たせられています。それがわかるように、同じ語には、同じ訳語を当てました。

Daemmering、デメルング、twilight、黄昏、というだけで、もうひとつの世界です。

そこに雨が降っている。

第2連で、

迸(ほとばし)り、潺湲(せんかん)と流れる水は
浮かんでいる霧の中に
より青白く、より青白く融解している夢の声を
混乱させながら、陶然とさせた

とある、流れる水が混乱させながらというところは、水の音が夢の声の邪魔をするという意味です。

夢の声に水音が混じって響くのでしょう。

全ての時制(tense)が過去形で歌われているので、この詩を過去に起きた、何か非常に懐かしいものとなしています。




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