2016年5月31日火曜日

31. MAI:世界禁煙の日の詩:Der Zigarette Ende(煙草の最後)by Kurt Schwitters

31. MAI:世界禁煙の日の詩:Der Zigarette Ende(煙草の最後)by  Kurt Schwitters



【原文】

Die Zigarette lag im Gras,
Zertreten und zu Tode wund
Der Wind war kalt, der Boden naß
Doch brennend heiss ihr roter Mund.

Ein Leuchtwurm kam herabgeflogen
Und fühlte stark sich angezogen
Er dachte sich, ein schöner Stern
Wear’ abgerutscht vom Himmelszelt

Zu loben unsern güt’gen Herrn
In dieser bösen Sündenwelt
Jedoch im letzten Todeskampfe
Verglühte sie im eigenen Dampfe.

Da sagte er: 》Dem Herrn zum Gruß,
Ich schätze schöne Dinge sehr
Nimm meinen heißen Glühwurm-Kuss《,
Doch sie, sie setzte sich zu Wehr.

Und er verbrannte ohn’ Erbarmen
In ihren heißen Liebesarmen.


【散文訳】

煙草が草むらに横たはつてゐた
踏み潰されて、傷ついて死んでゐた
風は冷たく、地面は濡れてゐた
しかし、その赤い口は、燃えて熱かった。

蛍が飛んでやつて来た
そして、強く惹かれて
内心かう思つた、美しい星が
天蓋から滑り落ちてきたのだ

我らが善き主を褒め称へることだ
この悪の罪深き世界の中で
しかし、最後の死を賭けた戦闘の中で
煙草は、自分固有の煙の中で、次第に冷えて行つた。

そこで、蛍は言つた。「主によろしく、
わたしは、美しいものたちを非常に評価するのだから
わたしの熱い灼熱虫の接吻を受けるがいい」
しかし、煙草は抗(あらが)つた。

そして、蛍は、無慈悲にも、焼け死んでしまつた
煙草の熱い愛の腕(かいな)の中で。


【解釈と鑑賞】

ドイツの詩人です。

日本語のWikiです:

英語のWikiです:

日本語のWikiによれば、

クルト・シュヴィッタース(Kurt Schwitters, 1887年6月20日 ハノーファー - 1948年1月8日 ケンダル (en))は、ドイツの芸術家・画家。全名はクルト・ヘルマン・エドゥアルド・カール・ユリウス・シュヴィッタース(Kurt Hermann Eduard Karl Julius Schwitters)。

シュヴィッタースはダダイスム、構成主義、シュルレアリスムなど近代美術の様々な芸術運動で活躍した。また絵画以外にも詩、音響、彫刻、グラフィックデザイン、タイポグラフィ、パフォーマンスなど様々な手法を用いている。

最も有名な作品群は、廃物などを利用したコラージュ「メルツ絵画」であるが、その他にもインスタレーションの先駆けと言える「メルツ建築」(メルツバウ、Merzbau)、サウンドアートの先駆けと言える音響詩「ウルソナタ」(ウアソナタ、Ursonate)などを手がけた。

絵画の才も豊かな作家です。幾つかを掲げます。最初のは、多分コラージュである「メルツ絵画」の一つと思はれます。



今後は、明るいものをもう一つ。



世界禁煙の日と訳しましたが、正確には、Weltennichtrauchertagですので、世界非喫煙者の日と訳すべきところですが、前者の方が通りがよからうと思ひましたので、その訳としてあります。

註釈不要の詩でありませう。

「主によろしく、
わたしは、美しいものたちを非常に評価するのだから
わたしの熱い灼熱虫の接吻を受けるがいい」

といふところは、おそらくは、教会での神父や牧師の説教の調子なのでありませう。これも風刺の効いたParodieになつてゐるのだと思ひます。謂はば、聖書にあるやうな声調で、厳かにGodの宣(のた)まふ調子です。

「灼熱虫」と訳しましたが、これは造語ではなく、ドイツ語の正しい言葉で、ツチボタルと和語で呼ばれてをります。

この詩人は喫煙者であつたのか、非喫煙者であつたものか?

わたしは、詩の調子から後者だと思ひますが、あなたは如何?








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