第21週:Giersch(イワミツバ)by Jan Wagner(1971 - )
ライプツィッヒの本の見本市(2015)にて
【原文】
nicht zu unterschätzen: der giersch
mit dem begehren schon im namen - darum
die blüten, die so schwebend weiß sind, keusch
wie ein tyrannentraum.
kehrt stets zurück wie eine alte schuld,
schickt seine Kassiber
durchs dunkel unterm rasen, unterm Feld,
bis irgendwo erneut ein weißes wider-
stands nest emoporschießt. hinter der garage,
beim knirschenden kies, der Kirsche: giersch
als schäumen, als gischt, der ohne ein geräusch
geschieht, bis hoch zum giebel kriecht, bis giersch
schier überall spriesst, im ganzen garten giersch
sich über giersch schriebt, ihn verschlingt mit nichts als giersch.
【散文訳】
過小評価しないことだ、つまりは、イワミツバだ
熱望してゐる、もう既にその名前からしてーだから
花々があるのだ、かくも浮遊しながら白い花が、純潔な
暴君の夢のやうに
古い罪のやうに、絶えず戻つて来て、
(囚人たちが監獄の内外で秘密にやり取りする)罪人の暗号を送るのだ
芝生の下の、野原の下の闇を通じて
どこかで、新たに、白い反抗の
巣が、ぐんぐんと成長するまで。ガレージの後ろで
ギシギシと音立てる砂利のところで、教会の後ろで、つまりは、イワミツバだ
泡立つ名前であり、泡立つ海の水の名前であるのに、一つも音を立てないイワミツバだ
高く破風屋根に這いのぼるまで、イワミツバが
斜めに至るところに芽を吹くまで、庭全体にイワミツバが
イワミツバ同士が押し合ひへし合ひして、庭をイワミツバだけで飲み込むまで、起こるのだ。
【解釈と鑑賞】
この詩人は、ドイツの詩人です。
ドイツ語のWikiです:
イワミツバのWikiの写真と説明です:
「イワミツバ (Aegopodium podagraria) は日陰に生えるセリ科の草本の一つ。
春の柔かい葉はホウレンソウに似ていて、食用にされる。また痛風や関節リウマチの治療用にも用いられる。古代ローマによってイングランドに、修道士によって北ヨーロッパに伝えられたと言われている。
地下の根で急速に地上の広い範囲に広がるため、いくつかの地域ではこの植物では最悪の雑草と見なされている。変種は観葉植物として育てられる。またチョウ目の昆虫の幼虫の餌となっている。」(https://ja.wikipedia.org/wiki/イワミツバ)
実際に生えてゐると、こんな風に見えます。
この植物は庭にあって、繁茂するのでせう。
このイワミツバといふ和名は、ドイツ語ではGiersch、ギールシュと発音されて、第1連にあるやうに「熱望してゐる」感じが、他の類似の欲望の言葉を連想させて、如何にもそんな感じが、するのです。
イワミツバと訳した言葉を皆ギールシュに置き換えて再度読んでみてください。その「暴君の夢のやう」と形容された感じが伝はるのではないかと思ひます。
このやうなギールシュの感じを出すために、テキストではギールシュといふ語がみな緑色になつてをりましたので、同様に日本語の世界でも緑色にしました。
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