2014年11月22日土曜日

【西東詩集96】 Vollmondnacht(満月の夜)



【西東詩集96】 Vollmondnacht(満月の夜)


【原文】

HERRIN! sag’ was heiss das Flüstern?
Was bewegt dir leis’ die Lippen?
Lispelst immer vor dich hin,
Lieblicher als Weines Nippen!
Denkst du deinen Mundgeschwistern
Noch ein Pärchen herzuziehen?
  Ich will küssen! Küssen! sagt ich.

Schau! Im zweifelhaften Dunkel
Glühen blühend alle Zweige,
Nieder spielet Stern auf Stern,
Und, smaragden, durchs Gesträuche
Tausendfältiger Karfunkel;
Doch dein Geist ist allem fern.
  Ich will küssen! Küssen! sagt ich.

Dein Geliebter, fern, erprobet
Gleicherweis’ im Sauersüßen,
Fühlt ein unglückseliges Glück.
Euch im Vollmond zu begrüßen
Habt ihr heilig angelobt,
Dieses ist der Augenblick.
  Ich will küssen! Küssen! sagt ich.


【散文訳】


ご主人さま、囁(ささやき)とは何を意味するのかを教えてくれ
何が、お前の唇(くちびる)を動かすのかを
お前は、いつもひとりごちて囁いている
葡萄酒の微睡(まどろ)みよりも愛らしく!
お前は、お前の口の姉妹に
まだ、相思相愛の可愛らしい一対の男女を連れてくることを考えているのか?
 》わたしは接吻したい!接吻!と、わたしは言っているのだ。《

見よ!疑はしく不確かな闇の中に
花咲いて、すべての枝が輝いている
下方では、星が次から次へと遊んでいる
そして、緑玉(エメラルド)が、叢林を通って
幾千もの層をなす石榴(ざくろ)石が。
しかし、お前の精神は、すべてから遥か遠くにあるのだ。
 》わたしは接吻したい!接吻!と、わたしは言っているのだ。《

お前の愛する者(男)は、遠く遥かにいて、試されていて
同様に、酸っぱくも甘いものの中にいて
不幸にも至福なる幸福を感じている。
お前たちに、満月の中で挨拶することを
お前たちは、神聖に称揚した
これが、その瞬間なのだ。
 》わたしは接吻したい!接吻!と、わたしは言っているのだ。《



【解釈と鑑賞】


第1連の「お前の口の姉妹に」とは、ズーイカの両の唇のことを言っているのです。


お前は、お前の口の姉妹に
まだ、相思相愛の可愛らしい一対の男女を連れてくることを考えているのか?

とは、この一組の恋人のことをその唇に載せて話すことを言っているのでしょう。

それを、この詩を歌っている話者たる男が、女主人よとまで言って、第1連の第1行で呼びかけているのです。

是非、そうしてくれ、この一組の恋人のことを口にしてくれ、何故ならば、

 》わたしは接吻したい!接吻!と、わたしは言っているのだ。《

というのです。

この一行は、各連で繰り返されて、読むたびに、男の恋情の強さが深まるように読むことになります。

この満月という題名の意味は、第3連で読者に明かされます。

互いに離れていることに在るこの男の恋人が、幾つもの相反する感情を覚えていることを、ここでは歌い、そうして、最後には、その至福の瞬間、即ち接吻の瞬間を迎えるそのときが、満月の月の煌々と照っている、その夜だというのです。

この最後の連では、話者である者は、一対の男女の外に出ていて、外からこの二人を歌っています。

これが、詩を歌うことの、自由自在、融通無碍、70歳を超えてこのような詩を書くゲーテの境地なのでしょう。





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