【西東詩集3】Segenpfaender(祝福を担保するもの)
【原文】
Segenpfaender
Talisman in Carneol
Gläubigen bringt er Glück und Wohl;
Steht er gar auf Onyx Grunde,
Küss ihn mit geweihtem Munde!
Alles Uebel treibt er fort,
Schützet dich und schützt den Ort:
Wenn das eingegrabne Wort
Allahs Namen rein verkuendet,
Dich zu Lieb' und Tat entzündet.
Und besonders werden Frauen
Sich am Talisman erbauen.
Amulette sind dergleichen
Auf Papier geschriebne Zeichen;
Doch man ist nicht im Gedränge
Wie auf edlen Steines Enge,
Und vergönnt ist frommen Seelen
Laengre Verse hier zu waehlen.
Maenner haengen die Papiere
Gläubig um, als Skapuliere.
Die Inschrift aber hat nichts hinter sich,
Sie ist sie selbst, und muss dir alles sagen,
Was hinterdrein, mit redlichem Behagen,
Du gerne sagst: Ich sag' es! Ich!
Doch Abraxas bring ich selten!
Hier soll meist das Fratzenhafte,
Das ein düstrer Wahnsinn schaffte,
Für das Allerhöchste gelten.
Sag' ich euch absurde Dinge,
Denkt, dass ich Abraxas bringe.
Ein Siegelring ist schwer zu zeichen,
Den hoechsten Sinn im engsten Raum;
Doch weisst du hier ein Echtes anzueignen,
Gegraben steht das Wort, du denkst es kaum.
【散文訳】
祝福を担保するもの
紅玉髄の石の中にある、タリスマンと呼ばれる魔除けの護符
これは、幸せと繁栄を信ずる者に齎す
この護符は、それに、縞瑪瑙の石の土台の上にある
この護符に、清められた唇で口づけせよ
全ての悪を、この護符は追い払い
お前を護り、そしてその場所を守る
彫られた言葉がアラーの名前を純粋に告げる度に
お前に愛と行いへの火を付ける。
そして、特にご婦人方は
護符によって、信仰心を深めることであろう。
アムレットと呼ばれる護符は、同様の
紙に書かれた印(しるし)だ
しかし、宝石の狭い石の上のようには
犇めき合ってはいない
そして、信心深い魂にとっては恵まれていることには
より長い詩行を、ここでは選択することができるのだ
男達は、紙を、スカプラリオとして、信心深く肩に掛ける。
銘は、しかし、その背後には何も持っていない
銘はそれ自体銘であり、そしてお前に
その背後にあって、誠実なこころの愉快を以て
お前が喜んでこのように言うすべてを言わなければならない
即ち、わたしがそれを言うのだ、それを言っているのはわたしだ!
しかし、わたしが、アブラクサスという名前の護符を持って来ることは稀だ
この護符は、多くの場合、暗い狂気がつくった
奇怪な悪鬼風のものが、最高のものと見なされている。
お前達に馬鹿げたことを言はう
わたしがアブラクサスを持って来ることを考えてみよ
印章指環は、描くことが難しい
狭い空間の中にあるその最高の意味を
しかし、お前は、この指環で本当のものを会得することができる
彫られているのはその言葉だが、お前にはほとんど考えが及ばない
【解釈】
これは、魔除けの護符を歌った詩です。
護符と、それの持つ霊力、霊験を歌っています。
各連の最初にその護符の名前が挙げられていますが、それらは皆、原文では斜字体で書かれています。
第1連は、紅玉髄という、美しい赤い色の石です。この石におまじないの言葉が、魔除けの言葉が彫られているのでしょう。
それがどのような石であるのかは、今はGoogleの画像検索で容易に、その写真を見ることができます。
第2連は、紙でできた護符です。この紙の上に魔除けの言葉が書かれているのでしょう。
そうして、それをカソリックの修道士が肩から前後に掛ける外衣(スカプラリオ)のように掛けている。
その文字は、宝石の上に書くのとは違って、余裕がある。
第3連は、護符に刻されている銘文についての連です。そこに彫られている銘文は、見たものが思っていることそのものをズバリ言い表していて、思わず、それは自分自身が言っている言葉なのだと言ってしまいたい程の言葉なのです。
第4連、最後の連は、印章指環、即ち手紙等を封印するための印を押す指環についての連です。そこに彫られている言葉は、ほとんど考えたこともない言葉、普通にはほとんど理解することのない言葉だと歌われています。これも封印するためのものということから、やはり護符の一種だと考えることができます。
こうして4つの連を読んでみて、題名の意味に戻ると、それぞれの連で歌われている護符が、神の祝福をカタにとるもの、カタにとって、代わりに何かを与えるものということになるでしょう。あるいは、そのような祝福の保証者です。
あるいは、逆に、信者から何かを担保にとって、神の祝福、ご加護を与えるもの(担保するもの)という意味です。
後者の方がよいかも知れません。
詩人が詩集を編纂する上で、詩の順序には、やはり意味があることでしょう。
最初のHegire(ヘジラ)という遁走の詩の次に、魔物や災いから我が身を護る護符を歌ったという順序には、意味のあることだと思います。これは、必要な順序です。
そうして、次の詩は、Freisinn、自由な思想、自由な考えという題の詩であるからには、尚更。
まづ、遁走し、そうして結界を張り、その世界で自由に感じ、自由に考える、そのような順序でこの詩の世界を創造するというゲーテのこころを知ることができます。
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