【西東詩集4】Freisinn(自由の感覚)
【原文】
Freisinn
Lasst mich nur auf meinem Sattel gelten!
Bleibt in euren Huetten, euren Zelten!
Und ich reite froh in alle Ferne,
Ueber meiner Mütze nur die Sterne.
Er hat euch die Gestirne gesetzt
Als Leiter zu Land und See;
Damit ihr euch daran ergötzt,
Stets blickend in die Hoehe.
【散文訳】
自由の感覚
わたしをただわたしの鞍の上にいさせてくれ!
(わたしには、その価値があるのだ)
お前達は、お前達の小屋の中、お前達のテントの中に引っ込んでいろ!
そして、わたしは嬉々としてあらゆる遠くへと駱駝に乗って行くのだ
わたしの帽子の上には、ただ星々のあるばかり
彼は、お前達に星辰、星座を置いた
陸と海の指導者として
それによって、お前達が、星座を享受し、楽しむようにと
いつも高みを眺め遣りながら
【解釈】
前回の護符の詩のところでも述べましたが、最初のHegire(ヘジラ)という遁走の詩の次に、魔物や災いから我が身を護る護符を歌ったという順序には、意味のあることだと思います。これは、ゲーテがこの西東詩集の詩を詠むために必要な順序です。
そうして、今回の詩は、Freisinn、自由な思想、自由な考え、または自由な志操という題の詩であるからには、尚更。
まづ、遁走し、そうして結界を結び、その世界で自由に感じ、自由に考える、そのようなこころを歌うという順序で西東詩集の詩の世界を創造するというゲーテのこころを知ることができます。
この詩は短いですが、誠によい詩です。
最初の連で、駱駝に乗ってと訳しましたが、実は駱駝とは言葉が明示されておりません。何か動物に乗って、自由の天地を駈けるのです。アラビアの世界ですし、テントとあるので、敢えて駱駝として訳しました。
第2連の彼とは、イスラムの神だと思います。この神は、陸と海を行くものの導き手である。
詩を書くためには、結界が必要だということを、この詩は示していると思います。
お前達は、すっこんでいろ!、俺は行きたいところへ行くのだ!というゲーテの啖呵は、実に気持ちのいいものがあります。
その結界は、やはり個人的なだけのものでは全然なく、このように豊かな社会、宗教、宇宙があって成り立つものだということが、しみじみと思われます。
0 件のコメント:
コメントを投稿