2012年7月18日水曜日

【Eichendorfの詩5】Im Walde (森の中で)


【Eichendorfの詩5】Im Walde (森の中で)

【原文】

Im Walde

Es zog eine Hochzeit den Berg entlang,
Ich hoerte die Voegel schlagen,
Da blitzten viel Reiter, das Waldhorn klang,
Das war ein lustiges Jagen!

Und eh ich's gedacht, war alles verhallt,
Die Nacht bedecket die Runde,
Nur von den Bergen noch rauschet der Wald
Und mich schauert im Herzensgrunde.


【散文訳】

森の中で

結婚式の列が山裾に沿って歩んで行く
わたしは鳥達が羽搏く音を聞いた
と、その時、数多くの者達が馬に騎乗して
電光石火の如くに走り去り、狩りの笛が鳴り響いて
それは、陽気な狩りだった!

そして、わたしがそう思う前に、全ての音が消えて行き
夜が酒宴の一座を覆い
山々からのみ、森がまだざわざわと音を立てていた
そして、今、わたしはこころの底からぞっとしているのだ。

【解釈と鑑賞】

アイヒェンドルフらしい詩だと思います。

第1連の最初の一行を読んで、わたしは当時の東ドイツでみた結婚式の馬車の行列を思い出しました。緑の山を背景に、この詩に歌われているように、山裾を粛々と馬車が進むのです。

鳥達が羽搏き、狩人達が騎乗して電光石火に走り去り、狩りの笛の音が響き渡る。そうして、陽気なという形容詞に冠飾された狩り。これは、全くアイヒェンドルフの世界です。

第2連では、それらの物音が消え去り、夜が来る。そうして、山々から森のささやきが聞こえる。

最後の一行は、そのような不思議の世界に対して感じた詩人の感情なのだと思います。この一行だけが過去形ではなく、現在形になって、今のこととして歌われています。

印象の深い、ロマン主義のと言えばロマン主義の、詩だと思います。


しかし、この詩は、何々主義と呼んで事足れりというだけでは済まない何かを含んでいると思います。


それは、一行目から2行目へ、2行目から3行目への飛躍。


それから、最後から2行目から最後の行への飛躍です。


結婚式の馬車の行列(だと仮に致しましょう)の美しい、緑に映えた光景から、わたしが鳥の羽ばたきの音を耳にするという一行を介して、突然狩りの騎乗の者たちの荒々しい光景に変ずる。そうして、それを陽気だというアイヒェンドルフ。


そうして、それは一場の夢のように消え去ることが第2連で歌われ、山々の森のさやぐ音を聞いて、ぞっとするアイヒェンドルフ。


このふたつのアイヒェンドルフに、何かこの詩人の想像力の淵源を見る思いがします。


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