September(9月):第38週 by Guillaume Apolinaire(1880 ~ 1918 )
【原文】
Wie ein schwermütiger Späher
Belausche ich die Nacht und den Tod
【散文訳】
憂鬱な探偵のように
わたしは、夜と死に聞き耳を立てる
【解釈と鑑賞】
この詩人のことを書いたウエッブ頁です。
フランス文学史に有名な詩人です。
原文のドイツ語の挿絵には、
原文のドイツ語の挿絵には、医療機器の画面に映る心臓の脈拍の、黒地に緑色の、上下する鋭い線の波で、次の様な文字を書いています。
und du mein Herz warum pochst du
und du mein Herz warum pochst du
そして、お前、わたしのこころ(心臓)よ、
何故にお前は脈打つのか?
とあるので、これがこの詩の題名であるのかも知れません。
取りあえず、この詩の上辺にある9月という季節の文字を、そのまま今回の題名としました。
探偵と訳した語は、スパイ、spyeということです。
やはり、スパイでは形象は豊かではなく、漢語を使って探偵とした方が、わが日本文学史の歴史の文脈の中では、豊かさを備えると思いましたので、この訳語を選択した次第です。例えば、萩原朔太郎の『殺人事件』という、朔太郎の詩のうちで最もわたしの好きな詩の一つを:
殺人事件
とほい空でぴすとるが鳴る。
またぴすとるが鳴る。
ああ私の探偵は玻璃の衣装をきて、
こひびとの窓からしのびこむ、
床は晶玉、
ゆびとゆびとのあひだから、
まつさをの血がながれてゐる、
かなしい女の屍體のうえで、
つめたいきりぎりすが鳴いてゐる。
しもつけ上旬(はじめ)のある朝、
探偵は玻璃の衣装をきて、
街の十字巷路(よつつぢ)を曲つた。
十字巷路に秋のふんすゐ。
はやひとり探偵はうれひをかんず。
みよ、遠いさびしい大理石の歩道を、
曲者はいつさんにすべつてゆく。
0 件のコメント:
コメントを投稿