2014年9月20日土曜日

September(9月):第38週 by Guillaume Apolinaire(1880 ~ 1918 )


September(9月):第38週 by  Guillaume Apolinaire(1880 ~ 1918 )





【原文】


Wie ein schwermütiger Späher
Belausche ich die Nacht und den Tod



【散文訳】

憂鬱な探偵のように
わたしは、夜と死に聞き耳を立てる



【解釈と鑑賞】


この詩人のことを書いたウエッブ頁です。



フランス文学史に有名な詩人です。

原文のドイツ語の挿絵には、



原文のドイツ語の挿絵には、医療機器の画面に映る心臓の脈拍の、黒地に緑色の、上下する鋭い線の波で、次の様な文字を書いています。

und du mein Herz warum pochst du

そして、お前、わたしのこころ(心臓)よ、
何故にお前は脈打つのか?

とあるので、これがこの詩の題名であるのかも知れません。

取りあえず、この詩の上辺にある9月という季節の文字を、そのまま今回の題名としました。

探偵と訳した語は、スパイ、spyeということです。

やはり、スパイでは形象は豊かではなく、漢語を使って探偵とした方が、わが日本文学史の歴史の文脈の中では、豊かさを備えると思いましたので、この訳語を選択した次第です。例えば、萩原朔太郎の『殺人事件』という、朔太郎の詩のうちで最もわたしの好きな詩の一つを:


殺人事件

とほい空でぴすとるが鳴る。

またぴすとるが鳴る。

ああ私の探偵は玻璃の衣装をきて、

こひびとの窓からしのびこむ、

床は晶玉、

ゆびとゆびとのあひだから、

まつさをの血がながれてゐる、

かなしい女の屍體のうえで、

つめたいきりぎりすが鳴いてゐる。

しもつけ上旬(はじめ)のある朝、

探偵は玻璃の衣装をきて、

街の十字巷路(よつつぢ)を曲つた。

十字巷路に秋のふんすゐ。

はやひとり探偵はうれひをかんず。

みよ、遠いさびしい大理石の歩道を、

曲者はいつさんにすべつてゆく。

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