【西東詩集88】 HatemとSuleikaの詩
【原文】
Hatem
Möge, Wasser, springgend, wallend,
Die Zypressen dir Gesten:
Von Suleika zu Suleika
Ist mein Kommen und mein Gehen.
Suleika
KAUM dass ich dich wieder habe,
Dich mit Kuss und Liedern labe,
Bist du still in dich gekehrte;
Was beengt? und drückt und störet?
【散文訳】
ハーテム
水よ、迸(ほとばし)り、膨れ上がれ
糸杉がお前に告白することを願う
ズーライカからズーライカへと
それが、わたしの往路であり、そしてわたしの復路である。
ズーライカ
わたしがあなたを再び抱くや否や
あなたを口づけと数々の歌で慰め、楽しませましょう
あなたが、静かに、ご自分の中へと還っていらした
何が窮屈にしたのでしょう?そして、何が圧迫し、邪魔したのでしょうか?
【解釈と鑑賞】
水よ、迸(ほとばし)り、膨れ上がれ
というハーテムの詩の第一行は、ズーライカの前の詩の冒頭の二行
陽気な泉の縁(へり)、
数々の水糸の中に遊んでいるその縁に凭(もた)れて
この二行を受けています。
第2行目に、
糸杉がお前に告白することを願う
とあるのは、前のーライカの詩の後半の連に、
ここ、この運河の終りで
並べて置かれた主街道の並木道の終りで
とあり、街道の並木道の樹木が糸杉であるからでしょう。
ハーテムは、この街道の往来をズーライカからズーライカへの往復に譬(たと)えたのです。
このような相聞歌は、お互いに楽しい経験であったことでしょう。実際の70歳を過ぎたゲーテ自身と、10代後半の恋人、マリアンネのこの相聞歌は。直接ではなく、ハーテムとズーライカに変身して、歌えばこそ尚のこと。
最後の一行には、恋人を思う、深切なこころが現れております。