2013年12月22日日曜日

【Eichendorfの詩 52】Die Werber(求婚者達)

【Eichendorfの詩 52】Die Werber(求婚者達)

【原文】

            Die Werber

》O Frühling wie bist du hell!
Ade nun Hof und Haus!《
Und jubelnd auf den Schwellen
Mit fröhlichen Gesellen
Wandert der Dichter aus.

Doch ihre Lieder wecken
Rings leises Zischen bald,
Kobold' aus allen Hecken
Erweisen sich mit Necken
Gar wunderbar im Wald.

Zu Ross, so schön und wüste,
Ein hohes Weib fliegt her,
Behelmt, entbloesst die Brueste,
Ihr Aug weckt wild Gelueste,
Sie heisst Soldatenehr.

Ihr nach aus Felsenritzen
Schaun graue Wichte klein,
Verstreun von ihren Mützen
Dukaten rings, die blitzen
Blutrot ins Land herein.

Der Schlauste gar durchs Blaue
Als Fluegelbuebchen schwirrt,
Führt über Berg und Aue
Daher die schönste Fraue ―
Die macht erste all' verwirrt.

Und der Dichter in dem Toben
Steht einsam auf der Höh,
Die andern sind zerstoben,
So still nun ist's da oben,
Sein Herz tut ihm so weh.

Er hoert der Quellen Gaenge
Durch die Waldeinsamkeit,
Da sinnt er auf Gesaenge,
Die Welt gibt volle Klänge,
Sein Herz wird ihm so weit.

Und jeden Frühling wieder
Von der schoenen Jugendzeit
Singt er vom Berg hernieder,
Und Heimweh fasst die Brueder,
Die in dem Tal zerstreut.


【散文訳】

》おお、春よ、お前は何と明朗なのだ!
さようなら、屋敷よ、そして家よ!《
そして、歓喜の声を上げながら、閾に立って
陽気な仲間と一緒に
詩人は旅に出立する。

しかし、彼等の歌は
周囲に、じきに、微かなしゅっしゅっという音を呼び覚まし
妖魔たちが、あらゆる薮の中から現れて
森の中で全く素晴らしく
水の精と一緒にその姿を示す。

馬に乗って、かくも美しい、そして荒涼として
一人の高貴な婦人がこちらへ飛ぶようにやって来る
兜を被り、ふたつの胸ははだけて
彼女の目は、荒々しく情欲を呼び覚ます
彼女の名前は、兵士の名誉というのだ。

彼女の姿を追って、岩の裂け目の中から
物凄い姿をした小さな妖魔たちが覗き見ている
彼等の硬貨が散乱している
ドゥカーテン金貨が周囲に散乱していて、それらが
血の色の赤に輝いて、その土地の中へと輝き入るのだ。

一番狡賢い輩は、おまけに青い天を通り抜けて
翼を持った若い天使として、ぐるぐる廻り
山や湿地を抜けて行く
そして、むこうから、最も美しい婦人が来る―
彼女は、まづは、皆々を困惑させるのだ。

そして、詩人は、荒れ狂って
孤独に、高みに立っている
その他のものたちは、ちりぢりになっている
こうして、今や、上の方は静かになっている
詩人の心臓は、かくも痛むのだ。

詩人は、泉の流れる道の音を聞く
森の孤独を通り抜けてゆく音を
そこに、歌を思うのだ
世界は、満ちた響きを立て
詩人の心臓は、かくも遠いものとなるのだ。

そして、
春るなるたびに再び
美しい青春時代について
詩人は、山の上から下へと歌を歌い
そして、故郷への懐旧の思いが
谷間に散らばっている
兄弟たちを捕まえるのだ。


【解釈と鑑賞】

第1連は、前のふたつの詩に関係して、これらの詩で歌われているような詩人の財産の喪失を引き継いでいます。

しかし、詩人は、そこに歌われているように、再び陽気な仲間と一緒に旅に出るのです。

そうして、急転直下、第2連では、森の中に小鬼や妖怪、妖魔の出て来るところが、もう既に何かこの詩の異常を感じさせます。

と読み進めると、その後の、第3連の美しい貴婦人の凄惨な、無残でエロスを掻き立てる姿が歌われて、その姿は一寸異様な感銘を読者に与えます。

このあられもない姿の貴婦人の名前は、兵士の名誉というのだという一行の解釈は、その姿からいっても、兵士に陵辱された貴婦人という意味でしょうか。または、兵士の名誉とありますから、この貴婦人は、兵士達の憧憬する貴婦人であるという意味でしょうか。それが、そのような凄惨なエロスを体現している。この第2連は、アイヒェンドルフの性愛と軍隊の間に伏在する、人間の性に関する理解を深く形象化したものだと、わたしは思います。素晴らしい詩行です。

森の中のまき散らされたドゥカーテン金貨という形象(イメージ)は、もう別世界です。

そして、詩人は、第6連では、そのような世界を山の上から見下ろしている。しかし、詩人の心は荒れ狂い、そして孤独である。

第7連では、山の高みにあっても、詩人はやはり森の孤独と心を通わせるもののようです。そのような場所で歌を歌い、詩を歌うと、世界は豊かな音を鳴り響かせますが、しかし、その分、詩人の心臓(こころ)は、詩人から遠ざかるのです。このアイヒェンドルフの、言語と表現された世界に関する倒錯は、この詩人が本物の詩人であることを示しています。信頼するに足る詩人です。

最後の連については、言葉を費やすことを要しないでしょう。

しかし、詩人は何故この詩の題名に求婚者達という名前をつけたのでしょうか。求婚者たちとは、この詩を読みますと、馬に騎乗した高貴な婦人に求愛する兵士達だととることができます。

さて、そうだとして、不思議なことに、また奇妙なことに、そのような兵士達の姿はどこにも具体的には歌われておりません。これがアイヒェンドルフの詩の骨法のひとつであるとしたら、それは後代のリルケの詩に通うものが充分にあるというべきでしょう。












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