【Eichendorfの詩 13】Seemanns Abschied (船乗りの別れ)
【原文】
Seemanns Abschied
Ade, mein Schatz, du mochtet mich nicht,
Ich war dir zu geringe.
Einst wandelst du bei Mondlicht
Und hörst ein Süßes Klingen,
Ein Meerweib singt, die Nacht ist lau,
Die stillen Wolken wandern,
Da denk an mich, 's ist meine Frau,
Nun such dir einen andern!
Ade, ihr Landsknecht, Musketier!
Wir ziehen auf wildem Rosse,
Das bäumt und überschlägt sich schier
Vor manchem Felsenschlosse,
Der Wassermann bei Blitzesschein
Taucht auf in dunklen Naechten,
Der Haifisch schnappt, die Moewen schrein ―
Das ist ein lustiges Fechten!
Streckt nur auf eurer Bärenhaut
Daheim die faulen Glieder,
Gott Vater aus dem Fenster schaut,
Schickt seine Sündflut wieder,
Feldwebel, Reiter, Musketier,
Sie muessen all ersaufen,
Derweil mit frischem Winde wir
Im Parides einlaufen.
【散文訳】
船乗りの別れ
さようなら、我が恋人よ、お前はわたしを好かなかった
わたしは、お前には、余りに卑しい者だった
いつか、お前は月影のもと、散策をし
そして、甘い響きを聞くのだ
人魚は歌い、夜は生温(なまぬる)く、心地よい
静かな雲達が彷徨い
さあ、そうであれば、わたしを思え、それであればこそ、わたしの妻だ
しかし、それも終わったこと、お前の他の男を捜すがよい
さようなら、お前達、兵士よ、銃兵よ!
わたしたちは、後ろ脚で立ち上がり、斜めにでんぐり返る
荒々しい馬に乗って
幾多の岩城の前を行くのだ
水の精が、稲妻の一閃の光りによって
暗い幾多の夜の中で、浮かび出る
鮫が跳ね、鴎が啼き―
それは、陽気な決闘だ!
お前達の熊の肌の上に、ただ
憩うて、その怠惰な四肢を伸ばすがよい
父なる神は、窓から眺めて
ノアの大洪水を再び送り
曹長、騎士、銃兵は
みな、溺れ死ねばよいのだ
その間に、新鮮な風とともに、わたしたちは
天国に走り込むのだ。
【解釈と鑑賞】
題名の通り、船乗りを歌った詩です。
アイヒェンドルフの詩は、全く別様の世界を現出せしめて、読者を魅了します。
何か、恋人も、兵士達も、馬も何もかも、どうでもよいものであって、ただこのように歌われている世界だけが、実は現実であるように思われます。
第2連の、
水の精が、稲妻の一閃の光りによって
暗い幾多の夜の中で、浮かび出る
鮫が跳ね、鴎が啼き―
それは、陽気な決闘だ!
というところは、わたしの気に入った4行です。
鮫と鴎が決闘している。それを陽気だという。
アイヒェンドルフのlustig、陽気なという形容詞は、これ以前の詩にも頻繁で出て来ますが、何か常軌を逸したときに使われて、一寸普通ならば異様なといいたいときに、陽気な、lustigと使っていることに気付きます。
この独特の形容詞の使い方は、これからも出て来ることでしょう。
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