【西東詩集7】Gestaendnis(告白)
【原文】
Gestaendnis
Was ist schwer zu verbergen? Das Feuer!
Denn bei Tage verraets der Rauch,
Bei Nacht die Flamme, das Ungeheuer.
Ferner ist schwer zu verbergen auch
Die Liebe; noch so stille gehegt,
Sie doch gar leicht aus den Augen schlägt.
Am schwersten zu bergen ist ein Gedicht,
Man stellt es untern Scheffel nicht.
Hat es der Dichter frisch gesungen,
So ist er ganz davon durchdrungen,
Hat er es zierlich nett geschrieben,
Will er die ganze Welt solls lieben.
Er liest es jedem froh und laut,
Ob es uns quält, ob es erbaut.
【散文訳】
告白
隠す事の難きものは何か?火だ!
何故ならば、昼には煙で裏切り(それだと知らせ)
夜には炎、即ちこの物凄いもので裏切る。
更に隠す事難きものは、誠に
恋愛の情である。というのも、こころに静かに抱いていても
いとも簡単に眼から、その情が発せられるからである。
最も隠す事難きものは、詩である。
升(ます)の下に隠しておくことができないから。
詩人が新鮮に詩を歌えば
詩人は詩に貫かれ、詩に浸り
詩人が装飾して、愛らしく詩を書けば
詩人は全世界がその詩を愛さずにはいられないことを欲し
詩人はその詩を誰にも彼にも陽気に声高く朗唱するのだ
その詩がわたしたちを苦しめようと、教化善導しようと関わりなく
【解釈と鑑賞】
この詩の題名のGestaendnis、告白とは、勿論恋の告白も含む告白です。
それは、詩の示す通りです。
前の詩の4つの(神の与え賜ふ)恵みという詩、神のご加護のもとに恋人とふたりの生活をする詩人の境涯を歌った詩の後に、この告白という、恋の情と詩の情とを歌い、次の詩、Elemente、(詩や歌を構成する)要素という題名の詩に繋がります。
升の下に隠しておく事ができないという言い廻しは、ドイツ語の慣用句にある言い方で、謙虚であろうとしても、その才能の素晴らしさは隠しおおせることができないという意味です。日本ならば、能ある鷹は爪を隠すという言い方がありますが、その逆の言い方、発想です。
炎を言い換えて、das Ungeheuer、怪物と言い換えるこの譬喩(ひゆ)、隠喩には、文字通りに物凄いものがあります。
ゲーテが持っている恋情の激しさを思わせる。この歳にして。このときゲーテは70歳を迎える、60代の後半であったでせう。
そうして、詩とは、それよりも更に物凄いものだという。隠す事ができないという意味において。