【原文】
Gestern fand ich, räumend eines
längstvergeßnen Schrankes Fä-
cher, Den vom Vater mir vererb-
ten, meinen ersten Reisebecher.
Währenddes ich, leise singend,
reinigt' ihn vom Staub der
Jahre, War's, als höbe mir
ein Bergwind aus der Stirn
die grauen Haare, War's,
als dufteten die Matten,
drein ich schlummernd
lag versunken, War's, als
rauschten alle Quelle,
draus ich wandernd
einst getrunken.
【散文訳】
昨日、わたしは、長い事忘れていた戸棚の
棚を整理してゐて、父がわたしに遺してくれた
わたしの最初の旅行用の杯を見つけた。
その間、わたしは、小声で歌を歌ひながら
長年の埃(ほこり)をほろつて、それを綺麗にしたが、
それは、恰も山岳の風が、わたしの額の中から吹いて来て
わたしの灰色の髪の毛を吹き上げるかの如くであり、それは、
恰もアルプスの牧場(まきば)が香り高く香つて
その中に、わたしは微睡(まどろ)みながら
沈んで、横たわつているかの如くであり、それは、
恰もすべての泉が、さやけき音を立ててゐて
わたしは、その泉から旅に出てゐて、その途上で
嘗てその水を飲んだことがあるかの如くであつた。
【解釈と鑑賞】
この詩人の、Wikipediaです。スイスの詩人です。
日本語のWikipedia:http://goo.gl/6DVFBD
ドイツ語のWikipedia:http://de.wikipedia.org/wiki/Conrad_Ferdinand_Meyer
この詩の行の配列は、上のドイツ語の原文で示したやうに、旅行用の杯の姿をかたどってゐるものです。日本語の訳ではそれは再生できませんでした。
実に、味わひのあるいい詩だと思ひます。
この旅行に持参する杯、コップとはどのやうなものなのかを写真でお見せして、その形象(イメージ)をご覧ください。
古さうなものを選びましたが、今ではプラスチツク製のものが主流のやうです。

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