2015年3月7日土曜日

【西東詩集108】 MATHAL NAMEH BUCH DER PARABELN(寓話の巻)


【西東詩集108】 MATHAL NAMEH   BUCH DER PARABELN(寓話の巻)


【原文】

VOM Himmel sank in wilder Meere Schauer
Ein Tropfe bangend, grässlich schlug die Flut,
Doch lohnte Gott bescheidnen Glaubensmut
Und gab dem Tropfen Kraft und Dauer.
Ihn schloss die stille Muschel ein.
Und nun, zu ewgem Ruhm und Lohne,
Die Perle glänzt an unsers Kaisers Krone
Mit holdem Blick und mildem Schein.

BULBULS Nachtlied, durch die Schauer,
Drang zu Allahs lichtem Throne,
Und dem Wohlgesang zu Lohne
Sperrt’ er sie in goldnen Bauer.
Dieser sind des Menschen Glieder.
Zwar sie fühlet sich beschränket;
Doch wenn sie es recht bedenket,
Singt das Seelchen immer wieder.


【散文訳】

天から来て、荒々しい海の驟雨の中にあって、沈んだのは
一雫(ひとしづく)、恐れながら、無残にも満潮を打つた
しかし、神は、信仰心の謙虚な勇気を褒めた
そして、その雫に力と持続を与へ給ふた。
その雫を、静かな貝殻が、その身の内に閉ぢ込めた。
そして、かうして今や、永遠の名声と褒賞となつて
真珠が、わたしたちの皇帝の王冠に輝いてゐる
高い眼差しと、柔和な輝きを以って。

ブルブル鳥の夜の歌が、驟雨を貫いて
アッラーの輝く玉座に押し寄せた
そして、ブルブル鳥の歌う褒賞への賛歌を遮(さへぎ)つて
アッラーは、その真珠を黄金の鳥籠の中に閉ぢこめた。
鳥籠は、人間の四肢だ。
成程、真珠は限られたやうに感じるが
しかし、雫が正しくそのことを熟慮する度に
小さな魂は、繰り返し繰り返し歌ふのだ。


【解釈と鑑賞】

この詩は、寓話の巻の最初の出だしの、露払ひの詩で、無題です。

この冒頭の詩そのものが、この巻の意図を表してゐます。

天から落ちた一滴の雫が貝殻の中で真珠になり、それが更に黄金の鳥籠の中に入れられて、小さな魂、即ち真珠が、歌を歌ふといふ構図です。

人間の四肢の中に宿る魂を、結局小さな美しい一個の真珠に譬えた 詩だといふことになりませう。




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