2015年3月1日日曜日

【西東詩集107】 Sommernacht(夏の夜)


【西東詩集107】 Sommernacht(夏の夜)


【原文】

             Dichter

NIEDERGANGEN ist die Sonne,
Doch im Westen glänzt es immer;
Wißen möcht ich wohl, wie lange
Dauert noch der goldne Schimmer?

             Schenke

Willst du, Herr, so will ich bleiben,
Warten außer diesen Zelten;
Ist die Nacht des Schimmers Herrin,
Komm ich gleich es dir zu melden.

Denn ich weiß du liebst das Droben,
Das Unendliche zu schauen,
Wenn sie sich einander loben
Jene Feuer in dem Blauen.

Und das hellste will nur sagen:
》Jetzo glänz ich meiner Stelle,
Wollte Gott euch mehr betragen
Glänztet ihr wie ich so hellte.《

Denn vor Gott ist alles herrlich,
Eben weil er ist der Beste,
Und so schläft nun aller Vogel
In dem gross- und kleinen Beste.

Einer spitzt auch wohl gestängelt
Auf den Besten der Zypresse,
Wo der laue Wind ihn gängelt
Bis zu Thaues luftiger Nässe.

Solches hast du mich gelehret
Oder etwas auch dergleichen,
Was ich je dir abgehörtet
Wird dem Herzen nicht entweichen.

Eule will ich, deinetwegen,
Kauzen hier auf der Terrasse,
Bis ich erst des Nordgestirnes
Zwillings- Wendung wohl erpasse.

Und da wird es Mitternacht sein,
Wo du oft zu früh ermunterst,
Und dann wird es eine Pracht sein,
Wenn das All mit mir bewunderst.


                 Dichter

Zwar in diesem Duft und Garten
Tönet Bulbul ganze Nächte,
Doch du könntest lange warten
Bis die Nacht so viel vermöchte.

Denn in dieser Zeit der Flora,
Wie das Griechen-Volk sie nennet,
Die Strohwitwe, die Aurora,
Ist in Hesperus entbrennet.

Sieh dich um! sie kommt! wie schnelle!
Ueber Blumenfelds Gelänge! -
Hüben hell und drüben helle,
Ja die Nacht kommt ins Gedränge.

Und auf roten leichten Sohlen
Ihn, der mit der Sonne entlaufen,
Eilt sie irrig einzuholen;
Fühlst du nicht ein Liebe-Schnaufen?

Geh nur, lieblichster der Söhne,
Tief ins Innre, schliess die Türen;
Denn sie möchte deine Schöne
Als den Hesperus entführen.


      Der Schenke (schläfrig)

So HAB’ ich endlich von dir erharrt:
In allen Elementen Gottes Gegenwart.
Wie du mir das so lieblich gibst!
Am lieblichsten aber daß du liebst.


                       Hatem

Der schläft recht süß und hat ein Recht zu schlafen.
Du guter Knabe! hast mir eingeschenkt,
Vom Freund und Lehrer, ohne Zwang und Strafen,
So jung vernommen wie der Alte denkt,
Nun aber kommt Gesundheit holder Fülle
Dir in die Glieder dass du dich erneust.
Ich trinke noch, bin aber stille, stille,
Damit du mich erwachend nicht erfreust.


【散文訳】

       詩人

沈んでしまったな、太陽が
しかし、西の方は、相変わらず明るく輝いているぞ
わたしは知りたいのだ、どれ位長く
まだ続くのかな、この黄金の輝きは?

       酌人

旦那、もしお望みならば、わたしはここに留まって
このテントの外で待っていたいと思いますよ
夜が、輝きの女主人になったら
直ぐに旦那のところに来て、報告しますよ。

というのも、旦那があの上のものが好きだと知っているからですよ
無窮のものを見るためにね
もしこの二つ(あの上のものと無窮のもの)が、青の中にあるあの火をお互いに褒め合うならば

そして、最も明るいものが、ただこう言うだけなのさ
》今これから、わたしは私の地位を輝かせるのだ
神が、お前たちをもっと支えたいと思うならば
お前たちは、わたしがこのように明るいのと同様に輝くであろう。《

というのもは、神の御前では全ては素晴らしく、荘厳であり
まさに、神が最善の者であるという理由によって
そういう訳で、このように、こうして今やすべての鳥達が眠っているですから
大きな、そして小さな 最善の中で。

ある者は、実際間違いなく、支柱の棒に取り付けられて尖(とが)る
糸杉の最善最良のものの上で
そこでは、純粋な風が、その者を(手引き紐で幼児に歩行を教えるように)歩き方を教える
その者が、タウエの、風に吹かれる湿気に到るまで

かくなるものを、旦那はわたしに教えて下さった
或いはまた、何かそのようなものを教えて下さった
嘗て旦那から聞いたことは
こころから消え去ることはありませんよ。

わたしは梟(ふくろう)なのですよ、旦那のために、このテラスの上にとまって、うづくまっている梟でいたいのですよ
わたしが、やっと北の空の星辰の
双子座の回転を捕らえるまではね。

そうなれば、それは夜中なのであり
そこ(夜)では、旦那はしばしば余りに早くに人を元気づけ
そうなれば、それは壮麗、豪奢なことになりますよ
これらすべてが、おいらと一緒に人を驚かせるならば。

      詩人

なるほど、この芳香と庭の中には
ブルブル(ペルシャの鳴鳥)の声が、いつも夜通し響いている
しかし、お前は長い間待つがいいのだ
夜がかくも たくさんのことをする力を出すまではな。

というのも、フローラ(花と春の女神)のこの季節の中では
ギリシャ民族がそう(フローラと)呼んだわけだが
藁の未亡人、即ちアウローラ(曙の女神)が
ヘスペルス(宵の明星、金星)の中で燃え尽きるのだからな。

お前の周りを見てみるがいい!アウローラが来るぞ!何という速さだ!
花の野原のその場所一面に!ー
こっちも明るい、あっちも明るい
そうだ、その通りだ、夜が押し籠められている。

そして、赤い軽い足裏で
太陽と一緒に逃げて行ったヘスペルスを
アウローラは、思い違いをして追いつこうと急ぐのだ
お前は、愛の喘ぎを感じないか?

ひたすらに行け、息子の中の最愛の息子よ
深く(居酒屋の)中に入るのだ、扉という扉を閉めるのだ
というのも、アウローラは、ヘスペルスよりもお前の美しさを
誘拐したいからなのだ。


      酌人(眠た気に)

さあ、こうして、やっと、旦那を待ち焦がれていたものを手に入れたってわけでさあ
神の現在する其のあらゆる要素の中にいてね。
旦那が、それを、このおいらに、何と愛らしく与えてくださることか!
最も愛らしいのは、しかし、旦那が愛するということなんですよ。

      ハーテム

こいつは、まさしく甘く眠っていて、そうして、眠る権利があるというものだ
お前、善き子供よ!お前はわたしに酒をついでくれたのだったな
友と教師から、強制もなく罰もなく
お前は、老人が考えるように斯くも若いと知ったのだが
さて、しかし、こうなってみると、優美な充実たる健康がやって来る
お前の四肢の中にな、そうすると、お前は新しくなるのだ
わたしは、まだ酒を飲むぞ、しかし、静かに、静かにしているのだ
お前が覚醒しながら、わたしを喜ばせることのないようにな。


【解釈と鑑賞】

この詩を読むには、この詩人の酒の飲んでいる居酒屋の前には庭園があると思って下さい。そうしてこの庭の中には、夜鳴く、他の詩にも出てきたあのブルブルという鳥が鳴いているのです。

そうして、日がな一日詩人はこのペルシャの居酒屋で酒を飲み、飲み疲れてうつらうつらしている。眠っているのか起きているのか。そうして、そこに酌人がいる。そのような情景を思って下さい。

さて、昼が終わり、夜が始まる、この間(あわい)の時間についての詩人の言葉で、この長い詩は始まります。

第2連の最後から2行目の、

夜が、輝きの女主人になったら

という此の女主人とあるのは、夜が女性名詞だからです。

第3連の、

あの上のものと無窮のもの

とあるこの言葉の意味は、前者、即ちあの上のものとは、既に到来した夜であり、後者、即ち無窮のものとは、遥か地平線に逃れ行く昼の太陽の残光であろうと思います。

この二つのものが共有する此の間(あわい)の時間の色を、

青の中にあるあの火

とゲーテは歌っているのです。

このような目的のない詩こそ、優美な詩、装飾の詩、言葉の最高の技能、即ち藝術という術たる技能を駆使した作品というべきでありませう。

よい時代など詩人には一度もありません。大切なことは、時代に抗して、トーマス・マンの言葉を借りれば、trotzdem、そうであるにも拘らず、それに打ち勝って、作品をものすることが大切なことなのです。

そのために、この時代のゲーテは、ハーフィスの力を借りたということであり、しかし、その動機以上に、やはりこの東西の混交し、融合した此のドイツ語の詩は素晴らしい。と、そう思います。

今の日本で、このような詩を書く詩人がいるかどうか。この詩を読んで、そう思いました。

この詩が、SAKI NAMEH, DAS SCHENKENBUCH、即ち居酒屋の 巻の最後の詩です。









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