【西東詩集109】 Wunderglaube(奇蹟を起こす信心)
【原文】
ZERBRACH einmal eine schöne Schal
Und wollte schier verzweifeln,
Unart und Übereil zumal
Wünscht ich zu allen Teufeln.
Erst ras’t ich aus, dann weint ich weich
Beim traurigen Scherbelesen,
Das jammerte Gott, er schuf es gleich
So ganz als wie es gewesen.
DIE Perle die der Muschel entrann,
Die schönste, hochgeboren,
Zum Jeweliger, dem guten Mann,
Sprach sie: Ich bin verloren!
Duchbohrst du mich, mein schönes All
Es ist sogleich zerrüttet,
Mit Schwestern muß ich, Fall für Fall,
Zu schlechten sein geküttet.
》Ich denke jetzt nur an Gewinn,
Du muß es mir verzeihen:
Denn wenn ich hier nicht grausam bin,
Wie soll die Schnur sich reihen?《
ICH sah, mit Staunen und Vergnügen,
Eine Pfauenfeder im Koran liegen:
Willkommen an dem heiligen Platz,
Der Erdgebilde höchster Schatz!
An dir wie an des Himmels Sternen
Ist Gottes Größe im Kleinen zu lernen;
Daß er, der Welten überblickt,
Sein Auge hier hat aufgedrückt,
Und so den leichten Flaum geschmückt
Daß Könige kaum unternahmen
Die Pracht des Vogels nachzuahmen.
Bescheiden freue ich dich des Ruhms,
So bist du wert des Heiligtums.
EIN Kaiser hatte zwei Kassiere,
Einen zum Nehmen, einen zum Spenden;
Diesem fiel nur so aus den Händen,
Jener wußte nicht woher zu nehmen.
Der Spendende starb; der Herrscher wußte nicht gleich
Wem das Geber-Amt sei anzuvertrauen,
Und wie man kaum tat um sich schauen,
So war der Nehmer unendlich reich;
Man wußte kaum vor Gold zu leben,
Weil man Einen Tag nichts ausgeben.
Da ward nun erst dem Kaiser klar
Was schuld an allem Unheil war.
Den Zufall wußte er wohl zu schätzen
Nie wieder die Stelle zu besetzen.
ZUM Kessel sprach der neue Topf:
Was hast du einen schwarzen Bauch!
》Das ist bei uns nun Küchgebrauch;
Herbei, herbei du glatter Tropf,
Bald wird dein Stolz sich mindern.
Behält der Henkel ein klar Gesicht,
Darob erhebe du dich nicht,
Besieh nur deinen Hintern.《
ALLE Menschen groß und klein
Spinnen sich ein Gewebe fein,
Wo sie mit ihrer Scheren Spitzen
Gar zierlich in der Mitte sitzen.
Wenn nun darein ein Besen fährt,
Sagen sie es sei unerhört,
Man habe den größten Palast zerstört.
VOM Himmel steigend Jesus bracht
Des Evangeliums ewige Schrift,
Den Jüngern las er sie Tag und Nacht;
Ein göttlich Wort es wirkt und trifft.
Er stieg zurück, nahm wieder mit;
Sie aber hatten gut gefühlt,
Und jeder schrieb, so Schritt vor Schritt,
Wie erst in seinem Sinn behielt,
Verschieden. Es hat nichts zu bedeuten:
Sie hatten nicht gleiche Fähigkeiten;
Doch damit können sich die Christen
Bis zu dem Jüngsten Tage fristen.
【散文訳】
ある時、美しい肩掛けが破れました
そして、私は、全く自暴自棄にならうとしました
特に無作法の起こることと、何でも早く早くと火急に急(せ)かすことを
私は、あらゆる悪魔に向かって願いました。
私は、まづさんざんに暴れて胸をすかし、次に多感に泣きました
悲しく破片を拾っていると
それを神が嘆いて、直ちに旧に復してくれました
かうして、以前と全く同じようになりました。
貝殻からまろび出た真珠は
最も美しく、高貴の生まれの真珠は
宝石商の、善良なる男に向かって
話しかけました:わたしはお終いだ!
お前は、私の美しい宇宙よ、私に穴を開けるのですね
(わたしは)直(ただ)ちに紊乱するのですよ
姉妹の真珠と一緒に、一つ一つ場合を弁(わきま)えながら
しっかりと繋ぎ合せてもらうには、私は余りに拙劣である以外にはないのですから。
》私は、これからは自分の利益のことのみを考えます
お前は、私がそうすることを許さなければならないのです
というのも、もし私がここで不人情ではないとしたら
紐は、どうやって整列したらよいのでしょうか?《
私は見たのです、驚きと満足を以って、
孔雀の羽がコーランの中にあるのを
ようこそ、神聖な場所にいらっしゃいました
地上の創造物の内の最高に美しい宝物(孔雀の羽)よ!
お前(孔雀の羽)に、天の星々にと同様に、お前に
神の偉大は、小さなものの中で学ばれるものだ
神が、数々の世界を眺望し給ふ神が
その目(孔雀の紋様)を、ここに押し当てたのです
そして、かうして軽い和毛(にこげ)を飾ったので
王様達は、鳥の華麗を模倣しようとは
ほとんどしませんでした
謙虚に、私はお前(孔雀の羽)を、その名声の事で喜ばせるのです
かやうに、お前は神聖なる此の場所に値するのです。
ある皇帝が、二人の会計(出納)係を雇っていました
一人は取る係、もう一人はお布施をする係として
後者は、ただ両手の中からのみ落ちるように施し
前者は、どこから取るのかは知りませんでした。
お布施をする係が死にました。主人は
お布施の公務を、誰に委託するものかは直ぐには分かりませんでした
そして、自分の周囲を見回すや
取る係の者が、際限なく豊かになっておりました
この係の者は、黄金を前にして、生きるすべをほとんど知りませんでした
何故ならば、1日たりとも何も支出をしなかったからです。
すると、こうして今や、皇帝にとって明らかになったことは
何が総ての災厄の罪であったかということでした。
決して二度とその地位を占有しないという
偶然の価値を、自分でよく評価することができたのです。
薬缶に、新品の壺がこう言いました:
お前は何という黒い腹をしているんだ!
》それこそ、俺たち薬缶の世間では、台所使いというんだ
だから、だから、お前ピッカピカの阿呆よ
ぢきに、お前の自慢も小さくなって行くのだ。
壺の取っ手は、輝いた顔をしてピカピカだが
その為に、お前は自分を持ち上げられなからう
お前の尻をよくよく見るんだな《
総ての人間たちは、大きい奴も小さい奴も
織物を素敵に織るものだ
そのハサミのとんがった先で
真ん中に座っている場所では、全く優美に。
もしその真ん中で、箒が行き来していたら
人間どもは、そいつは前代未聞だと言うのさ
最大の宮殿を滅茶滅茶にしたのだと言ってね。
天から降りてきながら、イエスは
福音の永遠の文書を持ってきた
イエスよりも若い者たちに、昼も夜もこれを読んで聞かせた
聖なる言葉があり、それが効いて、肯綮に当たる。
イエスは天に戻って行き、再び福音を取って来た
しかし、若い者たちはよく感じて
そして、誰もが、そのように一歩一歩と、書き留(と)めた
まづ自分の心の中で留めておくところに従って
様々に。何が意味があるというものではないのだ。
つまり、若い者達は、同じ能力を持っていなかったのだ
しかし、それによって、キリスト教徒は
最後の審判の日までの命の猶予があり得るのだ。
【解釈と鑑賞】
題名のWunderglaubeというドイツ語は、論理的には、二つの意味があります。
一つは、その信仰の強さや見事な様が奇蹟のやうである場合。まうひとつは、奇蹟を信ずる信仰である場合。
辞書に当たると、後者の訳となりました。
さて、さうだとして、この詩といふよりは詩篇の一つ一つを訳してみると、このWunderglaube、wonder-belief、奇蹟を信ずる信仰というゲーテの名付けた名前は誠に辛辣な名前であることが判ります。
この7つの詩が、すべてwonder-beliefなのだというのがゲーテの意図なのでせう。
このやうに考へて来ると、冒頭に解釈した最初の意味、即ちその信仰の強さや見事な様が奇蹟のやうである信仰といふこの解釈が、しかも辛辣な意味を伴って、あり得るといふことを考えることができます。恰も、料理の隠し味の香辛料のやうに。
この一つ一つの詩をどのように理解をするのかは、全く読者に委ねられてゐるといふのがゲーテの意図ではないでせうか。
しばし、お楽しみあれかし。
【原文】
ZERBRACH einmal eine schöne Schal
Und wollte schier verzweifeln,
Unart und Übereil zumal
Wünscht ich zu allen Teufeln.
Erst ras’t ich aus, dann weint ich weich
Beim traurigen Scherbelesen,
Das jammerte Gott, er schuf es gleich
So ganz als wie es gewesen.
DIE Perle die der Muschel entrann,
Die schönste, hochgeboren,
Zum Jeweliger, dem guten Mann,
Sprach sie: Ich bin verloren!
Duchbohrst du mich, mein schönes All
Es ist sogleich zerrüttet,
Mit Schwestern muß ich, Fall für Fall,
Zu schlechten sein geküttet.
》Ich denke jetzt nur an Gewinn,
Du muß es mir verzeihen:
Denn wenn ich hier nicht grausam bin,
Wie soll die Schnur sich reihen?《
ICH sah, mit Staunen und Vergnügen,
Eine Pfauenfeder im Koran liegen:
Willkommen an dem heiligen Platz,
Der Erdgebilde höchster Schatz!
An dir wie an des Himmels Sternen
Ist Gottes Größe im Kleinen zu lernen;
Daß er, der Welten überblickt,
Sein Auge hier hat aufgedrückt,
Und so den leichten Flaum geschmückt
Daß Könige kaum unternahmen
Die Pracht des Vogels nachzuahmen.
Bescheiden freue ich dich des Ruhms,
So bist du wert des Heiligtums.
EIN Kaiser hatte zwei Kassiere,
Einen zum Nehmen, einen zum Spenden;
Diesem fiel nur so aus den Händen,
Jener wußte nicht woher zu nehmen.
Der Spendende starb; der Herrscher wußte nicht gleich
Wem das Geber-Amt sei anzuvertrauen,
Und wie man kaum tat um sich schauen,
So war der Nehmer unendlich reich;
Man wußte kaum vor Gold zu leben,
Weil man Einen Tag nichts ausgeben.
Da ward nun erst dem Kaiser klar
Was schuld an allem Unheil war.
Den Zufall wußte er wohl zu schätzen
Nie wieder die Stelle zu besetzen.
ZUM Kessel sprach der neue Topf:
Was hast du einen schwarzen Bauch!
》Das ist bei uns nun Küchgebrauch;
Herbei, herbei du glatter Tropf,
Bald wird dein Stolz sich mindern.
Behält der Henkel ein klar Gesicht,
Darob erhebe du dich nicht,
Besieh nur deinen Hintern.《
ALLE Menschen groß und klein
Spinnen sich ein Gewebe fein,
Wo sie mit ihrer Scheren Spitzen
Gar zierlich in der Mitte sitzen.
Wenn nun darein ein Besen fährt,
Sagen sie es sei unerhört,
Man habe den größten Palast zerstört.
VOM Himmel steigend Jesus bracht
Des Evangeliums ewige Schrift,
Den Jüngern las er sie Tag und Nacht;
Ein göttlich Wort es wirkt und trifft.
Er stieg zurück, nahm wieder mit;
Sie aber hatten gut gefühlt,
Und jeder schrieb, so Schritt vor Schritt,
Wie erst in seinem Sinn behielt,
Verschieden. Es hat nichts zu bedeuten:
Sie hatten nicht gleiche Fähigkeiten;
Doch damit können sich die Christen
Bis zu dem Jüngsten Tage fristen.
【散文訳】
ある時、美しい肩掛けが破れました
そして、私は、全く自暴自棄にならうとしました
特に無作法の起こることと、何でも早く早くと火急に急(せ)かすことを
私は、あらゆる悪魔に向かって願いました。
私は、まづさんざんに暴れて胸をすかし、次に多感に泣きました
悲しく破片を拾っていると
それを神が嘆いて、直ちに旧に復してくれました
かうして、以前と全く同じようになりました。
貝殻からまろび出た真珠は
最も美しく、高貴の生まれの真珠は
宝石商の、善良なる男に向かって
話しかけました:わたしはお終いだ!
お前は、私の美しい宇宙よ、私に穴を開けるのですね
(わたしは)直(ただ)ちに紊乱するのですよ
姉妹の真珠と一緒に、一つ一つ場合を弁(わきま)えながら
しっかりと繋ぎ合せてもらうには、私は余りに拙劣である以外にはないのですから。
》私は、これからは自分の利益のことのみを考えます
お前は、私がそうすることを許さなければならないのです
というのも、もし私がここで不人情ではないとしたら
紐は、どうやって整列したらよいのでしょうか?《
私は見たのです、驚きと満足を以って、
孔雀の羽がコーランの中にあるのを
ようこそ、神聖な場所にいらっしゃいました
地上の創造物の内の最高に美しい宝物(孔雀の羽)よ!
お前(孔雀の羽)に、天の星々にと同様に、お前に
神の偉大は、小さなものの中で学ばれるものだ
神が、数々の世界を眺望し給ふ神が
その目(孔雀の紋様)を、ここに押し当てたのです
そして、かうして軽い和毛(にこげ)を飾ったので
王様達は、鳥の華麗を模倣しようとは
ほとんどしませんでした
謙虚に、私はお前(孔雀の羽)を、その名声の事で喜ばせるのです
かやうに、お前は神聖なる此の場所に値するのです。
ある皇帝が、二人の会計(出納)係を雇っていました
一人は取る係、もう一人はお布施をする係として
後者は、ただ両手の中からのみ落ちるように施し
前者は、どこから取るのかは知りませんでした。
お布施をする係が死にました。主人は
お布施の公務を、誰に委託するものかは直ぐには分かりませんでした
そして、自分の周囲を見回すや
取る係の者が、際限なく豊かになっておりました
この係の者は、黄金を前にして、生きるすべをほとんど知りませんでした
何故ならば、1日たりとも何も支出をしなかったからです。
すると、こうして今や、皇帝にとって明らかになったことは
何が総ての災厄の罪であったかということでした。
決して二度とその地位を占有しないという
偶然の価値を、自分でよく評価することができたのです。
薬缶に、新品の壺がこう言いました:
お前は何という黒い腹をしているんだ!
》それこそ、俺たち薬缶の世間では、台所使いというんだ
だから、だから、お前ピッカピカの阿呆よ
ぢきに、お前の自慢も小さくなって行くのだ。
壺の取っ手は、輝いた顔をしてピカピカだが
その為に、お前は自分を持ち上げられなからう
お前の尻をよくよく見るんだな《
総ての人間たちは、大きい奴も小さい奴も
織物を素敵に織るものだ
そのハサミのとんがった先で
真ん中に座っている場所では、全く優美に。
もしその真ん中で、箒が行き来していたら
人間どもは、そいつは前代未聞だと言うのさ
最大の宮殿を滅茶滅茶にしたのだと言ってね。
天から降りてきながら、イエスは
福音の永遠の文書を持ってきた
イエスよりも若い者たちに、昼も夜もこれを読んで聞かせた
聖なる言葉があり、それが効いて、肯綮に当たる。
イエスは天に戻って行き、再び福音を取って来た
しかし、若い者たちはよく感じて
そして、誰もが、そのように一歩一歩と、書き留(と)めた
まづ自分の心の中で留めておくところに従って
様々に。何が意味があるというものではないのだ。
つまり、若い者達は、同じ能力を持っていなかったのだ
しかし、それによって、キリスト教徒は
最後の審判の日までの命の猶予があり得るのだ。
【解釈と鑑賞】
題名のWunderglaubeというドイツ語は、論理的には、二つの意味があります。
一つは、その信仰の強さや見事な様が奇蹟のやうである場合。まうひとつは、奇蹟を信ずる信仰である場合。
辞書に当たると、後者の訳となりました。
さて、さうだとして、この詩といふよりは詩篇の一つ一つを訳してみると、このWunderglaube、wonder-belief、奇蹟を信ずる信仰というゲーテの名付けた名前は誠に辛辣な名前であることが判ります。
この7つの詩が、すべてwonder-beliefなのだというのがゲーテの意図なのでせう。
このやうに考へて来ると、冒頭に解釈した最初の意味、即ちその信仰の強さや見事な様が奇蹟のやうである信仰といふこの解釈が、しかも辛辣な意味を伴って、あり得るといふことを考えることができます。恰も、料理の隠し味の香辛料のやうに。
この一つ一つの詩をどのように理解をするのかは、全く読者に委ねられてゐるといふのがゲーテの意図ではないでせうか。
しばし、お楽しみあれかし。
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