2014年10月18日土曜日

【Eichendorfの詩88】Frisch auf!(しゃきっとせよ!)


【Eichendorfの詩88】Frisch auf!(しゃきっとせよ!)  
  

【原文】

Ich sass am Schreibtisch bleich und krumm,
Es war mir in meinem Kopf ganz dumm
Vor Dichten, wie ich alle die Sachen
Sollte aufs allerbeste machen.
Da guckt am Fenster im Morgenlicht
Durchs Weinlaub ein wunderschönes Gesicht,
Guckt und lacht, kommt ganz herein
Und kramt mir unter den Blättern mein.
Ich, ganz verwundert:》ich sollt dich kennen《-
Sie aber, statt ihren Namen zu nennen:
》Pfui, in dem Schlafrock siehst ja aus
Wie ein verfallenes Schilderhaus!
Willst du denn hier in der Tinte sitzen!
Schau, wie die Felder da draussen blitzen!《
Mir tat’s um die schöne Zeit nur leid.
Drunten aber unter den Bäumen
Stand ein Ross mit funkelnden Zaeumen.
Sie schwang sich lustig mit mir hinauf,
Die Sonne draussen ging eben auf,
Und eh ich mich konnte bedenken und fassen,
Ritten wir rasch durch die stillen Gassen,
Und als wir kamen vor die Stadt,
Das Ross auf einmal zwei Flügel hat,
Mir schauerte es recht durch alle Glieder:
》Mein Gott, ist’s denn schon Frühling wieder?《-
Sie aber wies mir, wie wir so zogen,
Die Länder, die unten vorüberflogen,
Und hoch über dem allerschönsten Wald
Machte sie lächelnd auf einmal halt.
Da sah ich erschrocken zwischen den Bäumen
Meine Heimat unten, wie in Träumen,
Das Schloss, den Garten und die stille Luft,
Die blauen Berge dahinter im Duft,
Und alle die schöne alte Zeit
In der wundersamen Einsamkeit.
Und als ich mich wandte, war ich allein,
Das Ross nur wiehert’ in den Morgen hinein,
Mir aber war’s, als wär ich wieder jung,
Und wusste der Lieder noch genug!


【散文訳】

わたしは、机に座っていた、青ざめて、そして背を屈(かが)めて
わたしの頭は、全く馬鹿になっていて廻らなかった
詩作のことで、わたしが総ての事を最善ものにしなければならないときにはいつもそうであるように
すると、窓辺に、朝の光の中に
葡萄の葉叢(はむら)を通して、ひとつの美しい顔が覗く
覗いて、そして笑い、家の中に遠慮無くずいーっと入ってくる
そして、わたしの書いている用紙の下を掻き廻して探すのは、わたしの顔だ。
わたしは、全く訝しく思って、こう言う:》わたしはお前を知る運命にあったのだ。《
あなたは、しかし、あなたの名前を言う代わりに、こう言うのだ:
》ぷふい、その夜着を着ていると、お前さんは、全く
荒廃した番兵小屋のように見えるぜ!
一体このインク壺の中に座っていたいと思っているとは!
見ろ、野原という野原が、ほら、どんな風に外で煌(きら)めいているのかを!《
わたしには、その素晴らしい時代は、唯々哀しみだった。
あの下には、しかし、木々の下には
一頭の馬が立っていて、火花散る手綱が載っていた
この雌馬は、わたしを乗せて、陽気に上へと飛び上がった
太陽は外にあって、まさに昇っているところだった
そして、わたしが思案し、気を落ち着けることができる前に
わたしたちは、急いで、静かな数々の小路を通って騎行して
そして、町の前にやってきたときに
馬は、突然に、二つの翼を持っていて
わたしは、正(まさ)しくぞっとして、恐怖が四肢を貫いた:
》何ということだ、一体もう、また春が来たというのだろうか?《
馬は、しかし、わたしたちがこのように行くがままに
国々を示し、国々は下方で飛び過ぎて行き、
そして、高く、一番美しい森の上で
馬は、微笑みながら、突然に止まった。
と、わたしは、驚いて、木々の間を見た
わたしの故郷が、下にあって、それは数々の夢の中でのように
城が、庭が、そして静かな空気が
その後ろには、芳香の中の青い山々を
そして、すべての美しい、古く懐かしい時代が
不思議な孤独の中にあるのを見た。
そして、わたしが振り向いたとき、わたしは一人であった
馬は、朝の中へ、唯ひひんと鳴いただけであった
わたしには、しかし、恰もわたしが再び若くなっており
そして、まだ十分に数々の歌を覚えているかの如くに思われた。


【解釈と鑑賞】

このFrisch auf!という題名は、アイヒェンドルフの詩の題名としては、一寸異色である。

しゃきっとしろ!と、まづは訳しましたが、他には、場合によっては、気合を入れて!とか、しっかりせい!とか、気をとり直して!とか、新しい気持ちで!とか、初心に帰ろ!とか、色々な訳が可能でしょう。

この題名が異色であるということと、この詩が、これまでの詩とは異なり、全く連の無い、一息で書いたひとつの長い詩だということが、やはり違っております。

このとき、アイヒェンドルフには何かが起きていたのでしょう。

と、そのように思って、最後まで詩に目を通してみますと、やはり、それはその通りで、子供の頃から親しんで居住したその城のことを歌っているのです。

そして最後の二行は、接続法II式を使っておりますから、この詩を書いた時の現実の詩人は、若くはなく、歌を歌う能力もないということなのです。

このことが、この詩の、これまでの詩とは異なる、特徴となっております。








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