【西東詩集92】 Hochbild(浮き彫り)
【原文】
DIE SONNE, Helios der Griechen,
Fährt prächtig auf der Himmelsbahn,
Gewiss, das Weltall zu besiegen
Blickt er umher, hinab, hinan.
Er sieht die schönste Göttin weinen,
Die Wolkentochter, Himmelskind,
Ihr scheint er nur allein zu scheinen;
Fuer alle heitere Raeume blind
Versenkt er sich in Schmerz und Schauer,
Und häufiger quillt ihr Thraenenguss;
Er sendet Lust in ihre Trauer
Und jeder Perle Kuss auf Kuss.
Nun fühlt sie tief des Blicks Gewalten
Und unverwandt schaut sie hinauf,
Die Perlen wollen sich gestalten:
Denn jede nahm sein Bildnis auf.
Und so, umkränzt von Farbe’ und Bogen,
Erheitert leuchtet ihr Gesicht,
Entgegen kommt er ihr gezogen,
Doch er! doch ach! erreicht sie nicht.
So, nach des Schicksals hartem Lose,
Weichst du mir, Lieblichste, davon,
Und wer ich Helios der grosse
Was nützte mir der Wagenthron?
【散文訳】
太陽、即ちギリシャ人たちのヘリオスは
壮麗に、天の軌道を走る
そう、宇宙に勝利し、我がものとすることは、確かなことだ
ヘリオスは、周囲を眺めやり、下を眺めやり、上を眺めやる
ヘリオスは、最も美しい女神が泣いているのをみる
雲の娘、天国の子供である
女神には、ヘリオスは、ただ一人で輝いているようにみえる
すべての明朗なる数々の空間には盲(めし)いて
ヘリオスは、苦痛と畏怖の中に沈む
すると、もっと頻りに、女神の涙の鋳型から泉が湧きでる
ヘリオスは、陽気を、女神の悲しみの中へと送り込む
そして、真珠の接吻に接吻を次々に送り込む。
かくして今や、女神は深く、その視線の支配力を感じ
そして、振り向かぬままに、上を見る
数々の真珠が、姿をとって現れたいと云う
というのも、どの真珠も、ヘリオスの像を映しているからだ。
そして、かくも、色彩と虹の冠を載せて
明朗になって、女神の顔(かんばせ)は輝く
ヘリオスは女神に向かって引き寄せられて行く
しかし、ヘリオスのことだ!しかし、ああ!女神に到達しないのだ。
さて、こうして、運命の苛烈な籤(くじ)に従って
お前は、私から去って行くのだ、最も愛する者よ、ここから去って行くのだ
そして、仮にわたしが、ヘリオス、即ち偉大なる者であるとして
一体、その運行する玉座が、わたしにとって、何になろうか?(何にもなりはしない)
【解釈と鑑賞】
これは、詩の題名が浮き彫りとありますので、古代ギリシャのレリーフを見て着想した詩でありませう。
そのレリーフには、ヘリオスという古代ギリシャの太陽神、四頭立ての馬車に乗って天空を行くこの神の姿が描かれてあったのでせう。
この神さまについてのwikipediaがあります。:
ヘリオスは、そのように天の軌道を行くものですから、一所には留まることなく、愛する者とも別れなければならない。
その心情を、ゲーテが、この男神に託して歌った歌です。
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