2012年9月29日土曜日

第41週: Und als wir ans Ufer kamen (そして、わたしたちが岸辺に来た時に) by Wolf Biermann (1936 - )



第41週: Und als wir ans Ufer kamen (そして、わたしたちが岸辺に来た時に) by Wolf Biermann (1936 - ) 

【原文】

Und als wir ans Ufer kamen

Und als wir ans Ufer kamen
Und sassen noch lang im Kahn
Da war es, dass wir den Himmel
Am schönsten im Wasser sahn
und durch den Birnbaum flogen
Paar Fischlein. Das Flugzeug schwamm
Quer durch den See und zerschellte
Sachte am Weidenstamm
                       - am Weidenstamm

Was wird bloss aus unsern Träumen
In diesem zerrissnen Land
Die Wunden wollen nicht zugehn
Unter dem Dreckverband
Und was wird mit unsern Freunden
Und was noch aus dir, aus mir -
Ich moechte am liebsten weg sein
Und bleibe am liebsten hier
                       - am liebsten hier.


【散文訳】


そして、わたしたちが岸辺に来た時に

そして、わたしたちが岸辺に来た時に
そして、まだ長いこと小舟(ボート)に座っていたときに
そこで、わたしたちは、空が
最も美しく、水の中にあるのを見たのだ
そして、梨の木の中を
一対の魚が飛んで行くのを見たのだ。飛行機が泳いで
湖を横切って行き、そして、その音が響いて途絶えた
静かに、柳の幹のところで
        柳の幹のところで

わたしたちの数々の夢の中から一体何が生まれるというのだ
この分裂した国土の中で
傷口が、閉じたくないと言っている
この泥で汚れた同盟の下なんかでは
そして、わたしたちの友人達はどうなるのだ
そして、お前の中から、わたしの中から何が生まれるというのだ
わたしが、一番好きな事は、立ち去ることだ
そして、一番好きなことは、ここに留まることだ
         一番好きな、この場所に



【解釈と鑑賞】

この詩人のWikipediaです。

http://de.wikipedia.org/wiki/Wolf_Biermann

これを読みますと、ハンブルクの生まれです。1953年に、敢えて当時の東ドイツに移住して、そこで文学活動をし、当局に睨まれて、弾圧を受け、市民権を剥奪されて、一切の文筆活動を、1965年に禁止されています。この迫害は、東西ドイツで、大きな反対運動を惹起したとあります。そうして、1976年にはまた西ドイツのハンブルクに戻っています。

今こうして書いていると、弾圧といい、市民権(東ドイツという共産党のファシズム国家ーこれが国家か?ーに市民権などという言葉があったのか?ちゃんちゃら可笑しいという気がします)、迫害といい、今のこの能天気な日本国民を前にすると、これは日本語が日本語としての意味が全然通じていないだろうと思うこと頻りです。勿論、わたしは、わたしが当時のそのような東ドイツに住んでいたという個人的な経験に頼って、この文章を書いているわけではありません。

第2連にあるVerband、同盟とは、東ドイツとロシアの同盟のことを言っている。同盟とは名ばかりの、圧倒的な武力を持ったロシア共産党による被支配国家であった東ドイツのこの名ばかりの同盟は、泥にまみれた同盟と呼ばれています。

この詩を書いて、密告され、告発され、市民権を剥奪され、一切の発言を封じるファシズム(全体主義)には、わたしたちは徹底して戦わなければなりません。それが、今の中国であり、北朝鮮です。

自由は、水や空気のように自然に与えられるようなものではない。人間が戦って勝ち取り、それを大切に維持し、養生しなければ、容易に失われるものです。

ファシズムの典型的な特徴は、眼に見えない何かに気兼ねをして、自分の発言を自分で規制し、抑制することです。ファシズムの国家は、これを密告の奨励と、個人の死が無意味な死となることを強制をすることによって(即ち、共同体、communityのために死ぬことを徹底的に破壊することによって)、それらに対する恐怖を煽ることによって、なすのです。

能天気な今の日本国民が、この詩を読む価値は、むしろこの詩によって嗤われることにあるのだと、わたしは思っています。

この詩人のこころが、どれだけ、あなたに伝わるか。

追伸:
Wolf Biermannのこの詩は、共産党の一党独裁主義、全体主義、ファシズムの恐ろしさを知らぬ、知ろうとしない夢見る愚かなる日本人に読んでもらいたい。






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