2012年8月19日日曜日

第35週: Hyme (頌歌) by Fuad Rifka (1930 - 2011)



第35週: Hyme (頌歌) by Fuad Rifka  (1930 - 2011)  

【原文】

Hymne

Die Sehnsucht der Oliven nach der Oelpresse,
die Sehnsucht der Oelpresse nach den Krügen,
die Sehnsucht der Krüge nach dem Oel,
die Sehnsucht des Oels nach dem Brot,
die Sehnsucht des Brots nach den Händen,
Die Sehnsucht der Erde nach dem Himmel,
die Sehnsucht des Himmels nach der Erde.



【散文訳】

頌歌

オリーヴの、オリーヴの油を圧搾してとることへの憧れ
オリーブの油の圧搾の、壷への憧れ
壷の、オリーヴの油に対する憧れ
オリーヴの油の、パンに対する憧れ
パンの、両手に対する憧れ
土の、地上の、天上に対する憧れ
天上の、地上に、土に対する憧れ

【解釈と鑑賞】

この詩人の ドイツ語のWikipediaです。

http://de.wikipedia.org/wiki/Fuad_Rifka

これによれば、この詩人はシリアーレバノン生まれの哲学の教授とのことです。ドイツ語の詩をアラビア語に翻訳することに努めたとあります。リルケとヘルダーリンに傾倒。このふたりの詩人に影響を受け、独自の、清澄で形象豊かな詩を書いたとあります。

この、それぞれの物の憧れについての一行を、一行づつ訳して来て、5行目のパンの、両手に対する憧れのところから、神聖な感情の湧いて来るのを覚えました。

やはり、パンというものも、普段食している食べ物ですが、こうしてみると、聖餐と呼ぶに値する地位にある食物なのでしょう。

この神聖な感じは、やはり、両手でパンをつくるということ、両手はまた土を捏(こ)ねるということ。リルケならば、両手は土を捏ねて、壷をつくると歌ったでしょう。そのような創造する手という形象が、ここにはあると思います。このようなところに、影響と言えば、リルケの影響があるのでしょう。

そうして土という同じドイツ語が、同時に地上を意味することから、天上を対比させて、お互いの憧憬について歌っています。

憧憬の連鎖を歌った簡単素朴な詩ですが、何か非常に意味が濃縮された詩だと思います。

これらの憧憬の連鎖よ、褒め称えられてあれ、という意味で、頌歌という題名がつけられたのでしょう。




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