2012年8月19日日曜日

【西東詩集10】Phaenomen(現象)


【西東詩集10】Phaenomen(現象)

【原文】

Phaenomen

WENN zu der Regenwand
Phoebus sich gattet,
Gleich steht ein Bogenrand
Farbig beschattet.

Im Nebel gleichen Kreis
Seh ich gezogen,
Zwar ist der Bogen weiss,
Doch Himmelsbogen.

So sollst du, muntrer Greis
Dich nicht betrüben,
Sind gleich die Haare weiss,
Doch wirst du lieben.


【散文訳】

Phaenomen
現象

雨の壁のところで
フェーブス(日の神。Apolloの異名)がまぐわう度に
直ぐに、虹の弓の縁(へり)が立つ
色彩豊かな陰影を以て

霧の中に、同じ円環が
引かれているのを、わたしは見る
なるほど、虹の弓は白いが
しかし、それは、天の弓だ

このように、お前、陽気な、白髪の老人よ
お前自身を曇らせ、悲しませてはならない
髪の毛が白くなろうとも
お前は、愛する事をやめないのだ


【解釈と鑑賞】

前の詩では、詩の創造と生命の息吹を歌ったゲーテが、この詩では、現象と題して、生身の現実の自分を歌います。

第2連の

Zwar ist der Bogen weiss,
Doch Himmelsbogen.
なるほど、虹の弓は白いが
しかし、それは、天の弓だ

とある、白は、ゲーテの白髪を連想させて、第3連に続きます。

しかし、他方、霧に現れる虹の弓は、色が白くとも、天の弓だといって、その白の否定的な意味に対して、均衡をとっている。

第1連第2行の、雨の壁のところで、

Phoebus sich gattet,
フェーブス(日の神。Apolloの異名)がまぐわう

というgattenという言葉は、かなり露骨な表現ですが、ゲーテの年齢がこの言葉を選択させ、それが均衡を持つ表現になっているのでしょう。

もし敢えて主題を建てれば、この詩は、老年とセックス、老年と性を歌った詩ということになるでしょう。

自分自身の生に対して、正直で、率直で、貴重な詩だと思います。








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