2015年1月3日土曜日

Tapete(絨毯):第2週 by Thilo Krause(1977 ー )


Tapete(絨毯):第2週 by  Thilo Krause(1977 ー    )



【原文】

Ich lernte, lernte mittags in Grossmutters Bett:
Kreise fangen nirgendwo an und Kreise
hören nirgendwo auf. Du kannst sie
mit den Augen eine Stunde lang abfahren.
Du kannst auf ihnen eine Stunde lang
unterwegs sein, dass deine Pu;allen
sich selbst nachjagen wie der Hund
des Nachbarn immer wieder seinem Schwanz nachjagte
in der einen Stunde zwischen Zwoelf und Eins
die mich Grossmutter ins Bett steckte...

Du sollst schlafen, sagte sie
aber von Tapete und Hunden
hatte sie keine Ahnung.

【散文訳】

わたしは学んだ、いつもお昼に、祖母のベッドの中で学んだ、つまり
円環という円環がどこからも始まらず、そして、円環という円環が
どこに於いてでも終わらないのだ。お前はそれらの円環を
眼で以って、一時間の長い時間、遍(あまね)く廻るのだ。
お前は、円環の上で、一時間の長い時間
途上にいることができ、お前の被後見者たる孤児たちは
自分自身の後を、猟犬のように追いかける
隣家の犬が、再三再四、自分の尻尾を追い掛けるように
12時と1時の間の一時間の内に
わたしを、祖母がベッドに隠した其の一時間の内に

お前は眠らなければならないよ、と祖母は言った
しかし、絨毯と犬たちのことについては
祖母は、何も知らかった。



【解釈と鑑賞】

この詩人の、Wikipediaです。ドイツの、ドレスデン生まれの、そういう意味では東ドイツ生まれの詩人です。

http://de.wikipedia.org/wiki/Thilo_Krause


1977年の生まれとありますので、今年(2015年)38歳の詩人です。

Wikipediaを見ますと、数々の受賞歴を有しています。通俗的ないいかたをすれば、有望なるドイツ語の詩人ということになりませう。

わたしはこの詩を読んで、エリアス・カネッティの自伝的連作のひとつ、多分その第1作目の『Die gerette Zunge』(救われた舌)にある子供時代の逸話を思い出しました。

それは、子供の、幼児のカネッティが、家の床の絨毯を眺めて、そこに紅白の兵隊とその陣形を見て取って、戦争をして遊ぶことに夢中になっていたという逸話です。その子供の遊びを、あるとき母親に見つかって、禁止されて、終わりになってしまったという逸話です。

この詩人のこの詩、子供時代の自分を率直に歌った此の詩には、カネッティと同質の子供の認識と遊戯の姿があります。

Wikiには、この詩人の生い立ちは何も書いておりませんが、きっと親元を何かの理由で離れて、祖母と一緒に暮らしていたのでしょう。そのことが、お前の孤児たちという言葉から伺うことができます。

この昼の一時間に寝るという習慣も奇妙といえば奇妙でです。

ベッドに入ってから、この子供は床の絨毯を見て、カネッティと同じ想像力を働かせて、円環と犬の動きを眺めていたのです。



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