2015年1月3日土曜日

【西東詩集101】 Suleika, Hatem, Dem Kellner, Dem Schenken(ズーライカ、ハーテム、給仕に、酌人に)


【西東詩集101】 Suleika, Hatem, Dem Kellner, Dem Schenken(ズーライカ、ハーテム、給仕に、酌人に)


【原文】

Suleika

WARUM du nur oft so unhold bist?

Hatem

Du weisst daß der Leib ein Kerker ist,
Die Seele hat man hinein betrogen,
Da hat sie nicht freie Ellebogen.
Will sie sich da - und dorthin retten,
Schnürt man den Kerker selbst in Ketten;
Da ist das Liebchen doppelt gefährdet,
Deshalb sie sich oft so seltsam gebärdet.

WENN der Körper ein Kerker ist,
Warum nur der Kerker so durstig ist?
Seele befindet sich wohl darinnen
Und bliebe gern vergnügt bei Sinnen;
Nun aber soll eine Flasche Wein,
Frisch eine nach der andern herein.
Seele wills nicht länger ertragen,
Sie an der Türe in Stücke schlagen.

Dem Kellner

SETZE mir nicht, du Grobian,
Mir den Krug so derb vor die Nase!
Wer mir Wein bringt sehe mich freundlich an,
Sonst trübt sich der Eilfer im Glase.

Dem Schenken

Du zierlicher Knabe, du komm herein,
Was stehst du denn da auf der Schwelle?
Du sollst mir künftig der Schenke sein,
Jeder Wein ist schmackhaft und helle.


【散文訳】

ズーライカ

あなたが、本当に時につれなくなることがあるのは何故?


ハーテム

体が牢獄だということは、お前も知っているだろう
魂を、人は、その中に騙して連れ込んだのだ
だから、魂は、自由な肘を持たなくなった。
そこで、魂がみづからをどうにかしたいと思えば、あそこに行って救いたいとお思えば、
人は、牢獄自体を鎖に繋ぐだろう
そうなれば、愛するものは、二重に危険に晒されるのだ
それ故に、魂は、しばしば、そのように振舞うことが稀なのだ。

もし体が牢獄ならば
何故牢獄だけが、かくも喉が渇いているのだろうか?
魂は、きっとその中にあるのに
そうして、そうなれば、喜んで満足して、五感の感覚のもとに留まることだろうのに
しかし、さて、こうしてみると、一壜の酒が
鮮やかに、気持ちよく、次から次へとやって来なければなるまい。
魂は、もはやこれ以上堪えたくはないのだ
その壜を扉にぶつけて粉々に打ち壊してしまいたいのだ。


給仕に向かって

俺のところには置くな、お前、武骨な田舎者よ
俺の鼻面に、そんな風に無作法に、酒壺を置くんぢゃない!
俺に酒を持ってくる奴は、俺を親し気に見てからにしろ
そうでなけりゃ、アイルファーの葡萄酒が、硝子の杯の中で濁ってしまう。


酌人に向かって

お前、瀟洒なる少年よ、お前は入って来るがよい
一体、そんな敷居に立って、どうしたというのだ?
お前が、将来、わたしに酒を注(つ)ぐ酌人であるというのに
どの酒も、美味く、そして明朗な味がするぞ。



【解釈と鑑賞】

給仕に向かって歌う詩にあるアイルファーというのは、葡萄酒の銘柄の名前です。

ヴァイマールの西の郊外の葡萄園で採れる葡萄酒です。次のウエッブサイトがあります。:
http://www.weinbau-zu-weimar.de/roter-eilfer

また、このアイルファーという葡萄酒は、ゲーテの好きな葡萄酒であったと見えて、Eilferという題名の詩も書いており、それに曲がつけられて、次のような曲をこの同じウエッブサイトで聴くことができます。楽譜も載っております。:
http://www.weinbau-zu-weimar.de/eilfer

このフィルファーという葡萄酒は、ドイツ語でいうKometenwein、コメット葡萄酒、彗星葡萄酒と呼ばれる葡萄酒のひとつで、その年が非常に葡萄にとって条件のよい年で、このとき100年に一度の出来と言われる葡萄酒の名前です。

ゲーテのこの詩の葡萄酒も、この彗星葡萄酒のアイルファーを歌っているのだと言われています。このことを書いたWikipediaがあります。:
http://de.wikipedia.org/wiki/Kometenwein

なんだか、葡萄酒の話で、終わってしまいました。

この詩を読みますと、酒場にあっても、給仕と酌人は異なる身分と仕事であって、前者は酒場に専属であるのに対して、後者は酒場に来る常連客に専属の身分であるものと見えます。これが、ペルシャの世界の酒場の様子なのでしょう。

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