2014年12月27日土曜日

【Eichendorfの詩98】Der Gluecksritter(幸福の騎士)



Eichendorfの詩98Der Gluecksritter(幸福の騎士)  
  

【原文】

Wenn Fortuna spröde tut,
Lass ich sie in Ruh,
Singe recht und trinke gut,
Und Fortuna kriegt auch Mut,
Setzt sich mit dazu.

Doch ich geb mir keine Müh:
He, noch eine her!
Kehr den Rücken gegen sie,
Lass hoch leben die und die -
Da verdriesst sie sehr.

Und bald rückt sie sacht zu mir:
Hast du deren mehr?
Wie Sie sehn. - Drei Kannen schier,
Und das lauter Klebebier!-
's wird mir gar nicht schwer.

Drauf sie zu mir lächelt fein:
Bist ein ganzer Kerl!
Ruft den Kellner, schreit nach Wein,
Trinkt mir zu und schenkt mir ein,
Echte Blum und Perl.

Sie bezahlt Wein und Bier,
Und ich, wieder gut,
Führe sie am Arm mit mir
Aus dem Haus, wie'n Kavalier,
Alles zieht den Hut.


【散文訳】

幸運の女神が冷たくするなら
俺は、女神を静かにして、そのまま放ってをく
そして、よく歌を歌い、よく酒を飲む
すると、幸運の女神も、その気になって
一緒に、それに合わせて隣に座るのだ。

しかし、俺はちっとも力を労せずに、かう言うのだ
》へえ、まだもうひとり来たってのかい!
背中を女神に向けるがいい、そうして
あの女にも、この女にも乾杯だ、というのだ
それが、女神を非常に不愉快にさせるのだ。

すると、ぢきに、女神は優しく俺のところにやって来て、かう言うのだ
》他にもっと女の人はいるの?
そうら見ろ。》実に3杯は要るね、
それも、全くの上等のビアがよ!《-
って言うのは、俺にゃあちっとも難しいことぢゃあない。

すると、女神は俺に上品に微笑みながら、かう言うのだ
》凄い人ね!
給仕を呼べ、葡萄酒の所へ堂々と歩いて行け
俺の健康を祝して乾杯し、俺に酒を注(つ)げ、
本当のビアの精華(ブルーメ)であり、酒の泡の真珠だ。

女神が葡萄酒とビアのお代を支払い
そして、俺は、再び有難いことに
女神の腕を取って、一緒に
騎士の如くにその家を出ると
皆の者が、帽子を取って、礼をするのだ。


【解釈と鑑賞】

第4連の、Blumeという言葉は、普通には花のことですが、酒飲みの世界に入りますと、これがドイツ語では、ビアの上にある泡、繊細なあの、美味し泡のことをいうのであります。

また、従いPerlという真珠も、美味し酒が注(つ)がれ、注(そそ)がれて出来る、その葡萄酒の上辺の泡ということになります。

まあ、一寸アイヒィエンドルフにはめづらしい、陽気な、酒場の詩ということになります。

もっとも、アイヒィエンドルフは酒場は好きなようで、Die Zauberei im Herbste (1808) (Märchen)というシュールレアリスティックな作品の冒頭は、酒場から始まります。

第3連の4行目のKlebebierという言葉は辞書にはなく、ネットを検索しても出てきませんでしたので、この詩人の造語であるか、何か土地の言葉なのではないかと思います。

しかし、その呑兵衛のこころのよく現れた造語です。Klebenという接着するという動詞とビアの組み合わせですので、その意味も自づと明らかでありませう。

確かに、幸福の騎士という題名、名前の通りです。




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