2013年2月2日土曜日

gedicht fuer eine fliege(ある蠅のための詩):第6週 by Kurt Marti(1921- )



gedicht fuer eine fliege(ある蠅のための詩):第6週 by Kurt Marti(1921-  )






【原文】


gedicht fuer eine fliege

unzeitig
[draussen faellt schnee]
ist in der stille
des nächtlichen Zimmers
eine fliege erwacht

blau schimmernd
im gelben licht
einer reispapierlampe
surrt sie aufab aufab
vor buecherregelaen


ja und
[so höre ich fragen]
was willst du uns sagen damit?

nichts nichts:
ich schreibe das auf
fuer die fliege


【散文訳】


ある蠅のための詩

時ならずして
[外では雪が降っている]
夜の部屋の
沈黙の中に
ある蠅が目覚めた

青く輝きながら
藁紙のランプの
黄色の光の中で
その蠅は、唸りながら上下し、上下する
本棚の前で

そうだ、そして
[そう問うのが聞こえたのだ]
お前は、それで何をわたしたちに言いたいのだ?

何もない、何もない:
わたしは、それを書き留める
蠅のために


【解釈と鑑賞】


この詩人のWikipediaです。


これを読むと、高校でデュレマットと同級生でした。その後大学へゆき、社会に出ての職業は、牧師。スイス生まれの、スイスの詩人です。

何と言うことのない詩のようですが、何故か非常にこころ惹かれる詩です。

外は雪。静かな世界。静かな部屋の中。そして、夜。藁紙のランプとは多分質素なランプなのでしょう。そのランプの光の中を飛ぶ蠅。これは、そうすると、冬の蠅ということになります。弱々しく飛ぶ冬の蠅。それでも、ぶんぶんと羽音を立てて、昇りつ、降りつしている。

孤独な蠅と孤独な人間の対話。

それを書き留めたのが、この詩だということになります。

こうしてみると、至る所に、詩作の契機があることを知ります。





0 件のコメント: