2014年6月14日土曜日

【西東詩集73】 Hatem4


【西東詩集73】 Hatem4


【原文】

HAETTE ich irgend wohl Bedenken
Balch, Bochara, Samarkand,
Süßes Liebchen, dir zu schenken,
Dieser Städte Rausch und Tand?

Aber frag’ einmal den Kaiser
Ob er dir die Städte gibt?
Er ist herrlicher und weiser;
Doch er weiss nicht wie man liebt.

Herrscher! zu dergleichen Gaben
Nimmermehr bestimmst du dich!
Solch ein Mädchen muss man haben
Und ein Bettler sein wie ich.


【散文訳】

わたしが、何かこう、きっと
バルヒや、ボハラや、サマルカンドを
甘い恋人よ、お前に贈ることを思ってみてもよいだろうか?
これらの都市という都市の陶酔と瓦落多を贈ることを?

しかし、皇帝に問うてご覧
皇帝がこれらの都市をお前に与えるかどうか?と
皇帝は、素晴らしい者、支配者であり、そして聡明なる者だ
とはいへ、ひとが愛するということの様を知ってはいないのだ。

支配者!そのような天賦の才に
決して、お前は身を捧げてはならぬ!
そのような乙女をこそ、ひとは持たねばならぬ
そして、男は、わたしのような乞食であらねばならぬ。


【解釈と鑑賞】

権力とエロス(性愛)は、いつも一緒にあるものです。

しかし、そのことの本質が空無であると認識しているゲーテは、自分を乞食に譬(たと)え、そのような権力者に身を捧げるようなことのない乙女を、恋人に求めております。

やはり、ゲーテにも、現実、世俗に対する距離と、もし言ってよければ、倒錯があると、わたしには、思われます。

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