2014年6月8日日曜日

【西東詩集72】 Hatem3


【西東詩集72】 Hatem3


【原文】

NUR wenig ists was ich verlange,
Weil eben alles mir gefällt,
Und dieses wenige, wie lange,
Gibt mir gefällig schon die Welt!

Oft sitz ich heiter in der Schenke
Und heiter im beschränkten Haus;
Allein sobald ich dein gedenke
Dehnt sich mein Geist erobernd aus.

Dir sollten Timers Reiche dienen,
Gehorchen sein gebietend Heer,
Badakschan zollte dir Rubinen,
Türkise das Hyrkanische Meer.

Getroknet honigsuesse Fruechte
Von Bochara, dem Sonnenland,
Und tausend liebliche Gedichte
Auf Seidenblatt von Samarkand.

Da solltest du mit Freude lesen
Was ich von Orkus dir verschriebe,
Und wie das ganze Handelswesen
Sich nur bewegte dir zulieb;

Wie in dem Land der Brahmanen
Viel tausend Finger sich bemüht,
Dass alle Pracht der Indostanen
Für dich auf Woll und Seide blüht;

Ja, zu Verherrlichung der Lieben,
Gießbäche Soumelpours durchwuehlt,
Aus Erde, Grus, Gerill, Geschieben
Dir Diamanten ausgespült;

Wie Taucherschar verwegner Männer
Der Perle Schatz dem Golf entriss,
Darauf ein Divan scharfer Kenner
Sie dir zu reihen sich befliss.

Wenn nun Bassora noch das Letzte,
Gewürz und Weihrauch, beigetan,
Bring alles was die Welt ergötzte
Die Karawane dir heran.

Doch all diese Kaisergüter
Verwirrten doch zuletzt dein Blick;
Und wahrhaft liebende Gemüter
Eins nur im andern fühlt sein Glück.


【散文訳】

わたしが求めるものは、実に僅(わず)かなものだ
何故ならば、まさしく、すべてがわたしの気に入っているからだ
そして、この僅かなものが、どれ程長い間に亘って
わたしに、有難いことに、既にこの世界を与えてくれていることか!

しばしば、わたしは明朗なこころで、居酒屋に腰を下ろしている
そして、明朗なこころで、限られた家の中にも坐っている
しかし、わたしがお前のことを思うや否や
わたしの精神は、(愛を)征服しながら、伸びて行くのだ。

お前には、チムール帝の諸帝国が仕えることになり
チムールの支配する軍隊は、お前の言うことに耳傾けることになる
バダクシャンの地は、お前に紅玉(ルビー)を奉納し
ヒルカーニエンの地は、トルコ石を奉納する。

蜂蜜で甘い、干物の果物が
ボヒャラの地、太陽の国からやって来て
そして、千もの愛すべき詩篇が
サマルカンドの地から、絹のページに載ってやって来る。

すると、お前は、悦びを以て、読むことになるのだ
わたしが、冥界の王、オルクスについて、お前に書き間違えていることを
そして、全体の商業経営が、どのように
ただただ、お前のためにのみ、動いているのかを

ブラフマンの国において、そうであるように
幾千もの指が、心を砕いているのは
インドスタンの地のすべての壮麗が
お前のために、羊毛と絹の上に、花咲き、栄えるということなのだ。

そうなのだ、愛を賛美するために
渓流は、スメルプールを掘り抜いて流れ
大地から、(山から川を流れて)砕けて丸くなった石から、磨かれた石から、山の石から
お前のために、ダイヤモンドを洗い濯(すす)ぐのだ。

大胆不敵な男たちからなる潜水の軍勢が
真珠の財宝を内海から取るのだが、
その目的のために、鋭い識者の持つペルシャの長椅子(Divan)が
その潜水の軍勢の男達を、お前に整列するように努める。

さて、こうして、バッソーラの地が、やっと最後のもの、即ち
香辛料と乳香を捧げると
世界が享受するすべてのものを
隊商が、お前に、運んで来ることになるのだ。

しかし、すべてのこれらの皇帝の品々は
勿論、遂には、お前の眼を途方に暮れさすことになる
そして、本当に愛している心情が
他の者の中でのみ一つであるということを、皇帝の幸福は感じているのだ。


【解釈と鑑賞】

ハーテムの恋人ズーライカが、チムールの諸帝国の各地から、どれほどの供物を捧げられるかを、何度も何度も歌っています。

第5連の

すると、お前は、悦びを以て、読むことになるのだ
わたしが、冥界の王、オルクスについて、お前に書き間違えていることを

という行の2行目の「書き間違えている」という表現の意味は、この冥界の神についてのWikipedia(http://de.wikipedia.org/wiki/Orcus)の記述を読みますと、特にドイツ語の世界では、忘却という概念と結びついているとありますので、恋人が恋人を忘れないということを、ハーテムがズーライカについて、この神のことを書く時に書いたということになるのでしょう。本来は、忘却に関係した神であるにも拘らず。

従って、その書き誤りを、ズーライカは悦んで読んだのでしょう。

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