【西東詩集62】 Hatem
【原文】
Hatem
NICHT Gelegenheit macht Diebe,
Sie ist selbst der größte Dieb;
Denn sie stahl den Rest der Liebe
Die mir noch im Herzen blieb.
Dir hat sie ihn übergeben
Meines Lebens Vollgewinn,
Dass ich nun, verarmt, mein Leben
Nur von dir gewärtig bin.
Doch ich fühle schon Erbarmen
Im Karfunkel deines Blicks
Und erfreu in deinen Armen
Mich erneuerten Geschicks.
【散文訳】
ハーテム
機会が泥棒をつくるのではないのだ。
機会自体が、最大の泥棒なのだ
というのも、機会は、恋の残りを盗んだからである
わたしのこころにまだ残っていた恋の残りを。
機会は、お前に
わたしの生命が獲得したすべてを譲渡した
わたしが、こうして、貧しくなって、わたしの生命が
ただお前からもらって、今こうしていられるということ
しかし、わたしは既に憐憫を感じている
お前の眼差しの柘榴(ざくろ)石の中に
そして、お前の両の腕(かいな)の中で喜んでいるのだ
新たな神の摂理を。
【解釈と鑑賞】
この巻の最初の招待という詩を受けて、ゲーテがハーテムに変身し、その若き恋人がズーライカに変身をして、相聞歌を交換します。
その最初のハーテムの、ゲーテの歌です。
このような詩を読むと、本来のゲーテが生き生きとしているように思われます。箴言の巻は、やはり世俗に生きるゲーテの辛さが出ていたのだと思います。このような詩を読むと、ほっと致します。
最初の連の最初の2行などは、ゲーテが女性を口説いたときの口説とすら思える2行です。うまい口説き文句です。
最後の連の最後の行のGeschickを、神の摂理と訳しましたが、しかし、更に同時にもっと身体の感覚にしっくりと来ること、ぴったりと来る事という意味も含まれています。性愛の意味にとってもよいと思います。勿論、それは神聖なる性愛、性愛は神聖であるという意味です。
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