2013年11月23日土曜日

【西東詩集53-6】 Buch des Unmuts(不満の書)


【西東詩集53-6】 Buch des Unmuts(不満の書)


【原文】

ALS wenn das auf Namen ruhte,
Was sich schweigend nur entfaltet!
Lieb' ich doch das schöne Gute
Wie es sich aus Gott gestaltet.

Jemand lieb' ich, das ist nötig;
Niemand hass ich; soll ich hassen,
Auch dazu bin ich erbötig,
Hasse gleich in ganzen Massen.

Willst sie aber näher kennen,
Sieh aufs Rechte, sieh aufs Schlechte;
Was sie ganz fürtrefflich nennen
Ist wahrscheinlich nicht das Rechte.

Denn das Rechte zu ergreifen
Muss man aus dem Grunde leben,
Und salbadrisch auszuschweifen
Dünket mich ein seicht Bestreben.

Wohl! Herr Knitterer er kann sich
Mit Zersplitterer vereinen,
Und Verwitterer alsdann sich
Allenfalls der Beste scheinen.

Dass nur immer in Erneuung
Jeder täglich Neues höre,
Und zugleich auch die Zerstreuung
Jeden in sich selbst zerstöre.

Dies der Landsmann wünscht und liebet,
Mag er Deutsch, mag Deutsch sich schreiben,
Liedchen aber heimlich piepet:
Also war es und wird bleiben.



【散文訳】


恰も名前の上に憩ふているかの如くにあるとは
沈黙するままに、ただ開いて行くものが!
わたしは勿論美しい善を愛する
それが、神から生まれ出て形成されるに従って。

誰かをわたしは愛する、それは必要なことだ;
誰をもわたしは憎まない;わたしは憎むべきなのだ
そのための覚悟もしているのだ
すべての有象無象ごと、今直ぐ憎むがいい。

有象無象を、しかしお前は、より近く知りたいと思う
正義を見よ、悪を見よ;
有象無象が全く優れていると呼ぶものは
多分正義ではないのだ。

何故ならば、正義を捕まえて理解するには
根底から生きなければならないからであり
そして、インチキの治療をしながら逸脱することは
わたしには、浅瀬で努力をすることのように見えるからだ。

その通りだ!折り目屋は、
散らかし屋とひとつになることができる
そして、風化屋は、してみると
いつでも一番だというように見える。

いつも新しくある中にだけ
誰もが毎日新しいことを耳にするということ
そして、同時に、気散じも
誰をも、それ自体では、破壊するということ。

これを、同国人は願い、愛するのだ
それがドイツ(Deutsch)人であれ、トイツ(Teutsch)人と綴るのであれ
しかし、小さな歌を密かにぴいぴと鳴らして歌うのだ;
つまり、今まではこんな具合であったし、これからもそのままなのだ。



【解釈】

有象無象の生き方を、「インチキの治療をしながら逸脱することは
わたしには、浅瀬で努力をすることのように見えるからだ」という譬喩で表すこの譬喩は、実にぴったりとした譬喩だと思います。

インチキの治療というのがいい。その場凌ぎの、処方と処世で生きる有象無象をよく言い当てています。



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