【Eichendorfの詩 23】Abschied (別れ)
【原文】
Abschied
O Täler weit, o Hoehen,
O schoener, gruener Wald,
Du meiner Lust und Wehen
Andaecht'ger Aufenthalt!
Da draussen, stets betrogen,
Saust die geschaeft'ge Welt,
Schlag noch einmal die Bogen
Um mich, du grünes Zelt!
Wenn es beginnt zu tagen,
Die Erde dampft und blinkt,
Die Voegel lustig schlagen,
Dass dir dein Herz erklingt:
Da mag vergehn, verwehen
Das truebe Erdenleid,
Da sollst du auferstehen
in junger Herrlichkeit!
Da steht im Wald geschrieben,
Ein stilles, ernstes Wort
Von rechtem Tun und Lieben,
Und was des Menschen Hort.
Ich habe treu gelesen
Die Worte, schlicht und wahr,
Und durch mein ganzes Wesen
Ward's unaussprechlich klar.
Bald werd ich dich verlassen,
Fremd in der Fremde gehn,
Auf buntbewegten Gassen
Des Lebens Schauspiel sehn;
Und mitten in dem Leben
Wird deines Ernsts Gewalt
Mich Einsamen erheben,
So wird mein Herz nicht alt.
【散文訳】
別れ
ああ、谷々よ、遥かなる、ああ、高みよ
ああ、美しい、緑なす森よ
お前、わたしの悦びと悲しみの
敬虔なる滞在よ!
外では、いつも欺かれる
忙しい世界の、ざわざわ言う音がする
もう一度、弦の弓を打ちつけよう
わたしの周りで、お前、緑のテントよ!
日が昇り始めれば
大地は煙り、そして瞬(またた)く
鳥たちは、陽気に羽を打つ
お前のこころが鳴り響くようにと
そうすると、過ぎ去り、吹き去るのだ
この暗い、大地の苦しみが
そうすると、お前は、再び蘇生する
若々しい荘厳の中に!
すると、森の中に、書かれているのは
ひとつの静かな、真剣な言葉である
正しい行いと愛することについての
そして、人間の財宝について幾ばくかの
わたしは忠実に読んだ
その言葉を、簡素で真実の言葉を
そして、わたしの前存在を通して
その意味が、言葉では言えない位に明瞭になったのだ。
じきに、わたしはお前の許を去ることになり
異国の地を、異人のまま行くことになる
乱雑に動く小路を通って
生命の芝居を観るのだ
そして、生命のまん中で
お前の真剣さの力が
わたしを、孤独なる者を、高く掲げるのだ。
【解釈と鑑賞】
第一連を読むと、この詩の歌い手は、ジプシーのような、あるいはジプシーであるのかも知れませんが、旅する音楽家だということがわかります。
緑のテントではありませんが、緑の馬車というのが、ジプシーの象徴として、トーマス•マンのTonio Kroegerに出て来ます。
そうして、
外では、いつも欺かれる
忙しい世界の、ざわざわ言う音がする
もう一度、弦の弓を打ちつけよう
わたしの周りで、お前、緑のテントよ!
というところを読むと、音楽には、世俗の喧噪と欺瞞から我が身を護る力があると、詩人が考えていることがわかります。そうして、音楽は、緑のテント、我が身を護る仮の宿なのだ。
このような思いを吐露する前に、谷や空の高みや森を褒め称える、その真情が溢れている第一連です。
都会を離れ、町を離れて、自然の中で、詩人は蘇生する。このモチーフは、連綿として、アイヒェンドルフの詩に連なっています。
そうして、森の中にこそ言葉があって、それは人間の規範となる教えである。
最後の連、
じきに、わたしはお前の許を去ることになり
異国の地を、異人のまま行くことになる
乱雑に動く小路を通って
生命の芝居を観るのだ
とあるのは、このモチーフも繰り返し、アイヒェンドルフの詩には出て来るモチーフです。
小路とある、この言葉は、この詩人の何か観客としての舞台、芝居の演じられている生き生きとした舞台なのです。そこは、生活の臭いに満ちているのです。