【Eichendorfの詩73】Tafellied(食卓歌) 5
5. Die Haimonskinder(ハイモン伯の仲の良い4人の子供達)
【原文】
Auf feurigem Rosse kommt Baccus daher,
Den Becher hoch in der Hand,
Sein Roesslein wird wild, sein Kopf ist ihm schwer,
Er verschüttet den Wein auf das Land.
Den Dichter erbarmet der Rebensaft,
In den Buegel er kuehn sich stellt
Und trinkt mit dem Gotte Brüderschaft―
Nun geht’s erst, als ging’s aus der Welt!
》Ei, sieh da, so einsam, Herr Komponist!
Steig auf mit, ’s ist schad um die Schuh,
Du löst erst die Schwinge―und wo keine ist,
Da mach uns die Flügel dazu!《
Und was sie ersonnen nun, singen die drei.
》O weh!《ruft ein Saenger herauf,
》Ihr schreit ja die köstlichsten Noten entzweit!《
Und schwingt zu den dreien sich auf.
Nun setzt der Tonkünstler, skandiert der Poet,
Der Sänger gibt himmlischen Schall,
Es lächelt Herr Baccus:》Wahrhaftig, das geht,
Und’s Trinken verstehen sie all.《
Und wie sie nun alle beisammen sind,
Hebt’s sachte die seligen Leut,
Es wachsen dem Rosse zwei Schwingen geschwind
Und überfliegen die Zeit.
【散文訳】
燃えるような馬に乗って、バッカスがこちらへやって来る
杯を高く手に持って掲げて
その馬は乱暴になり、その頭(かしら)は重たい
バッカスは葡萄酒を、その土地に撒(ま)いてゐる
詩人を、葡萄の果汁は慰める
詩人は、勇敢にも鐙(あぶみ)に足掛けて
そして、神と兄弟の契りを交して、飲む
さて、かうしてやっと、この話は、恰も世界の中から外へとでるかの如くになるのだ。
》やあやあ、見ろよ、こんなにも孤独なのだ、音楽家氏は!
一緒に馬に乗れよ、靴も破れているではないか
お前は、まづは手綱を解くがいい、そして、手綱が無ければ
我々を馬の翼とするがいいのだ!《
そして、3人は、かうして考え出したものを歌う。
》ああ、何と言うことだ!《と、ひとりの歌手が歌い上げる
》お前達は、実際、行進して貴重な音を裂いてしまふ《と言い、
そして、3人に合わせて、歌い上げる。
かうして、音楽家は歌い上げ、詩人は騒ぎ立て
歌手は、天国の響きを出し
バッカス氏は微笑してかう言うのだ 》本当にまあ、いいだらうさ、
そして、酒を飲むことの本質を、奴らは皆理解しているのだから。《
そして、彼等が皆一緒になると
聖なる人々を優しく(世界という酒樽から)汲み出すのだ
馬には、ふたつの翼があっといふ間に生え
そして、時間を飛び越して飛ぶのだ。
【解釈と鑑賞】
Haimonskinder、ハイモン伯の4人の事ども達というヨーロッパ中世に広まった英雄伝説についてのWikipdediaです。
時は、カロリンガー王朝、カール大帝の御代の御話。日本語の世界でGoogleで検索してみると全く検索されないので、わたしたちには知られていない未知の物語の主人公たちということになるでせう。
Die Schwingeといふ語は、辞書をひき、Googleの画像検索をして調べると、馬の腹帯や手綱やら、馬の体のまん中から前半に掛ける馬具の総称のように思はれます。そして、Fluegel、翼といふ言葉の縁語です。
最後の連の二行目の
聖なる人々を優しく飲む(hebenする)のだ
と訳したところは、ドイツ語の慣用句の、
Wein aus Fassen heben(酒を樽から出す)
という言い廻しが念頭にあって、この行とこの慣用句は、第1連の
Nun geht’s erst, als ging’s aus der Welt!
さて、かうしてやっと、この話は、恰も世界の中から外へとでるかの如くになるのだ。
と訳した一行に照応してをります。
言って見れば、この騒擾の宴は、世界といふ酒樽から酒を汲み出して飲むやうなものだといふ考へが根底にあるのです。
しかし、出て来る子供の数は、だうやら3人のやうで、伝説では4人の子供といふことですから、これがだうなってゐるのやら、そこがよく解りません。伝説そのものの内容に踏み込んで、parodierenした詩ではないやうです。
アイヒェンドルフといふ詩人は、このやうな乱痴気騒ぎの場面を散文作品でも書いていますので、このやうな騒擾、祭りの騒乱が好きであったのだと思ひます。