ドナルド•キーン先生にお会いする
昨日、5月3日(金曜日)、池袋リブロ、池袋コミュニティ•カレッジにて、16:00より、ドナルド•キーン先生の講演会があり、行って参りました。
この会は、先生の著作集の刊行を機に催されたものです。事前に出席者より質問票を集め、新潮社の先生ご担当の編集者の方が、質問を整理して、先生に問い、先生が答えるという体裁で、およそ45分の時間が、あっという間に過ぎました。
日本文学と日本語を愛する気持ちが率直に伝わる、よいお話でありました。
話の終わったあと、著作集第2巻の『百代の過客』を入口のところで買い求め、サインの列に並びました。
もぐら通信のお言葉を戴いたことと、毎号お送りしてご負担にならないかを案じておりますと申し上げ、お読み下さっていることにお礼の言葉を申し上げました。毎号読んでいますと言われて、本当にうれしい心地がしました。有難いことです。
キーン先生の隣りで、落款を押す役割を演じていた宮西さんにもご挨拶をし、日頃のお礼を申し上げることができて、本当に、よい1時間でありました。
キーン先生から名刺を頂き、また握手もして戴いて、幸せなことでした。
一緒に行った詩人水島英己さんのFacebookの記事から、怠惰にもそのまま引用して、先生のご発言の一端をお伝え致します。
「【春の宵 想はぬ人を想ひけり 荷風】
ドナルド・キーン先生の話を聴きに出かけた。池袋のリブロで、「荷風句集」(岩波文庫・加藤郁乎編・2013年4月16日 第1刷発行)を買った。この上の8階でキーン先生の話がある。岩田さんと同じフロアーの喫茶店で会う。二人で聴きに行こうと約束していたのだ。
新潮社の著作集担当者の方の司会。キーン先生が参加者から、あらかじめ出されている質問に答えていくというスタイルで50分ほどだったが素晴らしい話を聴くことができた。nhkのキーン先生特集のテレビ番組でも聴いたことがあるが、直接に先生の姿を目の前にして、同じような話でも聴くことができているというのは格別の思いがした。
中央公論の嶋中鵬二社長と永井荷風宅を訪ねたときの話をされた。これは、「一番好きな日本語何ですか」という質問から派生していった話だったと思う。「荷風さんの家に入ったときは、その汚さに喫驚した。しかし、荷風の日本語の美しさ、リズムあるそれに陶然とした。そして荷風のような日本語ができたら死んでもいい!と思った」というようなこと。2年間の日本での勉強を終えて、当時住んでいたイギリス(多分ケンブリッジ?先生はどこで教えていたなどと言う話は一切されない人だ)に帰るとき、たまたま空港で買った荷風の「すみだ川」を飛行機の中で読んで、感動して泣いたという話など。
この国の芸能から、古典文学、中世のそれ、近世のそれ、近代、戦後(安部公房・三島由紀夫なども含めて)文学のすべてに通暁している偉大な人間。しかし、もっとも小さな人々の哀歓にこそ、すべての文学の基本があるということを誰よりも深く考えている人間(日記の研究を見よ)。
僕のようなものが、いくら讃辞を重ねてもと思うけれど、でも、こんな人、日本人で見たことがないよ。
キーン先生と握手した。その手は柔らかだった。先生、ご自愛下さい。啄木伝はゆっくりと書いて下さい、などと心で呟いたのだった。
キーン先生の一番好きな日本語の(音)の連なりは「徒然草」の文のそれ。
キーン先生の一番好きな源氏物語の女性は「六条御息所」。
キーン先生の一番好きな「能」の曲目は「松風」と「野宮」。
「日本人」であるということだけで、それだから、「美しい国」などと、一体だれが言えるのか?キーン先生の少年のような笑顔が問いかけてくる。」
0 件のコメント:
コメントを投稿