2012年12月5日水曜日

【Eichendorfの詩 17-3】Der verliebte Reisende (恋する旅人)


【Eichendorfの詩 17-3】Der verliebte Reisende (恋する旅人) 

【原文】

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Lied, mit Traenen halb geschrieben,
Dorthin über Berg und Kluft,
Wo die Liebste mein geblieben,
Schwing dich durch die blaue Luft!

Ist sie rot und lustig, sage:
Ich sei kranke von Herzensgrund;
Weint sie nachts, sinnt still bei Tage,
Ja, dann sag: ich sei gesund!

Ist vorbei ihr trugst Lieben,
Nun, so end auch Lust und Not,
Und zu allen, die mich lieben,
Flieg und sage: ich sei tot!


【散文訳】

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歌は、涙で半分は書かれる
その向こう、山と谷の向こうには
愛する者が、わたしのものとしてあった
歌よ、お前を青い空の中を貫いて打ち振れよ!

彼女は赤く、そして陽気ならば、次のように言え:
わたしは心の底から病気であると、何故ならば
彼女が夜ごとに泣くからであり、昼には静かに思うからであり
そう、だから、言え:わたしは、陽気なのだと!

彼女の誠実な愛は去ったのであれば
さて、そうしてみると、陽気と困難もまた終わったのだ
そして、わたしを愛するすべてのひとびとへと
飛んで行け、そして言え:わたしは死んだのだと!


【解釈と鑑賞】

前の2番目の詩もそうですが、何かアイヒェンドルフの詩には、距離に関するIronieがあると思われる。

歌は、と始まる第1連の歌は、本来陽気なものであるのに、やはり半分は悲しみの感情で歌われる。歌を歌う人間は悲しみの感情を持っているのだ。

愛する女性が陽気ならば、愛するわたしは病にある。というこの文は、何か普通の恋愛とは異質です。

愛する女性が泣けば、愛するわたしは陽気である。

何か、愛するという行為が、最初から困難であることになっている、そのこころの在り方が、異質です。

もし、この恋情がみなの恋情と同じならば、愛するわたしは死んでいるのだ。

それほど、わたしの恋情は特殊であり、特異であり、普通にはない恋情なのだ。

それが、Der verliebte Reisende、恋する旅人の恋情なのだ。

何故、恋する旅人と題したのか、ここまで来ると、とてもよく解ります。

普通の愛は、一カ所に留まるものだが、アイヒェンドルフの愛は、留まらないのです。それ故の、一見逆説に見える恋情なのです。しかし、それは、真説だと、わたしは思います。

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