2014年8月23日土曜日

Sommermelancholie(夏の憂鬱):第34週 by Simon Borowiak


Sommermelancholie(夏の憂鬱):第34週 by   Simon Borowiak





【原文】

Sommermelancholie

Sanft richtet sich das Abendrot zugrunde,
kein Vogel tschilpt im Nest.
Der alte Fuchs dreht seine Runde
und wünscht dem Wienerwald die Pest.

Der Fliegenpilz behandelt seine Akne
und stäubt sich Puder unter die Lamellen.
Der alte Bock sitzt still auf seinem Bänkchen
und checkt von Weitem die Gazellen.

Auch ich geh jetzt von hinnen
im letzten Tagesscheine
dem Abendrot entrinnen.
Und du, o Leser, weine.



【散文訳】


夏の憂鬱

柔らかにそっと、夕暮れの紅が、没する
一羽の鳥も、巣の中で囀(さえず)らない
古狐は、ぐるぐると旋回し
そして、ウィーンの森に疫病(ペスト)が流行ればよいと願っている。

ベニテングダケは、自分の面皰(にきび)を処置していて
そして、菌褶(きんしゅう)の下に、髪粉を撒いている。
年の功を経た雄山羊は、静かに、自分の長椅子の上に腰を下ろしていて
そして、遠くから、羚羊(かもしか)の様子をチェックしている。

わたしもまた、これから、ここを発つのだ
最後の今日の陽(ひ)の輝きの中で
夕暮れの紅から逃れ出るために。
そして、お前よ、おお、この詩の読者よ、泣いてくれ。



【解釈と鑑賞】


この詩人のことを書いたWikipediaです。



ドイツの詩人です。

第2連にあるベニテングダケの写真を




ドイツ語でFliegenpilzとあるので、この毒キノコを食べると空を飛ぶ様な感覚になるのではないかと思います。Wikipediaには、毒があるが、弱い毒だとあります。

また、菌褶(きんしゅう)とは、茸の傘の裏面のことです。この詩は、随分と植物専門学的な語彙が出て来ます。



菌褶(きんしゅう)の下に、髪粉を撒いている」とは、この茸がお化粧をしているのでしょう。

題名が、夏の憂鬱というのですが、不思議な光景です。夏の日に見る幻でしょうか。あり得る景色に見えます。

一言でこの詩を言いますと、夏の日の夕暮れの光の色を歌った詩ということになるでしょう。

鳥も、古狐も、ベニテングダケも、雄山羊も、夕暮れから逃れるために何かをしている。それほど、この詩人にとって、夏の夕暮れは魅力があるのでしょう。

夏の過ぎ去ることを惜しむ、そのこころが最後の一行にあり、詩の読者への呼びかけとなっています。



0 件のコメント: