【Eichendorfの詩77】Treue(忠実)
【原文】
Treue
Frisch auf, mein Herz! wie heiss auch das Gedränge,
Bewahr ich doch mir kühl und frei die Brust!
Schickt Wald und Flur doch noch die alten Klänge,
Erschütternd mich mit wunderbarer Lust.
Und ob die Woge feindlich mit mir ränge:
So frömmer nur sing ich aus treuer Brust;
Da bleicht das Wetter, Himmelblau scheint helle,
Das Meer wird still und zum Delphin die Welle.
》Was wollt ihr doch mit Eurem Liederspasse!
Des Wuerd’gern beut die grosse Zeit so viel!《
So schallt’s hoffärtig nun auf jeder Gasse,
Und jeder steckt sich dreist sein glänzend Ziel.
Die Lieder, die ich stammelnd hören lasse,
Ew’ger Gefuehle schwaches Widerspiel―
Sie sind es wahrlich auch nicht, was ich meine,
Denn ewig unerreichbar ist das Eine.
Doch lieben oft, der Sehnsucht Glut zu mildern,
Gefangene wohl, das ferne Vaterland
An ihres Kerkers Mauern abzuschilfern.
Ein Himmelsstrahl fällt schweifend auf die Wand,
Da ruehrt’s lebendig sich in allen Bildern.―
Dem Auge scheint’s ein lieblich bunter Tand―
Doch wer der lichten Heimat recht zu eigen,
Dem wird der Bilder ernster Geist sich zeigen.
So wachse denn und treibe fröhlich Blüte,
Du kräftig grüner, deutscher Sangesbaum!
Rausch nur erfrischend fort mir ins Gemüte
Aus deiner Wipfel klarem Himmelsraum!
Du aber, wunderbare, ew’ge Guete,
Die mir den Himmel wies im schönen Traum,
Erhalt auf Erden rüstig mir die Seele,
Dass ich, wo’s immer ehrlich gilt, nicht fehle!
【散文訳】
忠実
元の姿に還って新らしくなるのだ、わたしのこころよ!群衆がなんと命令しようと、
わたしは、なんといっても、冷静に、また自由に、わたしの胸(の思い)を持するのだ!
森と平野が、まだ、古い、懐かしい響きを送て来ると
わたしを、不思議な気持ちにさせて、揺すぶり、感動させる。
そして、大波が、敵対的に、わたしと戦うとなれば
そうであれば、このようにより敬虔に、わたしは、忠実な胸の中から、歌うだけだ
すると、天候は青ざめ、天の青は、明朗に輝き
海は静かになり、波は海豚(いるか)になる。
》お前達は、歌の喜びを以て、何をしようというのか!
偉大な時代は、真価を認めるものたちの多くのものを略奪するのだ!《
このように、今や、どの小路にも、虚栄の音が鳴っている
そして、誰もが、厚かましくも、自分の光り輝く目標を立てている。
わたしが吃りながら聞こえさせる歌の数々
永遠の感情の弱々しい反対
これらは、本当には、実際、わたしの思っていることではないのだ
何故ならば、その一つであるものは、永遠に捕まえられないものだから。
しかし、しばしば、憧れの灼熱を弱めることを愛することだ
捕われたる者達よ、よく、遠い祖国を
お前たちの牢獄の壁に写し取ることを愛することだ
一条の天の光が、漂いながら、壁の上に落ちて来る
すると、それは、活き活きと、すべての像(絵)の中で、動く
眼には、愛らしく多彩な瓦落多と見えるが
しかし、明るい故郷をまさしく我がものとする者には
これらの像の真剣な精神が、姿を現すのだ。
ならば、このように成長せよ、そして、陽気に花の盛りをもり立てよ
お前、力強い緑の、ドイツの歌の樹木よ!
わたしのこころの中に、ただただ新鮮にさやさやとした音を立てて、いつまでも入って来い
お前の梢の清澄な天の空間の中からやって来て!
お前、しかし、不思議の、永遠の慈悲よ
美しい夢の中で、わたしに天を示す慈悲よ
地上で、わたしの魂を強壮に守ってあれ
わたしが、どこであろうと本当に通用する場所で、決して不足がないようにと!
【解釈と鑑賞】
アイヒェンドルフのこころをそのまま歌った歌です。
註釈の自明なほどに明瞭な歌です。
ドイツ語の歌の樹木という譬喩は、素晴らしい。そうであれば、日本語の歌の樹木ということができるでしょう。
世間に対して、詩人はどのようにあるかを、そのままに示してくれている、これも素晴らしい詩であると思います。
この詩がいいと思ったら、あなたにも詩心があるということなのです。
詩の題名は忠実、忠誠という題名ですが、その忠誠を誓う対象は、第2連の最後の一行にdas Eine、ひとつであるものと言われています。